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「労働者」という意識が大事 ブレイディみかこさん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
8月31日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、イギリス在住の保育士でライターのブレイディみかこさんをお迎えしました。

イギリスが国民投票によってEU離脱を決めたのが2016年6月。なんでこんなことが現実になったのか、イギリスで何が起こっているのか、みんな驚きました。そんな中で注目されるようになったのが、みかこさんの書いた記事や本でした。みかこさんは、日本のメディアは「地べたからみたイギリス」をうまく伝えきれていないと感じていたのです。〝移民労働者〟のひとりとして長年、現地で暮らしてきたみかこさんの文章からは、白人労働者階級のリアルな実感が伝わってきます。

20歳でイギリスへ脱出


ブレイディみかこさんは1965年、福岡県福岡市生まれ。高校へは奨学金で通い、アルバイトで生活費を稼いでいました。「貧しい家庭だった」と振り返りますが、当時はそう思っていませんでした。貧しいことを自覚してからは「生きづらさ」を感じるようになります。でもそんな思いを正直に口にすることはできませんでした。塞いだ気持ちをなんとかしようと大好きなパンクロックを聴きました。カネはない、仕事もない、俺たちはこんなに苦しい…そんな「No Future」な気持ち思い切り叫んでいます。

――「イギリスへ行こう」。みかこさんは高校を卒業すると銀座や中洲の繁華街で働き、お金が貯まったらイギリスへ渡って半年、1年と滞在し、お金がなくなると帰国してまた働く…20代はずっとそんな生活を送りました。30代になって、1996年からロンドンの日系の新聞社で働き、現地で知り合ったアイルランド出身の男性と結婚。97年からイギリス南部の海辺の町ブライトンで暮らすようになりました。


「福岡のご出身ですよね。いまはロンドンの真南にあるブライトンっていう町にお住まいですよね。ユーラシア大陸の東の端に近い福岡で育って、いまはユーラシア大陸の西の端のイギリス海峡を隔てたブライトンで暮らしてる。真反対だけど、似てると言えば似てる」(久米さん)

「(福岡もブライトンも)なんか似てますよ。福岡の海が近いところで育ったので、海ないとだめですね。海って開けてるじゃないですか。だから、ここがだめだったらどこかへ行ける。開けた感じが好きなんでしょうね。内陸にこもるとだめ(笑)」(みかこさん)

「福岡はちょっと行ったら韓国・釜山だし、オープンなんですよね」(久米さん)

「そうです、まさにその感じ。ブライトンもすぐフランスって感じじゃないですか。大陸に向かって開けてる」(みかこさん)

貧しい白人労働者たち


ブライトンという町は避暑地として知られ海辺にはハリウッドスターやセレブたちの別荘が並んでいますが、みかこさんが暮らしているのはバスで30分ほど走った丘の上には白人労働者たちが多く住んでいる元公営住宅地。白人は裕福で移民は貧しいというイメージがありますが、ロンドンのような大都会と違って、田舎では白人労働者のほうが貧しいということがあるそうです。ブライトンがまさにそうで、中古の学校制服を修繕して貧しい家庭の子どもたちに安く販売するボランティアがあったり、お昼ご飯もろくに食べられない子供たちを見るに見かねて先生たちがお金を出してあげるということがあるそうです。白人労働者たちに対して「ホワイト・トラッシュ(白い屑)」という差別的な呼び方まであります。

みかこさんは、2010年にイギリスが保守党政権になってからの緊縮財政によって、貧しい庶民=白人労働者階級にしわ寄せがいったことが、EU離脱につながった大きな要因のひとつだと言います。「とにかくなんでもいいからこの状況を変えたい」という思いが白人労働者やその家族たちの中に溜まっていたのです。

みかこさんはイギリスで保育士の資格を取って、貧困家庭の子供たちを預かる託児所で働きながら、ライターの活動も始めました。イギリスの貧しい白人労働者階級から見た政治時評や本が注目され、『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(2016年)、『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』(2016年)、『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(2017年)、『労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱』(2017年)、『ブレグジット狂騒曲 英国在住保育士が見た「EU離脱」』(2018年)と、出す本はどれも大きな反響を呼んでいます。

日本も「1億総中流」ではなくなっている


20年以上「イギリスの地べた」から日本を見ているみかこさんは、日本も実はすでに「1億総中流」ではなくなっているのにみんなそれを正視していないと言います。そこが貧乏を自覚し、貧乏を公言しているイギリス人と違うところ。貧乏ではあるけれど、彼らは労働者階級であることを嘆いてはいません。むしろ、誇りに思っています。それはブリティッシュ・ロック、パンクロックの精神にもつながっています。

「日本人は『労働者』っていう、そんな意識はないですよ。サラリーマンだという意識はありますけどね、労働者階級っていう認識はない」(久米さん)

「それが問題なんです。労働者っている意識があるから上の言いなりにならないし、下から突き上げる。『労働者』っていう意識がこれからは大事だと思いますよ」(みかこさん)

ブレイディみかこさんは今年(2019年)6月、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という本を出版しました。エリート小学校を出て、なぜか「元・底辺中学校」に入学した息子の成長と葛藤を描いたノンフィクションです。とても面白い本ですし、今のイギリスが抱える「No Future」な状況が見えてきます。

ブレイディみかこさんのご感想


すごくいろんな本をたくさん読みこんでいただいている感じが伝わってきて、なんでそんなことまでご存じなんだろうってびっくりしました。非常にありがたかったです。話が脱線しそうになるとばしっと元に戻してもらえる感じが、大船に乗った気持ちで、安心して(笑)。またぜひ呼んでください! ありがとうございました。



「今週のスポットライト」ゲスト:ブレイディみかこさん(在英保育士、ライター)を聴く

次回のゲストは、オルゴール製作者・永井淳さん

9月7日の「今週のスポットライト」には、オルゴールの音を共鳴させる木製の箱を制作している永井淳さんをお迎えします。本職は建築の設計士ですが、60歳をすぎて指物の箱を作り始め、それがオルゴールメーカの目にとまって製作者になったという異色の経歴の持ち主。楽器のような高音質のオルゴールは、あの坂本龍一さんにも認められました。

2019年9月7日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190907140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)