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分身ロボット「OriHime」社会を変える 吉藤健太朗さん(オリィ研究所)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
3月9日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、難病や重い障害で動けないけれど外で働きたいという人のために家にいながら離れた場所に自分の〝分身〟として置いて遠隔操作する人型ロボット「OriHime(オリヒメ)」を開発した、株式会社オリィ研究所の吉藤健太朗さんをお迎えしました。


いまは離れたスタッフ同士がインターネットを使ってメールやSkypeなどで情報をやり取りするテレワークも広がっていますが、吉藤さんはどうして分身ロボットを開発したのでしょうか。


「OriHime」は20cmほどの大きさで、小さなボディにマネキン風の顔と羽のような形の小さな手がついています。中にはカメラ、マイク、スピーカー、モーターが搭載されています。これをパソコンやiPad、スマートフォンで簡単に遠隔操作できます。操作する人はインターネットを通じてOriHimeの顔を自由に動かしたり、手を動かしてジェスチャーをしたり、会話をしたりして、離れた職場の人とコミュニケーションをとることができるのです。


「分身ロボットというのはいわゆるロボットとは違って、もうひとりの自分ですよね。なんでそういうロボットを作ろうと思ったんですか」(久米さん)

「もうひとりの自分というと自分のコピーみたいなイメージがあるかもしれませんけど、どちらかというともう1個の自分の『体』です。私は過去、学校に通えなかった時期が長かったんですけど、そのとき思っていたのは、なんで人間はひとつの体しかないんだろうということなんです。我々の耳は2つありますよね。目も2つあります。だから片方の目をつぶっても世界が見えます。そこは補完できるんだけど、体はひとつしかない。そうすると例えば遠くに住んでいるとか、海外に出張していると友人の結婚式に出席でいない。体がひとつしかないがゆえに受ける制限や制約、障害ってかなり大きいと思っていたんですよね。でも人間の体がひとつしかないっていうのは思い込みであって、それを複数作ることができれば、意識を切り替えることによって、例えば学校への瞬間移動のように使うことができたり、自分の体を学校と病院と家にそれぞれ置いておいて必要に応じて切り替えれば、外に出る必要もない…。そういうことをずっと考えていました」(吉藤さん)

「病院に入院して動けない小学生が、自分の分身がいつも自分が座っている席にクラスメイトと並んでいたとしたら、いつも授業が受けられて先生に質問もできる。友だちと話ができる。休み時間に冗談も言える。自分は病室にいるのに。そういうものすごく必要度の高い需要もある。それがあったらどんなにその子が救われるだろうということもありますよね」(久米さん)

「まさに私が小学5年生ぐらいのときに、2週間ぐらいまとめて休んで入院もしまして。それによって楽しみにしていたクラスのお楽しみ会も参加できなくて、2週間休んでしまうと学校に徐々に戻りづらくなっていったというのがあって、どんどん学校が自分の居場所ではない遠いものに感じるようになってしまったんですよね。自分の体は入院していたわけですけど、やっぱり学校に行きたかったしクラスの会に参加したかったという思いがずっとあって。それでこういうものを作ろという思いにつながっていったというのがあります」(吉藤さん)

病気や障害を持つ人の社会参加を助ける分身ロボットの開発は、吉藤さんが早稲田大学創造理工学部に在学中の2009年から取り組んでいます。その原点は、不登校だった小中学校時代や、電動車椅子の開発に取り組んだ高校時代の体験にあるのです。


吉藤健太朗さんは1987年、奈良県に生まれました。小さい頃から折り紙や工作が得意で、クラスで披露してはよくウケていたそうです。不登校になって6年生になったとき、ひとりの女性の先生が吉藤さんのために専用ルームを作ってくれました。教室に行かなくてもいいし、友だちに会わなくてもいい。好きな時間に来て、好きな時間に帰ればいい。ただし図書館の栞(しおり)が足りないから、得意な工作で作ってほしい―。先生がささやかな「居場所と役割」を与えてくれたことが、吉藤さんには大きな救いとなりました。いま吉藤さんがOriHimeでやろうしているのは、遠隔操作ロボットで暮しを便利にすることではなく、社会に参加したくてもできない人たちに「居場所と役割」を作ってあげることなのです。そのためにはAI(人工知能)を搭載したロボットではなく、自分が操作しなければ動かない分身ロボットでなければならないのです。ちなみに「オリィ研究所」の名前は折り紙からきています。

いつもは3人(ゲスト、久米さん、堀井さん)のスタジオですが、この日はOriHimeを分身としてもうひとり参加していただきました。愛知県在住の藤田美佳子さん。中学生のお子さんを持つ40代。数年前から体に変調を感じるようになり、2017年に「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」と診断されました。徐々に体の自由が奪われていく難病です。でも藤田さんは家に引きこもるのではなく、OriHimeを使って積極的に社会に出ている方です。

実はこの日、藤田さんは午後1:30から福岡で行われた車椅子利用者のためのファッションショーにOriHimeで〝出演〟してしていました。そして午後2:00から東京・赤坂のTBSラジオスタジオに〝出演〟です。つまり、愛知にいる藤田さんが、福岡と赤坂にある2体のOriHimeを自分の分身として2つのイベントに参加したのです。この日の放送中、ときどき小さく「キューイ、キューイ」と聞こえていたのは、藤田さんの分身OriHimeが久米さんたちの話を聞きながら頷いたり手を動かしていたときの音です。


「藤田美佳子さんの分身ですから、彼女(久米さんの横にあるOriHimeのこと)が藤田美佳子さんなんですけど…。藤田さん、名古屋は今日お天気はどうです?」(久米さん)

「お天気、暖かいです。今日は15℃あります、晴れて。ぽかぽかしてます」(藤田さん)

「いま赤坂のTBSの9階の第7スタジオにあなたの分身が座ってるんですけど、そこに自分がいるっていう感覚はありますか?」(久米さん)

「あります! いつも分身ロボットであちこち行くと『そこにいる』といつも感じてます」(藤田さん)

「ぼくいまジャケットを着てるんですけど、見た感じどんなじいさんに見えます?(笑)」(久米さん)

「私、昔から久米さんの番組よく見てたので…、素敵なダンディなおじさまが映っております。チェックのお召し物と素敵なめがねをかけて…ふふふ。見えております」(藤田さん)

「お顔がちゃんと久米さんのほうを向いて話すんですね。目線が合うんですね」(堀井さん)

「しっかりぼくと正対して話して…」(久米さん)

「結構、見られている気がすると思うんですよね」(吉藤さん)

「明らかに藤田さんに凝視されている気がしました」(久米さん)

「じっとみました(笑)」(藤田さん)


OriHimeがSkypeと違う点は「凝視されている気がした」という久米さんの言葉に現れています。OriHimeはテレビ電話以上に、向こうにいる人の「気配」や「存在感」が伝わってくるのです。OriHimeが顔や手を動かすたびに、スタジオにいた久米さんも堀井さんも吉藤さんも、愛知にいる藤田さんの動きや視線、そして表情までも感じていました。そうするとどうなるか。お互いに「同僚」という意識が芽生え、さらに「会ってみたい」という気持ちが生まれるのです。会ってみたいという気持ちは、難病や障害のために外出なんて無理だと思っていた人たちが「外に出てみたい」という前向きな姿勢に変わるきっかけになります。吉藤さんは不登校の子供たちにもOriHimeを使ってもらいたいと考えています。OriHimeを教室に置いておけば学校に行かなくても授業が受けられますし、休み時間の楽しい会話にも参加できます。自分の居場所が見つかるかもしれません。そうなれば「学校に行ってみたい」と思えるかもしれません。


「藤田さんはパソコンを指で操作しているんですか?」(久米さん)

「はい。いまはまだ動きますので指で操作しております。私もいずれは歩けなくなる、しゃべれなくなるという未来がありますが、『OeiHime eye(オリヒメ・アイ)』(眼球の動きだけでOriHimeを操作することができる意思伝達装置)で伝えたり、ずっとともにOriHimeといられるので、そこは心強いですね」(藤田さん)

「あなたはずっとぼくのことを見つめるのでちょっと照れるんですけど(笑)、あなたにとってOriHimeはかなり重要な分身…これはもう〝本人〟ということですよね」(久米さん)

「そうですね。今日もそうですけど、いままで見られなかった景色、そして出会えなかったであろう方たちと出会えてとても充実した日々を送っています。かけがえのないものですね」(藤田さん)

「究極的には自分の分身に自分を介護してもらうことができる。それはすごいと思いました」(久米さん)

「例えば下半身が動かないで上半身が動くとしましょう。そうすると手を使ってコンピュータを操作すると120cmのOriHimeを操作することができて家の中を走り回れます。冷蔵庫からドリンクを取ろうと思っても、ベッドから起き上がることができない人は誰かに持ってきてもらわないといけませんよね。そういったことを家の中を走り回るロボットがあれば自由に冷蔵庫を開けたり、玄関に荷物を取りに行ったり、窓を開けたりということもできます。いまは脳波や視線…眼球だけで動かせるシステムを作っていますから」(吉藤さん)


難病や障害を持つ人がOriHimeを使って自分のことを自分でやるということだけでなく、人のために何かをしてあげられるようにもなります。いつも人に何かをしてもらうだけだった人が、人に何かをしてあげられるようになるというのは、「居場所と役割」ができるということです。OriHimeをそのようなツールに方向づけたのは、オリィ研究所のメンバーだった番田雄太さんという方の存在があったからだと吉藤さんは言います。番田さんは4歳のときに交通事故で頚髄(けいずい)を損傷して、青森県盛岡市で20年以上寝たきりの生活を送りました。首から下は動きませんが、顎を使ってパソコンを操作し、メールを打ったりできます。番田さんは吉藤さんの横にあるOeiHimeに毎日〝出社〟して、吉藤さんのスケジュール管理や名刺の整理、ウェブサイトの更新などを行っていました。


「番田雄太さんはずっと吉藤さんの隣でOriHimeとして秘書をやっていて、一緒に旅もして、OrHimeが彼の分身だったんだけど、もしかしたら、あなたの脇にいたのが番田くん本人で、盛岡の病院で4歳のときからずっと寝たきりだった彼の肉体のほうが実は分身になっていたんではないかって思ったんです」(久米さん)

「ALSの方だと感覚は残るんですけど、番田は頚髄損傷なので首から下の感覚はなく、痛覚もなかったわけで、ある意味自分がそこにいるという感覚がない。彼はコンピュータを早いうちから動かすようになってホームページを作ったりツイッターとかフェイスブックを使うことである意味自分の分身がネット上にあるような、自分の表現するすべては友だちも含めてネット上にいる。だから彼はデジタル世界の住人だったんですよ、ずっと」(吉藤さん)

「そういう意味では、OriHimeが彼の本体で、病室のほうが分身という言い方は間違いではない」(久米さん)

「かもしれませんね。彼はネット上だとバリア(障壁)がないわけです。普通に文章も打てるし、私の代わりにメールを打ったときも、それを読んだ人は彼が寝たきりなんて全然分からないわけですよね。それで、うちの会社に来て『番田くんはどこにいるんですか』と言われて、ここにいますとロボットが出てくる。OriHimeがこの形になったのも、体を動かすことができない番田が社会に参加するためにいちばん適切なツールを作ろうということを研究していた結果がこういう形になりました。私は昔あまり家に帰ることができなかったので、このロボットを家に置いて病院から家に帰るとか、誰かと一緒にいればいいと思ったんです。ただやっぱり番田は私の隣にいるだけだと、私は仕事をしているのに番田は何もしていないという状態にすごくいづらさを感じていて、やっぱり『誰かと一緒に何かをする』というところまでいかないと居場所って作れないと。そういうことに気づかされたのは番田の存在があったからですね」(吉藤さん)

吉藤健太朗さんのご感想


OriHimeを交えて4人でラジオ出演というのはあまりなかったので新鮮な感じで楽しくお話しさせていただきました。ラジオはビジュアル的なものがないので、OriHimeというロボットが持つ「本人がそこにいる感」みないなものは伝えにくいのかなというのは確かにちょっとあるんですけど、でももしかして後でこの放送の音を聞くと、そこにもうひとりいるような感じ、4人が話していたようか感覚はあるんじゃないかと思いますね。

久米さんは最初にご本人が「コミュニケーション非ネイティブ」とおっしゃっていて、いままで私もラジオにたくさん出させていただいて、みなさん「コミュニケーション・ネイティブ」な方が多いなかで、すごく近しいものを感じて楽しかったです。



「今週のスポットライト」ゲスト:吉藤健太朗さん(分身ロボット「OriHime」開発者)を聴く

次回のゲストは、スニーカーカスタマイズの廣瀬瞬さん

3月16日の「今週のスポットライト」には、東京・渋谷にある靴修理店「RECOUTURE(リクチュール)」の店主・廣瀬瞬(ひろせ・しゅん)さんをお迎えします。革靴のソールを縫い付けたカスタム・スニーカーがインターネットで話題になり、いまでは海外からも注文が殺到しています。

2019年3月16日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190316140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)