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放送中

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多数決って実は民主的じゃないかも!

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
5月21日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、慶應義塾大学経済学部教授・坂井豊貴さんをお迎えしました。

坂井豊貴さん

坂井さんが研究しているのは経済学の一分野である「メカニズムデザイン」。たくさんの人の「好み」や「意思」を集約して何かを決めるときにどんな仕組みにしたらよいかを考える研究です。例えば、選挙制度もそのひとつ。

坂井さんは『多数決を疑う』という本の中で、「多数決=民主主義」とは必ずしも言えないと指摘しています。多数決では少数意見を汲み取れないばかりか、実は多数派の意見も反映されないことがあるのです。

久米宏さん

実際、過去の衆議院選挙やアメリカ大統領選がそうでした。2000年のアメリカ大統領選は、事前の世論調査では民主党のアル・ゴアが共和党のジョージ・W・ブッシュをリードしていましたが、途中でラフル・ネーダーが緑の党から「第三の候補」として立候補すると、主張が近かったゴア支持の票が割れてネーダーに奪われ、その結果、本当なら負けていたかもしれないブッシュが漁夫の利を得て第43代大統領の座に就いたのです。その後、ブッシュはアフガニスタンやイラクへ侵攻し、過激派組織ISが台頭する現在の混沌とした中東情勢へとつながっていったことを考えると、この時の多数決の結果が世界に大きな影響を及ぼしたことになります。

2014年の衆議院選挙では、自民党は全議席の約76%を獲得して圧勝しましたが、投票者のうち自民党を支持したのは48%でした。つまり過半数の支持を得ていなくても議席では圧勝してしまう可能性があるのが多数決なんです。多数決は、人々の意思を集約する仕組みとしては実は決して優れているわけではないんです。

では多数決以外に、みんなの意思を集約するやり方はどんなものがあるのか?

  • スコアリングルール
  • ボルダルール
  • 自由割り当てルール
  • ○×方式(是認投票)
  • コンドルセ・ヤングの最尤法(さいゆうほう)
  • 決選投票付き多数決
  • 繰り返し最下位消去ルール
  • チャレンジ型多数決

などなど、いろいろなやり方があるんです。

しかも、やり方によって結果が違ってくることがたくさんあるんです。つまり今まで私たちが「民意」だと思っていたものは、実は集計結果にすぎないってことなんです。私たちは小さい頃から「最後は多数決で決めましょう」「多数決で決めた結果は民主的」と刷り込まれてきたので、なんの疑いもないまま多数決を使ってきただけなんですね。そもそも多数決以外のやり方があることがあまり知られていませんから、疑うこともなかったんです。AKBの総選挙を多数決でなくボルダルールやコンドルセルールでやってみたらどうなるでしょうね。

スタジオ風景

では選挙を多数決以外のやり方に変えられるかというと、実はこれが結構難しい。というのも、与党の国会議員は自分たちを選んでくれた多数決をわざわざ変えようという動機が起こりにくいからです。ですから多数決を変えるなら野党議員に期待しなければいけないでしょう。なおかつ、これが国民的議論になっている必要があります。国民的議論に野党が乗ってきたら多数決は変わるかもしれません。

坂井豊貴さんのご感想

坂井豊貴さん

多数決はどこかおかしいと薄々感じていても、それを言葉で言い表すことは実は難しいことなんです。多数決がなぜ、どのようにおかしいのかを説明する言葉がまだ多くの人に広まっていません。そういう言葉がもっと広まると、選挙制度は変わるかもしれません。「多数決」と言われると、多数派の意見がちゃんと反映されているような印象を受けますが、例えば「民意を集約する方法」という言い方にしたら、「この結果は本当に民意が集約されているのだろうか?」というふうに考えるようになるかもしれません。

それと、多数決のような物事の決め方を変更したり、いじることはルール違反だと思っている人も少なくありません。でも社会制度というのは天から与えられたものではなく誰かが考えたものですから、その制度がおかしいと思ったら変えていいんです。ですから「多数決=民主主義」というのも実はただの刷り込みなんだということを多くの有権者が知っていたほうがいいと思います。

ところで、僕は「ザ・ベストテン」世代なので久米さんとお会いできて嬉しかったです。今日は楽しくやらせていただきました。どうもありがとうございました。