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うつが治る!TMS療法とは

森本毅郎 スタンバイ!

うつ病の患者さんは、2005年は92万人でしたが、今では100万人を超えるとも。薬での治療が一般的ですが、実は3割の患者さんは、薬では症状が改善されません。

そうした中、電気の力を使った新しい治療法「TMS療法」が効果を上げて、日本でも承認されました。7月22日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、この新しいうつ病治療について、ご紹介しました

★TMS療法とは

電気を使った新しいうつ病治療は、英語の頭文字をとって「TMS療法」と言います。

正式な日本語の名前は難しいです。「経頭蓋磁気刺激療法」と言って、頭蓋骨を通して、磁気の刺激を与える治療法、という意味ですが、難しいので「TMS療法」が一般的です。

このTMS療法は、元々は、2008年に、アメリカで認可され、これまで、10年間で、6万人以上に治療してきた実績のある治療法です。これが日本でも、おととし、治療法として認められました。

★どんな風に治療するのか

日本では、薬で治療効果が上がらなかったうつ病患者さんを対象として、精神科のある病院で、「ニューロスター」という最新の機械で行います。

ニューロスターは歯医者さんにあるような椅子型の機械で、患者さんはそこに座ります。そしてお弁当箱のような大きさの機械を、頭の一部、おでこの左上あたりに当てます。そのお弁当箱の中にあるコイルに電流を流すと、強い磁力が発生し、その影響で、脳内でも電流が流れ、脳の中の神経伝達物質を活性化させる、という仕組みです。

この治療は、一般的には、1日の治療がおよそ40分、これを平日の5日間で、6週間の通院なので、合計30回、集中的に行います。早ければ、1〜2週目で効果が現れ始め、うつ症状を軽減、消失させる効果が期待出来ます。

資料や本など、文章が読めるようになる、パソコン作業も集中してできるようになったなど、それまでできなかったことができるようになるまで改善したという型がたくさん出ています。

患者さんの言葉では、このTMS療法によって、「頭の中を覆っている膜が剥がれる感覚」で「見たもの、感じたものが鮮明に頭に入ってくるようになった」というそうです。

また、治療が終わった1年後でも、およそ6割以上の人が回復状態を維持できていることから、持続性も十分期待できます。

★うつ病は脳の機能の病気

なぜ、この治療法がうつ病に効くのか、イメージしにくい方も多いと思います。それは、うつ病が心の病と思われがちだからですが、実際にはうつ病は脳の病気でもあります。

確かに、うつ病の主な症状は、体の不調に加え、心の不調が大きな症状です。体の不調としては、睡眠障害、疲労感、頭が重い、頭痛など。

心の不調は、意欲の低下、何にも興味が持てない、それまで好きだったこともできない、文章が読めない、パソコン作業に集中できない、簡単なメールも打てなくなる、そして、憂鬱な気持ちがずっと続く、などの心の不調で、休職になる方も少なくないです。

この憂鬱など心の不調の方が有名なせいか、うつ病は心や気持ちの病気と思われがちです。仕事のプレッシャーや過労で発症する方もいるので、余計にそう思われがちです。

しかし、うつ病は、仕事や家庭環境、人間関係といった「社会的要因」、考え方の癖などの「心の要因」、それに加えて、脳の働きという「体の要因」の3つです。脳の機能そのものが深く関わっていて、心の病気に加え、脳の病気でもあるんです。

実際、うつ病の患者さんの脳の画像を見ると、血流や代謝が低下していることがわかります。セロトニンなどの、神経伝達物質が減っていたり、働きが悪くなり、脳の機能が低下します。

★うつ病治療のアプローチ

そのため、まず社会的要因=仕事や家庭、人間関係などの見直しや、心の要因=考え方などのカウンセリングだでなく、体の要因=薬で、こうした脳の状況を改善するというのが治療の基本でした。

しかしその薬だけでは脳の状況が改善できない、という傾けなので、今回ご紹介している「TMS療法」で、この脳の機能を電流で改善するというわけです。

★脳のどこが問題か

ちなみに、TMS療法では、弁当箱のような機械をおでこの左上に当てますが、この場所が、ポイントなんです。

うつ病の患者さんの脳内は、バランスが崩れた状態にあると言いましたが、一番の問題は、この弁当箱を当てる、おでこの左上の部分です。ここは、いわゆる前頭葉のうち、判断、意欲、興味をつかさどる部分(=左背外側前頭前野)があります。そこの活動が衰えることで、判断力が低下して仕事ができなくなったり、何に対しても意欲がわかなくなったり、うつ病の典型的な症状が出てきます。

またこのおでこの左上のあたりの前頭葉は、もう1つ役割があって、脳の別の部分、扁桃体と呼ばれる部分をコントロールする役割です。扁桃と言っても、いわゆる扁桃腺ではなく、脳の中の扁桃体というところで、不安や悲しみ、恐怖や自己嫌悪などの感情に関する脳の部位です。おでこの左上の前頭葉が働かなくなると、この扁桃体もコントロールできなくなり、結果として、不安や悲しみが暴走する、というわけです。

うつ病は、こうした脳のメカニズムが大きく影響しているので、TMS療法では、おでこの左上の前頭葉に電流を流すことで、脳から治す、というわけです。

(右側の背外側前頭前野も効果があるという指摘もあります)

★TMS療法は怖くない?

TMS療法では、多少の違和感はあるようです。直接電極を指すわけではないので。直接的なビリビリはないのですが、患者さんの言葉では、最初は、頭を軽く叩かれるような刺激や、歯が少し震えたりすることはあるようです。

そのため、患者さんに合わせて、レベルを調整しながら行い、体に合わせるようです。

ただ、副作用自体は、比較的少ない治療法です。一般的な、薬の治療では、眠気や、めまい、吐き気、頭痛など生活に支障が出ることもあります。一方、このTMS治療法では、最初の治療の時の違和感以外では、軽度の頭痛程度です。

★保険適用にもなりました

日本では、今年の6月に保険適用となり、負担が減りました。保険の対象は、既存のうつ病の薬で十分な効果がなかった患者さんという制約はありますが、1回の治療費は1万2000円のところが、3割負担で3600円。全30回の治療で36万円のところが、10万8千円。

★今後の広がりに期待

TMS療法は現在は、新しい治療のため、基準を満たした病院の精神科で保険診療、それ以外の町の心療内科などでは、自由診療となっています。

このあたり、患者さんの負担が減らせるように、広く保険適用で使われるような環境整備が今後の課題です。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190722080130

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