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芸術の秋・第2段。いま観るべき美術展ベスト3

荒川強啓 デイ・キャッチ!

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評論家・山田五郎さんのコラムコーナー。11月8日(木)のテーマは

芸術の秋・第1段。いま観るべき美術展ベスト3

▼先月4日に「芸術の秋・第1段」として、ボナール展、デュシャン展、それから東京の3つの仏像展をご紹介しましたが、今日はその第2段です。山田五郎さんがオススメする、いま観るべき美術展のベスト3は…?

【3位】「フェルメール展」上野の森美術館(~2/3)

フェルメールの現存する35作のうち9作(常設は8作)が上野に集結しました。43歳に亡くなったとされるフェルメール。画業20年で35枚と考えれば、1年2枚のペースで描いたことになります。これは非常に遅いのですが、なぜか。それは、描かなかったのではなく、売れなかった画家だからです。今回の展示では、フェルメールの作品の他に、同年代のオランダの作家の作品も来日しています。それらの作品と見比べれば違いが解ります。

例えば、ヘラルト・ダウの『本を読む老婆』は、オランダやベルギーの画家特有の細密な描写で、フェルメールとは対照的な絵です。また、ヤン・ステーンの『家族の情景』は群像を描いた絵ですが、当時、絵の中に人が多いほど高く売れました。ところがフェルメールは群像を描くのが苦手。これらの絵画を観ると、いかにフェルメールの作品が「地味であるか」が解るかと思います。

それに、今回展示されているフェルメールの作品の中には、宗教画『マルタとマリアの家のキリスト』がありますが、派手さはありません。当時は、宗教画を描けるのが偉いとされた時代です。宗教画で人気を取れなかったフェルメールは、小さな風俗画に専念しました。でも、結果として、これが現代の感覚にマッチしたのです。山田五郎さんが「引き算の美学」と評する、空間や質感を描いた作品に、現代人は引き込まれることでしょう。

【2位】「ムンク展-共鳴する魂の叫び」東京都美術館(~1/20)

ムンクといえば、やはり有名なのが『叫び』でしょう。今回の展示でも来日しているのですが、西洋画に詳しい方は「あれ、私の知っている絵とは違う」と驚くかもしれません。ムンクは自身の絵の「セルフコピー」を何バージョンも描いています。今回は複数描かれた『叫び』のうち、ムンク美術館が所蔵する作品が初来日しています。こちらは、オリジナルが描かれてから17年後のセルフコピー。ちなみに、皆さんが良く知っているものはオスロ国立美術館所蔵のものです。

そして、もう一つの代表作『生命の踊り』も、ムンク美術館所蔵のコピーの方が来ています。こちらは25年後のコピーで若干色味が明る目に描かれています。一方で、ムンク美術館の方がオリジナル作品もあります。家の壁が赤い蔦で覆われた『赤い蔦』や、暗い色味で不穏な絵の『地獄の自画像』は、今回の展示で観る事が出来ます。ムンクは幼い頃に、結核で家族を亡くすなど、死を極端に恐れていました。また、それと同時に女性に恐怖心も持っていた彼が描く作品は、19世紀末の世の中の不安と呼応したのです。だから、彼の代表作は1890年代、彼が30代の物がほとんどなのです。

そして、ムンクは早死にしたと思っている方もいるようですが、実際は1944年、80歳まで生きました。今回は最晩年に描かれた『柱時計とベッドの間の自画像』も来日していますが、暗さは欠片もなく色彩に富んだ作品です。晩年は幸せに暮らしたのでした。そんなムンクの人生を知った上で、この展示を観ると、作品の事がよく理解できると思います。

【1位】「ルーベンス展―バロックの誕生」国立西洋美術館(~1/20)

画家の王にして、王の画家。ベルギーの大画家・ルーベンスの展示です。彼の作品はフェルメールとは対照的で、多い・デカい・濃い・わからないのが特徴。自身が筆を入れた作品だけで1400点。3×4メートルなどというサイズの作品はザラ。胸やけするほど濃い上に、ギリシャ神話の知識がないと何が描いてあるのか解らないという、まるでフランス料理のオートキュイジーヌのよう。ただ、ルーベンスを知らずして西洋絵画は語れません。

例えば、今回来ている作品『エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち』。もはや何を言っているのか解らないタイトルで、絵はギリシャ神話のマニアックな話を知らないと理解できません。なぜ赤ちゃんの足が蛇になっていて、石像の女性の乳房が多数あるのか。ちなみに、西洋古典絵画で「女性の裸=人間ではない」という意味です。裸で描かれていてば、それは聖書か、ギリシャ神話の登場人物、あるいは未開の地の人ということになります。それを知った上で、改めてこの作品を観ると、楽しめるかもしれません。

そして、ルーベンスは良い父であり、良い夫でもありました。なので、家族の肖像画も良い作品を多く残しています。今回の展示でも観られる『クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像』は、コッテリした絵で胸やけした方に、箸休めとしてオススメです。フランダースの犬のネロが憧れたルーベンス作品の数々、これを機に是非ご覧になってみてはいかがでしょうか。

山田五郎さんのボイスは「TBSラジオクラウド」でお聴き頂けます。