お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • コラム
  • 放送ログ
  • 音声あり

ベストセラー本を批判したら、出版取り止め。出版中止騒動を考える

ACTION

武田:ネットでもすごく話題になっている騒動ですけど・・・

5月17日(金)、パーソナリティ、武田砂鉄さんのコラムは、幻冬舎の社長が、対立していた作家の本の実売部数をTwitterで公表したことについて。

武田:幻冬舎から刊行されている作家の百田尚樹さんの著書『日本国紀』を批判するツイートをしたことで、作家の津原泰水さんという方が幻冬舎から刊行予定だった文庫本を出せなくなったと訴えていて。

津原さんはこの春に文庫化されるはずだった本が、幻冬舎の編集者から「販売のモチベーションを下げている者の著作に営業部は協力できない」と言われたと。幻冬舎側は、毎日新聞の取材に対して「文庫化を一方的に中止した事実はない」と否定はしたんですが、「『日本国紀』という本への批判は止めるように」と津原さんに働きかけたことは認めたんです。

『日本国紀』は去年11月に発売されてベストセラーになっていますが、発売当初から“コピペ騒動”があってTwitterでは盛り上がってたんです。この本には通常の歴史書にはある、巻末の参考資料一覧みたいなものがなくて、ウィキペディアに酷似した記述があって。ご本人もウィキペディアでコピペがあったと認めている。

ネット番組『虎ノ門ニュース』で、「この本はウィキペディアからパクってコピペしとると。これが腹立ってね。僕ね、この本を書くのにね、どれぐらい資料を揃えたか。山のように資料を揃えた。その中にはね、ウィキペディアもそりゃあるよ。ウィキペディアから引用したもんとか、借りたもんとかある。そんなもんはこの本の中の0.何%なんですよ」といったことを仰ってるんです。

そして、インターネットでの指摘で「ここの記載はどうだ?」「あの記載はどうだ?」ということを反映してそのまま新しい刷りのときに変えているので、重版する毎に書かれていることが違っているという異様な事態。歴史書というのは、先行研究とか文献の積み重ねとかで続いていくジャンルですので、それをせずに濃い味付けで本を書いていて。

そして昨日、幻冬舎・社長の見城徹さんが色々ツイートしていて。言論の場をいくらでも持っている出版社の社長が、訴訟を臭わせるツイートをしていたんです。物書きにとってみたら、出版社の社長にこう言われるのは、多少なりとも恐怖があるんです。勿論、津原さんはNOと抗っているんだけど。

あと、僕が一番許せないことは、見城さんが津原さんの本の部数をツイートで晒したんです。そのあとツイートは消されたので言いませんが、「実は僕は津原さんの本の出版はためらっていた。ただ、担当者の熱い思いに負けてOKした。初版何千部、実売はこれぐらいしかいかなかった。だけど、2冊目も営業の反対を押し切って、編集者が頑張ったので出しました」と。

本は、書き手だけじゃなくて、編集、営業、校閲、書店へ届ける人がいて、取次という問屋さんがいて、一緒になって届けていくもの。売れたら皆で喜んで、売れなかったらそれぞれが反省・検証して。見城さんの言い分は、「売れた本は俺のもの。売れなかったら著者のせい」と見える。これだと書き手は付いて来ない。

僕は河出書房で働いていたとき、年配の編集者に呼ばれて、「名刺を持っていけば、たいていの著者が会ってくれる。本も出来上がる。そのときに、編集者が偉そうにしてはいけない。編集者は何もやってないんだよ。原稿を書くのは作家さん、デザインはデザイナーさん、本のイラストはイラストレーターさん、印刷は印刷会社、文章の誤りをチェックするのは校閲の人、本を店頭に並べるのは本屋さん。だからとにかく偉そうにしちゃいけない」と。

これは僕が編集者をやってく上でとても糧になったし、今文章を書く上でもすごく頭に残っているんですよ・・・

武田砂鉄のコラム。全編はradikoでお聴きくださいhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190517160000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)