毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
今回のテーマは・・・
“旅行したい!を叶える介護旅行「あ・える倶楽部」” です。
★介護もできるスーパー添乗員、その名も「トラベルヘルパー」
先日の10連休中に旅行した方も多いと思いますが、身体が不自由でも「旅行したい」という願いを叶えるサービスについて取材しました。まずは、今年で創業28年目となる旅行会社「あ・える倶楽部」を運営する、篠塚恭一さんのお話。
- 「あ・える倶楽部」 篠塚恭一さん
- 「私たちは「介護旅行」と言っているが、いわゆる日常生活で受けている介護サービス(排泄・食事・着替え・入浴など)を、旅先で受けられる。基本的にはどこでも行ける。もちろん温泉地などは人気だが、高齢で介護を必要としている人が多いので、ふるさとに帰りたい人や、お墓参りがしたい人などが、せっかくきたんだから温泉に入って帰りましょうか、といった旅行が多い。」
「あ・える倶楽部」は一人一人の身体の状態に合わせ、国内・海外問わず、オーダーメードで旅行をコーディネートしてくれます。旅行についてくるのは、“トラベルへルパー”と呼ばれる介護福祉士などの資格も持つ「介護ができる添乗員さん」。ひとつの旅行に、原則、一人のトラベルヘルパーが同行し、移動や宿泊先の手配など、ありとあらゆるサポートを旅行中行ってくれます。
派遣料は介護の度合いによって異なりますが、基本的には1日2万円~3万円。そこに、保険料やヘルパーの旅行実費が加わります。
★事前準備の手間が、通常の旅行の7~10倍!
お客さんの平均年齢は83歳!
旅行にはどんな苦労があるのか、篠塚さんに聞きました。
- 「あ・える倶楽部」 篠塚恭一さん
- 「車椅子を押したり、下の世話をしながら旅行するのも大変だが、それよりも遥かに事前準備にかかる時間と労力の方が大変。このタイプの人は鉄道に乗れる?飛行機は?でも気圧がダメだから陸路で行こうとか。介護用のベッドで寝起きしてる人は、レンタル会社や旅館と相談して仮で入れさせてもらったり。或いは、田舎のお墓はバリアフリーなど期待できないので、運転手さんとおぶって行こうとか。一般旅行を扱っている人たちからすると、手間が7~10倍かかると言われる。そういう意味では大変。」
この事前準備、具体的には「本人の身体の状況」の聞き取り作業から始まります。しかも、本人がうまく話せない場合は、テレビ電話で様子を確認したり、家族や介護施設の職員から話を聞くことになるのですが、この作業がとにかく大変。
しかし、その作業を乗り越えて実現した旅行件数は約400件超/年ということで、リピーターも多いそうです。
★「旅したい」という気持ちを諦めない
実際に、このGW中、トラベルヘルパーと一緒に海外を旅した、54歳の男性に話を聞くことができました。5泊6日・ポーランドの旅をした、関澤康夫さんです。
- 関澤康夫さん
- 「昔、鉄道が好きで乗り歩いたりしていたが、30歳位から筋肉が弱くなってきた。その前は歩行器を使って歩いていたが、転びやすくなって、3年くらい前から車椅子。道を舗装しなかったりエレベーターがなかったりするので、その辺に旅行の苦労がある。安全第一・事故があっても大変なので、それがトラベルヘルパーを頼むきっかけだった。あとは南極に行ってみたい。諦めないで自分で行ける方法を考えるのが一番と思う。」

(右奥)トラベルヘルパーとして同行した篠塚恭一さん/(右手前)ポーランドを旅行中の関澤康夫さん

(左)篠塚恭一さん/(右)関澤康夫さん
関澤さんは、若い頃から旅行が好きで、これまで行った国は40カ国以上!南極に行けば7大陸制覇ということでかなりの強者ですが、トラベルヘルパー付きの旅行は2度目だそうです。
旅行直後にお話を伺った為か、関澤さんの土産話はまだまだ尽きませんでした。
★旅行が“自信”に繋がる
今度は、トラベルヘルパーの方に、旅行を通してお客さんがどう変わるのか聞いてみました。この一年で38回ツアーに出ているという、トラベルヘルパー歴8年の岡安千絵さんのお話です。
- トラベルヘルパー 岡安千絵さん
- 「変わります、本当に変わります!例えば、ホームでは普段食欲がない・よく眠れないという方も、「旅行マジック」で笑顔とともに食欲が出てきたり、リハビリを頑張るようになったり、どんどん変わっていく。そして、家族にとっても自信に繋がる。こんなによく笑うんだ、やっぱりお願いしてよかったんだ、ということで、相乗効果が生まれる。」

(左)ふるさとの千葉の海を旅した97歳の女性/(右)トラベルヘルパー 岡安千絵さん
▼この女性の詳しい旅行事例はコチラ↓

(前列左手)トラベルヘルパーの岡安千絵さん/(前列左から2番目)熱海へ一泊二日で家族旅行した女性
▼この女性の詳しい旅行事例はコチラ↓
笑顔が素敵な写真ばかりですが、当事者だけでなく、周りの家族も含めて旅行がもたらす効果は大きいようです。
★旅が生涯続けられるものであるように…
「あ・える倶楽部」の篠塚さんは、旅行に対してこんな思いがあるようです。
- 「あ・える倶楽部」 篠塚恭一さん
- 「介護旅行に行く人たちは、必ず何かの思いがあって、海外に行く人・その町を訪ねる人・誰かに会う人、お墓詣りに行く人、孫の結婚式に行く人がいて、ものすごく思い入れの深い人たちが旅をしている。音楽やスポーツが好きな人が一生楽しめるように、旅も生涯続けられるようにしていきたい。」
旅行を諦めていた方も、こういったサービスを活用してみるのも良いかもしれません。
(担当:TBSラジオキャスター 田中ひとみ)