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死にざまは選べなくとも、生きざまは選べる~堀木エリ子さん

コシノジュンコ MASACA

2019年9月29日(日)放送
堀木エリ子さん(part 2)
京都生まれの和紙デザイナー。2000年に株式会社堀木エリ子&アソシエーツを設立し、「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに、オリジナルの大型和紙でインテリアアートの企画、制作、施工まで手掛けていらっしゃいます。日本建築美術工芸会賞をはじめ、国内外で数々の賞を受賞していらっしゃいます。

出水:お生まれは京都ですが、育ったのは大阪なんですよね? どんな女の子だったんですか?

堀木:そうですね、負けず嫌いなところがあったり、「女の子は赤、男の子は青」って言われると、私は黄色!って言ったり(^^)なんか人と一緒はいや、っていうのがあったと思います。

JK:兄弟は?

堀木:兄が、3つ違いで。だからわんぱくでした。いつも外で遊んでました。

JK:似たようなもんですね、うちと(笑)

出水:部活などは何をされていたんですか?

堀木:高校に入ってから陸上競技をしてました。もっとも過酷といわれる400m(笑)トラック1周、全速力。もっとも過酷、と言われてることに挑戦したくなるんですね(^^;)

JK:私も走りが一番でね! だんじりで走ってたから。運動会でも絶対一番だった。大好きなんですよ、走ることが。

堀木:自分との闘いだったりもしますよね。はっきりタイムで結果が出るから。

出水:おっしゃることがすべてカッコいい(*o*) 高校を卒業してからは銀行にお勤めになられるんですよね?

堀木:そうなんです、都市銀行に就職しまして。大学を選んで、1個学科を専攻するよりはいろんなことを学びたいなと思って。どこがいいの?と思って先生に聞いたら「そりゃ銀行やで!」って言われて(^^)

JK:じゃあお金感情はしっかりしてるのね。

堀木:それは大丈夫です! 扇形にお札を開くことができますから! 当時は手勘定でしたからね。・・・そういわれると、和紙つながりですね?

出水:はははは! 銀行にお勤めになられてから、和紙の世界にはどのように導かれたんでしょう?

堀木:これはご縁なんですけど、大学の代わりにと思って人生勉強のつもりで銀行に生きましたから、だいたい4年ぐらいのつもりだったんです。

JK:銀行大学ね(笑)

堀木:ちょうど4年経ったころに、当時はバブルでしたから、毎週末ディスコに行ってたんです。そしたら名物おじいさんと知り合いまして、「君、銀行員だったら事務経理はできるだろ? わしの息子が京都で新しく会社を興すから、うちの会社で手伝ってやってくれないか」って言われて。ちょうど次どうしようかな、と思っていたので行ってみたら、たまたま手漉き和紙の商品開発の会社だったんです。

JK:ディスコで?! いいねぇ、そういうの! ディスコにそのおじいさんが来てたっていうのがすごいじゃない。

堀木:雑誌にも載るような名物おじいさんでした(^^) 健康のために、って若い人と一緒に。

JK:出会いってそんなものなのよね。それでトレードされて行ったわけね?

堀木:4人ぐらいのちっちゃな会社でしたけれども、そこで産地にも行く機会があって、武生という土地に紙すきを見に行ったり。そこで職人さんたちの尊い営みを見て、それをお手伝いできるなんて本当に良かったと思っていたんですけど、その会社が2年間で閉鎖に追い込まれたんです。なぜかというと、手漉きでいくら素晴らしいものを作っても機械漉きや洋紙で類似品がすぐ半年~1年後に出てしまうんです。機会は安い、手漉きは高い、ということで価格競争に負けて。それを目の当たりにして、誰かが何とかしないと職人さんの営みがなくなってしまう!と問題意識を持ったんです。でも誰もやってくれる人がいないから、私がするしかないわ!と思ったのが始まりです。

JK:その職人さんは今でもつながってるんですか?

堀木:はい、そうです。

JK:あとは考え方よね。違ったことをやらないと。同じことの繰り返しだから、伝統工芸っていわゆる民芸品になっちゃうわけ。

堀木:時代に応じた使い方っていうのを提案していかなきゃいけないんですよね。その会社が閉鎖に追い込まれた理由も、価格競争に負けたことでしょう。ではなぜ手漉きは機械に負けたのか? 手漉きの良さってなんなのか? と思ったら2つあって、手漉きの和紙は使えば使うほど質感が増す、それから使っても使っても強度が衰えない。ところが、当時会社で作っていたものは、ラッピングだったり、祝儀袋だったり、レターセットだったり。1回使うと捨てちゃうものだったんです。使えば使うほど、という利点は活かされないんですよ。だったら、長く使える土俵で相撲を取らないと勝てない、と思って建築インテリアのジャンルに目を付けたんです。

JK:相手がいないっていうか、独特の世界ですよね。でも、イサム・ノグチさんとかランタンの世界で活躍している人はいるわね。

堀木:素晴らしいですよね。当時は目標でした。

出水:順調に会社は大きくなっていったんですか?

堀木:当時は呉服問屋さんからも支援していただきながらブランドを起こさせていただいたんですけど、社長からは出ていけといわれるし、100人の友達に相談したら120人から「やめとけ」って言われる始末で(笑)相談してない人からも電話がかかってきたり。その理由は「堀木は大学でデザインを勉強していない」「専門学校でアートを勉強していない」「ビジネスも勉強していない」「職人さんのところで修行もしていない」「できるわけがないからやめとけ」って。私その時本当に落ち込んで、本当に私はできないのかなって。それでものづくりの原点に返ろうと思って。たとえば縄文時代や弥生時代に作った埴輪とか土偶が発見されると、私たち時代を超えて感動するじゃないですか。

JK:あれは素晴らしい。日本人の中には縄文時代がありますからね。

堀木:でもそれを作ったのは、大学や専門学校に行って勉強した人じゃなくて、一生活者が作ったものなんです。だったら私にもできるんじゃないか、人間はみなクリエイターじゃないかって妙な自信がいて、そこから奮起したんですよ。どの時代も人間がモノを作るって、自然に対する畏敬の気持ち、人に対する畏敬の気持ちから手を動かしてきたんだって気が付いたんです。

JK:日本の伝統技術って、「手の文化」ですよね。手で何でもできますものね。頭じゃなくて。それを和紙で!

堀木:同時に土器も、最初は人の形にしてお祈りしていたのが、お米を炊いたり水をためる機能や用途が与えられた。それを和紙に置き換えたらと考えたとき、「子供がいるから破られる」「ペットがいるから汚される」「消防法で燃えるものはビルの中に入れてはだめ」となると和紙は使えないんですよ。どんなにいいものでも、使えなければ人の役に立たない。だったら、燃えないとか汚れないとか色が変わらないとか、精度をあげることに取り組まない限り、仕事にならないと思ったところから本当の仕事が始まったんです。

JK:今までの人生で、マサカっていう思いでやられてきたんだと思いますけど・・・マサカってありますか?

堀木:ありますねぇ。39歳から40歳の誕生日をまたぐ時期に、私は入院してたんです。実はそのころ悪性のガンが見つかりまして、最終的には「覚悟してください」って言われちゃったことがありまして。それまでは、私にはそういうことは起こらないと、頭のどこかで考えてたんですけど、それが起きたときに死ぬことと向き合ったんです。でも後から思うと、死ぬことと向き合うことで生きることがわかったんです。気が付いたことは、人間って死にざまは選べないってこと。病気になったけど、自覚症状がなくて余命何カ月と言われるかもしれないし。

JK:自覚症状はなかったの? 何ガン?

堀木:子宮ガンでした。お腹を切って全摘出したんですけど、その時に本当に落ち込んで。人間は死にざまを選べないってことに気が付いたんですけど、同時に生きざまは選べるって気が付いたんです。

JK:逆は真なりですね!

堀木:だったら日々成り行きだけにせずに、生きざまだけは選んでいこう、と思ったんです。ところが生きざまってカッコよく言っても、結局生きざまって何なんだ?と考えると、結局人の役に立つことじゃないかなと思ったんです。当時私は10年以上和紙をやってましたから、和紙を通じて人の役に立つことが生きざまに通じるんじゃないかって。妙な生きる力が湧いてきて、そこから考え方が変わりました。

JK:安藤忠雄さんもこの番組に出てくださって、あの方も大変なんですけど、「ビジョンがあれば生きていけるよ」って。そのビジョンを見つけてるから、ヘナヘナしてるわけにいかない。やらなきゃいけない。悩んでいる人いっぱいいると思うんだけど、ビジョンを見つけないと。

堀木:だからいい経験したなと思いました。病気ってその時は悪いことのように思うけど、後になって「あの時ああなってよかったな」と思える状況を自分自身が作っていけると思うんですよね。

JK:すごいですよね、その経験。

出水:作品集を拝見しますと、日本だけでなく海外でも素晴らしい仕事をされていらっしゃいますし、手漉き和紙というのもユネスコの世界無形文化遺産に登録されているんですよね。

堀木:これは私もニュースで見てまして、職人さんたちと万歳三唱してました。日本の手漉き和紙が世界に認められる、というのは本当に素晴らしいことなんですけど、だけど私はそのニュースを見たときに危機感を感じたんです。結局ユネスコに認められるというのは、手漉き和紙が絶滅危惧種だと認められたことにもなるんですよ。守らなくちゃいけないし、発展もさせていかなくちゃいけないことを再認識して取り組んでいかなきゃな、と思って。

出水:堀木さんの考え方の源は、ご両親の教えなんですか? それともご自身の経験ですか?

堀木:妙な使命感があるんですよね。誰も頼んでないってみんなに言われるんですけど(笑)

出水:今後の目標は?

堀木:私自身は目標っていつも立てないんです。何が目標化と言うと、時代の要望に応えること。常にお客様の要望に応えて、無理難題に対して「できない」とは絶対言わない。

JK:そうですよね、そこですよね。でも、堀木さんにこうしてもらいたい、っていう人は理解がありますよね。

堀木:そうですね。できないだろうと思っていたことができていくのは楽しいですよね。私「流石」っていう言葉が好きで、お客様から「流石!」と言われるような仕事をしたい。流石っていうのは期待通りかそれ以上じゃないと絶対出てこない言葉なので。

JK:じゃあ流石の連続ね。流石コレクション(笑)

出水:これから秋に向けて京都は特に素敵だという印象がありますが、おすすめの場所はありますか?

堀木:京都と言うと京都市内の神社仏閣に人気がありますが、私が好きなのは北のほうなんです。天橋立っていう、海の京都って呼ばれてるんですけど。本当に素敵な場所で。私は朝5時に起きて、早朝を歩くんです。本当にエネルギーがみなぎってきますよ!

JK:やっぱり早朝じゃないとその神秘感はない?

堀木:空気感は早朝のほうがいいですね!

JK:じゃあ泊りがけでいかないとね(笑)

=OA楽曲=

M1. 1b / ヨーヨー・マ/エドガー・メイヤー/マーク・オコーナー

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