障害や難病がある女性のためのフリーペーパー▼人権TODAY(2018年12月1日放送分)
毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で8時20分頃から放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
今回のテーマは、「障害や難病がある女性のためのフリーペーパー」です。
共感と背中をそっと押してあげられるメディアを目指して
『Co‐Co Life☆女子部』は、ファッション、恋愛、グルメなどのカテゴリーに障害のある当事者ならではの情報をプラスして掲載しているフリーペーパーで、NPO法人「施無畏(せむい)」が3か月に1回のペースで発行しています。
編集長の元山文菜(もとやま・あやな)さんに、誌面作りで心掛けていることを伺いました。
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『Co-Co Life☆女子部』編集長の元山文菜さん
- 障害や難病の女の子たちのような一歩出づらい子たちに誌面を通して、「一歩外に出てみようよ」と、気づきやきっかけを与えるメディアを目指しています。ターゲットがアラサーの女性なので、恋愛、グルメ、結婚、仕事の話題を掲載しています。切り口的には一般誌と一緒ですね。これを読んで、いままでメイク一度もしたことがなかった子が初めてメイクするとか、親から障害者なんだから華美にするのはよくないと言われ続けてきたけど、口紅をさすだけで元気が出るとか。カワイイを通して、人を変えている感じがする。
B5サイズで、1冊15ページほど。写真がたっぷり載っていて、ちょっとした待ち時間などで読み切れる作りになっています。
全国版のほか、京都版、大阪版、そして先月からは静岡版も加わり、あわせて2万2千部発行されています。
病院や図書館、福祉施設、学校を始め、こういった分野に関心のある美容院や飲食店のオーナーがお店の一角に置いているケースなど、現在、全国487拠点に置かせてもらっています。

冊子の表紙と特集誌面
これまで取り上げた企画としては、頭の上を見られることが多い「車いす利用女性ためのヘアアレンジ術」、福祉作業所で作られている「スイーツ特集」、3年間独り暮らしを続けているダウン症の女性の生活を覗かせてもらう企画など、同じ障害を抱える人たちに共感と一歩踏み出す勇気を持ってもらう企画を考えています。
障害のある人同士の共感、障害がない人の新たな視点
編集部には、障害のある人も、ない人も所属しています。編集長の元山文菜さんは骨盤の病気によって人工股関節を入れている当事者ですが、副編集長で主に編集・執筆業務を担う関由佳(せき・ゆか)さんは当事者ではありません。
当事者と当事者でない人が混ざり合うことが、誌面を面白くすると言います。
- 編集長の元山文菜さん
- 当事者だとそんなに意識せずに使っているゴム巻くみたいなものも、「それって、ひと工夫だから読者の子に紹介しようよ」とか。上肢障害のある人って自分でメイクするのが難しいので、できないとあきらめている人が多いのだけれども、上肢障害者でもメイクをやっている人がいたら掲載するとか。当事者だけだったら当たり前すぎて話題に出ないことも、当事者でない言語化する人がスタッフにいるから、「それって面白んだよ」と言える。混ざり合って作っているのってすごく大事。
様々な障害の方の普段の生活上での工夫や成功例を示すことが好評の理由のようです。
ただ、「ある衣装を着た女性」を表紙にしようとした時、編集部内で揉めたことがあったそうです。
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副編集長の関由佳さん
- ウェディングドレスの女性を表紙にすることは編集部の中でも揉めた。障害がネックで結婚が難しい女性が多い中で、明らかに幸せそうなものを表紙に持ってくるのは、誰かの心を無意識に傷つけちゃうんじゃないか。びっくりしましたという反応はあった。障害のあるお子さんがいる親御さんから「夢を見させていただきました」という声はあった。結果的にはやってよかった。
「遠慮をして、やらない』という選択肢を取るのではなく、「配慮をしながらチャレンジしていくこと」を大切にされているそうで、それを象徴するようなエピソードでした。
見えない障害をどう取り上げるか
今後どういう展開をしていきたいのか、関さん、元山さんに伺いました。
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元山文菜さんと関由佳さん
- 内部障害の当時者は誌面では伝わりにくい。誌面で伝わらないということは、生活の上でも伝えらないので困っている。それをどう企画で伝えていくかが課題。車いすの障害者は伝わりやすいし、わかりやすいアイコンになっている。これまでも車いす当事者に誌面に何度も登場してもらったけれども、媒体のコンセプトも知れ渡ってきたので、今後は「外から見えにくい障害」を打ち出していくことが課題だし、やっていきたい。
フリーペーパーですので、協賛金や広告費から成り立っています。運営していく難しさについてもお話しされていました。
フリーペーパー発行事業を中心に置きつつ、障害のある女性にはどんなニーズがあるのかを探る「調査部」、当事者がメディアに露出するための「タレント部」も最近立ち上げたそうです。
『Co‐Co Life☆女子部』では、読者の声を誌面に反映させる読者サポーターも募集中だということです。
(取材報告:TBSラジオ・ディレクター 瀬尾崇信)