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これからの職人は宇宙も目指せる! 「宮本溶接塾」塾長・宮本卓さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
2月16日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、町工場の溶接職人を育成している「宮本溶接塾」の塾長・宮本卓(みやもと・たく)さんをお迎えしました。溶接塾のホームページにはこんな言葉が書かれています。「これからの職人は、宇宙も目指せる!」 実は宮本さん、溶接の技術を活かして宇宙開発のプロジェクトにも携わっているのです。いったい何者?!

宮本卓さん

宮本さんは1978年、東京・江戸川区にある金属加工の町工場の3代目として生まれました。東京工業大学の大学院まで進んで金属工学を研究し、そのあとは大手鉄鋼メーカーで研究員として勤務。ところが7年後に退職して、32歳から実家の工場で職人の修業を始めたのです。一人前になるまでに10年かかるといわれる金属加工の仕事を4年で習得。同じ江戸川区内の製作所勤務を経て、実家の町工場で「クリエイティブワークス」という会社を立ち上げました。

スタジオ風景

「東工大の大学院まで行って大手鉄鋼メーカーで働いていたのに、そこを辞めてお父さんがやっていた町工場に入って、イチから溶接の仕事を習うって、どうして?」(久米さん)

「サラリーマンをやっていたときに自分のやりたいことがなかなかできなかったり、研究開発の仕事だったんですけどもっと現場に直結した仕事をやりたいなと思って。それから自分の手を動かして何かやることが好きだったので、現場でいろいろやりたいなと思って、工場に移ってきました」(宮本さん)

「日本の勤労者人口でいえば大手に勤めている人はほんのわずかで、ほとんどの人は中小企業あるいはそれ以下の零細企業に勤めています。町工場って、実は日本の生命線でもあるって思うんです」(久米さん)

「そう思います。いま自分がいる場所もそうなので頑張りたいと思っています。父と一緒に工場で仕事をするようになって思ったことは、父はこういう仕事をやって自分を育ててくれたのかって。すごく実感したんです。町工場の仕事は華々しいものではないですし、製造業なので本当に地道な作業ばかり毎日やっているんです。でも、やっぱりこれは誰かがやらなきゃいけない仕事ですし、自分はこれをやりたいと思って4年間修業させてもらいました」(宮本さん)

宮本さんの実家の工場は創業者の祖父の代から医療関係(手術台など)を製造するメーカーの下請けで、ほかの仕事を受けることはほとんどありませんでした。ほかの町工場も同じような状況です。ですから意外にも町工場同士の連携はほとんどないのだそうです。

宮本卓さん

「自分が父の下で修業していたときも医療関係に特化した仕事で、隣りの町工場が何をやっているのかも分からない状況でした。それで、自分が仕事を始めたときは、会合やセミナー、勉強会、あとはベンチャーの方が集まるところに行って、人脈を広げていきました。そして金属加工とか溶接をやっている仲間を見つて、一緒に何か始められないかということを考えてきました」(宮本さん)

いま宮本さんは、3つの町工場が連携してものづくりを手がける「東京町工場 ものづくりのワ」というプロジェクトを進めています。違う分野に特化した町工場が知恵と技術を寄せ合うことによって、1社だけだと手が出せなかった分野にも進出できるのです。これまでの町工場は大手からの発注を待つだけでしたが、「これからは自分たちの技術を外にどんどん発信して新しい仕事を取りに行ける」と宮本さんは言います。

東京の町工場が抱えている課題はほかにもあります。それは溶接職人が足りないこと。いまはまだ70代、80代のベテランが元気に仕事を続けていますが、その下の世代がとても少なくなっているそうです。若い人たちも町工場に入ってこなくなっています。10年後の町工場がどうなっているか、宮本さんは大きな危機感を持っています。

そこで宮本さんは金属加工の仕事をやりながら、東京都立城東職業能力開発センターで溶接を教えています。しかしセンターは卒業までに6ヵ月というプログラムで、対象は求職中の人。そもそも職人の世界に入ってくる人が少ないのに、入れる枠は限定的なのです。そこで宮本さんは自分の工場で「宮本溶接塾」を開いて、平日の夜間や土日を利用して、職人を目指す若い人たちを募集することにしたのです。これなら仕事を持っている人でも興味があれば溶接技術を学ぶことができます。しかも宮本さんは4ヵ月で基礎的な技術を習得したご自身の体験を生かして、3ヵ月で卒業までもっていけるよう教えるそうです。

スタジオ風景

「宮本さんが4年で溶接をものにできたのは、大学と大学院で勉強したということもあるし、大手鉄鋼メーカーにお勤めだったということもあるんでしょう。つまり理論が分かっていたので短い期間で溶接工になれた。昔ながらの盗んで覚えろというのはなかなか難しい。こういう理屈だからこうなんだというふうに教えればいい」(久米さん)

「そうですね。溶接の技能としては金属を溶かして固めるというものなので、ポイントを押さえればそれほど長く時間がかからずに習得できるんです。溶接塾は自動車の運転免許みたいなもので、3ヵ月ぐらいで技術の習得を集中してやってしまって、仕事ができるようにというのを目標にしています。そのあと実際に仕事をやるとか、ちゃんと品質のいいものを作るというのはやっぱり経験を積まなければいけないと思います」(宮本さん)

宮本さんはこれから溶接職人を目指す人には、大きな目標をもってほしいと考えています。町工場でいつも決まった製品をつくることが職人の仕事ではなく、もっといろいろな可能性があるのです。例えばそれは宇宙開発。溶接塾のホームページにはこんな言葉か書かれています。「これからの職人は、宇宙も目指せる!」 実は宮本さん、溶接の技術を生かして宇宙開発のプロジェクトにも携わっているのです。

久米宏さん

「大学の頃は宇宙に興味があって、NASDA(宇宙開発事業団。現・JAXA=宇宙航空研究開発機構)に行きたいとお考えだったとか」(久米さん)

「大学の専門は金属工学で材料を勉強するところだったんですけど、研究者として宇宙開発に携わりたいと思っていました。それで新卒の採用試験を受けたんですけど、優秀な方がいっぱいいらっしゃるので…。もっと学歴の高い方でも落ちたいう話を聞きましたので、やっぱり優秀な方しかなれないんだなと思いました」(宮本さん)

「それで捲土重来というか、夢よもう一度というか、有志が集まって人工衛星を打ち上げようじゃかと?」(久米さん)

「リーマンサットプロジェクトといいます。普段、宇宙開発には携わっていない人たちが趣味として宇宙開発をやっているんです。サラリーマン、OL、学生さんも集まっています。そういう人たちが集まって、自分たちで何か宇宙開発をやりたいねと。できるものからやっていこうということで、まず初めに、10cm四方の小さい超小型人工衛星を作って打ち上げようというのを目標として活動しています」(宮本さん)

「どういう方々が参加なさっているんですか?」(久米さん)

「職業は多岐にわたっていて、私なんかは町工場の職人ですし、プログラムをやる方やIT関係の方もいます。面白いのは、大工さんとか看護師さんとか。最近は弁理士さんとか弁護士さんも来てくれました。宇宙開発といっても技術だけではなくて、リーマンサットには広報部といって活動を世に広めていく部隊もいます。ホームページを作るのもそういうメンバーがやっていて、宇宙専門ではないんですけど、自分たちの力を遺憾なく発揮してくれていますので、どんどんいいものができあがっています」(宮本さん)

まさに『下町ロケット』の世界ですが、最初は5人の飲み仲間の居酒屋談義から始まったそうです。みんな何かしらの挫折を胸の奥にしまっている人たちでした。「夢をあきらめたまま終わっていいのか」お酒の勢いもあってそんな言葉が誰からかあがりました。「サラリーマンになってからだって夢は持てる」「一度諦めた夢だって、形を変えてまたチャレンジできる」「サラリーマンだってやりたいことをやってやろうじゃないか!」 サラリーマンの「リーマン」と、サテライトの「サット」を合わせて「リーマンサット」。宮本さんもそこに加わり、溶接職人の技術を仕事以外のこと、夢の実現に生かすときがやってきたのです。

スタジオ風景

「自分たちで人工衛星を打ち上げようということで始まったんですが、誰も人工衛星の作り方とか知らなかったので、教科書を読んだり大学に勉強に行ったりしました。そのかたわら、自分たちは人工衛星で何をやりたいのかというのを決めていきました」(宮本さん)

「それで何をやるための人工衛星になったんですか?」(久米さん)

「いちばんの目標は『自撮りする衛星』というのをやろうと」(宮本さん)

「自撮り?!」(久米さん)

「人工衛星の中から自撮り棒みたいなものが伸びて、自分にカメラを向けて地球をバックに写真を撮ろうというのを目標にしています。自分もそうだったんですけど、宇宙飛行士ってやっぱり憧れますし、宇宙に行きたいっていう願望がみんなあるんですね。それで自分たちはなかなか行けないので、代わりに人工衛星に宇宙に行ってもらって写真を撮る(笑)」(宮本さん)

そんな冗談のような夢の実現に向けて、実はもう第一歩を踏み出しています。去年(2018年)9月、JAXAのH2Bロケットが打ち上げられたときに、無人輸送機「こうのとり」の中に、自撮り用人工衛星の初号機「RSP-00」も搭載されたのです。いまはこうのとりから放出されて、地球の周りを回っているそうです。今後は、「RSP-01」「RSP-02」「RSP-03」の打ち上げも予定されています。

町工場の新しいものづくりプロジェクト、溶接塾、そして宇宙開発。これらが全部、宮本さんの中でつながっているのです。

宮本卓さんのご感想

宮本卓さん

町工場とか職人のことに注目していただいたので、嬉しいですね。職人も面白いかなと思ってくれる人が少しでも増えたらいいなと思います。番組にメールをいただいた方も溶接しながらラジオを聴いているということでしたけど、嬉しい限りです。

久米さんとはすごく楽しく話をさせていただきました。やさしく話してくださって、番組だということを忘れてしまうような感じでした。いろいろな話を聞けてよかったです。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:宮本卓さん(溶接職人・「宮本溶接塾」塾長)を聴く

次回のゲストは、元内閣総理大臣・小泉純一郎さん

2月23日の「今週のスポットライト」には、「原発ゼロ」を訴えて全国各地を精力的に回っている元内閣総理大臣・小泉純一郎さんをお迎えします。なぜ脱原発に転じたのか、原発ゼロは可能なのか、安倍政権の原発政策はどうなのか、そして原発以外の話題もいろいろお聞きします!

2019年2月23日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190223140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)