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放送中

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硯(すずり)は大根おろし?! 硯作家・名倉鳳山さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
5月14日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、硯(すずり)作家・名倉鳳山(なぐら・ほうざん)さんをお迎えしました。

名倉鳳山さん

名倉さんは、書道で使われる硯の名産地として古くから知られる愛知県新城市・鳳来寺山の麓で代々続く「鳳来寺硯(ほうらいじすずり)」の工房の5代目です。

鳳来寺硯は1300年ほどの歴史があるといわれます。松平広忠が鳳来寺に子宝を祈願して徳川家康が誕生したことから江戸幕府から篤い庇護を受け、多くの人が参詣に訪れ、鳳来寺硯は江戸時代、参詣土産として盛んに作られました。江戸幕府が倒れると鳳来寺はどんどん衰退し、硯もついには途絶えてしまいますが、近代化を目指した明治政府によって教育制度が整備されると、学童硯の需要が増え、それに伴って明治20年代に山梨から(山梨も硯の産地の一つ)多くの職人が良い石材を求めて鳳来寺山周辺に移住してきて、硯の製作が再開されたのです。

スタジオ風景

名倉家初代も明治時代に鳳来寺の参道に工房兼店舗を構え、硯の製作を始めたそうです。以来、現在の5代・鳳山さんまで130年に渡って、伝統の鳳来寺硯を作り続けています。

硯は中国では数千年の歴史があって美術工芸品としても高い価値が認められていますが、日本では学童用の素っ気ない実用品がほとんど。名倉さんは日本の硯を工芸品の域まで高めようと長年取り組んできました。1997年には日本伝統工芸展で奨励賞を受賞、日本の硯では初めて東京国立博物館に収められました。

スタジオ風景

ところで、どうして硯の上で墨がすれるのでしょうか。実は水に墨が溶けているのではありません。墨、つまり炭素は基本的には水と混ざりません。ではどうして? 名倉さんは、大根おろしに例えて教えてくれました。

「墨と硯は、大根とおろしがねのようなものです。硯は触るとつるつるしていますが、実際はおろしがねのギザギザの突起のようなものがあるんです。それを鋒鋩(ほうぼう)といいます。硯は堆積岩です。堆積岩は泥が積み重なってできたもので、その中にはいろいろな鉱物や粒子が混ざっています。鉄、銅、カルシウム、ガラス…、いろいろなものがパウダー状になって混ざっています。それがおろしがねのギザギザのような役目を果たしているんです」。

硯の上に水をたらして墨をすると、ちょうど大根おろしのように炭素が細かくされて、水に混ざったような状態になるんです。だから石の中に鉱物がいかに細かくちらばっているかが、鋒鋩の目がいかに細かいかが硯の勝負なんだそうです。一度じっくり「石」を「見」てみてください!

名倉鳳山作の硯

名倉さんによれば現在、日本の硯職人・作家は数十人。その中で、中国の硯とは違った日本独自のシンプルな美しさを追求した硯を作っている人は10人もいないそうです。今日は硯について知らない話がいろいろお聞きすることができました。

名倉鳳山さんのご感想

名倉鳳山さん

硯というのは、おそらくみなさんの頭の中の片隅にもないようなものですから、話をするとなるとイチから説明することになるんです。そうすると余計に話もあちこちにいってしまうんですが、久米さんにはうまく拾っていただきました。この分野をよくたった30分であれだけ詰め込んで、うまいことバランスも取っていただきました。

こちらが話さなければいけない歴史のことやアピールしたい話を、しゃべりやすいように導いていただいて、今日はありがとうございました。