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宇多丸、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を語る!【映画評書き起こし 2018.7.13放送】

アフター6ジャンクション


宇多丸:
ここからは週刊映画時評ムービーウォッチメン。このコーナーでは前の週にランダムに決まった課題映画を私、宇多丸が自腹で映画館にて鑑賞し、その感想を20分以上に渡って語り下ろすという映画評論コーナーです。

ちなみに先週『カメラを止めるな!』、大評判作を評しましたけども、その評について、この番組のザ・コンサルタントコーナーでもお馴染み、ベテラン放送作家の妹尾匡夫(せのちん)さんからちょっとコメントをいただきまして。「いやー、宇多丸くん、あれについて触れると思ったんだけどな」って。(※宇多丸註:ここ、冷静に考えたらちょっとネタバレチックなことをサラリと言ってしまっていたかもなので、とりあえずこの書き起こしではもろもろ伏字にさせていただきます。申し訳ありませんでした!)要は、「○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○の視点があっても良かったんじゃないか? ということに君は言及すると思ったんだけど、しなかったね」っていうようなことを言っていて。

で、たしかに言われてみればなるほど、あれは「ゾンビ映画、ゾンビ映画」って言ってますけど、実際は○○○○○なわけですよね。しかも、○○○でノンストップでやってるっていう、ちょっと若干実は、そこは“ためにする”、無理めな設定が入ってるわけで。そこを受けるというか、そのみんなのがんばりをちゃんと○○○がこうやって受け止めてたんだ、みたいのが入ると、もっとさらに厚みが出るとか、あの設定にもうちょっと意味が出るんじゃないか? みたいなことも含めて……あれだけ上出来な作品でも、まださらにブラッシュアップの余地があった、のかも、みたいなお話ね。面白いなと思いましたね。いずれね、監督の上田慎一郎さんに直接お話をうかがう機会なんかあったらね、そのあたりなんかも話してみたいなと思っております。ということで、今夜評論する映画は、こちらでございます! 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』

(曲が流れる)

『カメラを止めるな!』にくらべて製作費が何倍だか、もう計算するのも嫌なくらいの規模だと思いますけどね(笑)。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に続く『スター・ウォーズ』シリーズスピンオフ第2弾。シリーズ屈指の人気キャラクター、ハン・ソロの若き日を描くSFアドベンチャー。あ、このメインテーマはね、ジョン・ウィリアムスがね、書き下ろしていますね。相棒チューバッカや愛機ミレニアム・ファルコンとの出会いが明らかになる。若き日のハン・ソロを演じるのは若手俳優オールデン・エアエンライクさん。その他、ウディ・ハレルソン、エミリア・クラーク、ポール・ベタニーなど。監督は『アポロ13』『ダ・ヴィンチ・コード』などなどのベテラン、ロン・ハワードということでございます。

ということで、この『ハン・ソロ』をもう見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、多い。まあね、『スター・ウォーズ』の新作ともなれば、それはある程度はあるでしょうけどね。ただ、賛否の比率は、なんと否定的なメールが6割。「褒め」と「普通」という意見がそれぞれ2割ずつ。最近のこのコーナーでは珍しく、否定的感想の方が多いという結果になってしまいました。否定派の意見としては、「ストーリーに起伏がなく、ハン・ソロにも新キャラたちにも魅力がない」「どこかで見たようなシーンのつぎはぎだらけ。ハン・ソロの過去の答え合わせをしているだけ」「画面が暗くて見づらい」「映画としては凡作。『スター・ウォーズ』映画としては最悪」などの声が多かった。反面、褒める意見としては「最近の『スター・ウォーズ』にはなかった明快さがいい」「単純に楽しめた」「ハン・ソロの青春映画として面白い」「チューバッカがかわいい」「チューバッカ好きにはたまらない」(笑)などの声、ということでございます。

■「この物語、自分は本当に見たかったんでしょうか?」(byリスナー)

代表的なところをご紹介いたしましょう。「ひなの社長」さん。「楽しかった。展開が王道で熱く、素直に楽しんで見ることができました。漂う雰囲気もエピソード4・5・6に近いのも良かったです。とりわけハン・ソロが操縦席、チューバッカが副操縦席にそれぞれ座った時にかかる音楽のタイミングが完璧で、ここだけで5億点です。見終わった後はシリーズを見返してみたくなったりする、スピンオフとしてしっかりと役割を果たしてる作品だと思いました」という肯定的な意見。

一方、ダメだったという方。「いせもん」さん。「公開初日にウォッチしてまいりました。冒頭、目を疑うようなスピーダーの遅さがこの物語の全てを物語っていたように思います。ど、鈍重……。やっぱりフィル・ロードとクリストファー・ミラーのコンビによって作られたものを見たかったなというのが本音です」。この話、後ほどしますけどね。「……いや、待てよ。よくよく考えてみればそもそもこの物語、自分は本当に見たかったんでしょうか? というのも『ハン・ソロ』を見てしまえば、これまでの『スター・ウォーズ』という大きな宇宙に向けて自分が思いを馳せていた解釈とか期待とか可能性とか、それら全てがどんどん陳腐化して狭まっていく気がして。

少なくとも今回、自分がこれを見ることでハン・ソロとチューイの出会いに関する想像を膨らますことはもうできなくなってしまったわけです。それってなんか、どうなんでしょうかね? 『スター・ウォーズ』における楽しみ方の根幹を揺るがす大問題だと思うのですが」。これは実は結構ね、本質的かつ、この話はちょっとね、踏み込んでくと結構時間がいる、大問題提起だと思いますけどね。はい。といったあたりでみなさん、メールありがとうございます。

■監督が途中で現代アメリカコメディーの鬼才から老練な名監督へ交代

私も『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』、T・ジョイPRINCE品川でIMAX字幕3D、そしてバルト9で吹き替え2Dで2回、見てまいりました。ディズニー傘下に入って改めて仕切り直しの『スター・ウォーズ』シリーズ……「エピソード○○」と通し番号がついたメインストーリーと、スピンオフ作品ですね。それを交互に公開していく、というサイクルがスタートして、すでに3年弱たっているわけですね。で、当初発表された企画の中でも、僕は個人的に、「えっ、なにそれ? 超面白そうじゃん!」という風にテンション上がっていたのが、このハン・ソロのスピンオフだったんですね。

というのもやはり当初は、監督として『くもりときどきミートボール』『21ジャンプストリート』『22ジャンプストリート』、そして『LEGOムービー』などなどの傑作群で知られる、まさにアニメ/実写にかかわらず現代アメリカコメディーの鬼才、フィル・ロードとクリストファー・ミラーのコンビが起用、という話を聞いて。要はこれ非常に、本来の『スター・ウォーズ』らしからぬ人選なわけですよね。それを聞いて、「あ、なるほどね。スピンオフのターンではそうやって冒険的な、人材を含めた冒険をして、シリーズの世界観を広げていくっていうのはこれ、非常に賢い戦略なんじゃないかな。さすがディズニーだな!」なんていう風に思えたわけです。

しかも脚本が『帝国の逆襲』とか、これが発表された時点ではまだ公開されてませんでしたけども、後に『フォースの覚醒』も手がけるローレンス・カスダン。今回はその息子さんと共同脚本でやっていますけど、ローレンス・カスダンが手がけるということで。まあ、『スター・ウォーズ』としてもそんなにハズしたことにはならないだろう、というような思いもあったわけです。ただですね……いまにして思えば、やっぱりその両者の食い合わせが、そもそもちょっと良くなかったのかな? ということなんですかね。結果論ですけどね。フィル・ロード&クリストファー・ミラーの、まあもうアドリブもガンガンガンガン取り入れていく。で、そうやってある意味元々あったストーリーとかフィクションとかの枠組みをズラしていったり外していったり、何なら壊していく、というような、まあ今風のセンス、手法ってのが……でも、その手法の中では、やっぱりこのロード&ミラーは、非常にセンスは高い方なんですね。腕は高い方です。

なんですけど、その感じがやっぱり、特にカスダンを含む製作陣、ちょっと難色を示しだしたという。で、結局降板ということになった。現状、クレジットはエグゼクティブ・プロデューサーということになってますけど。で、急遽ジョージルーカスの盟友でもあるベテラン、もう手練中の手練ですね。名監督ロン・ハワードが受けることになった。言うまでもなく、ロン・ハワードはもう、名作・傑作多数ですけど。近年でもやっぱり、特に『ラッシュ/プライドと友情』、F1のニキ・ラウダとかの話とか、あと『白鯨との闘い』、これも本当によかったですね。素晴らしかった。本当に、今時珍しいくらいちゃんとした、クラシカルな風格のある映画を撮る人ですね。なので、カスダンの脚本のテイストにはやっぱりこっちが合っている。世代的にも近いですしね、それは当然、という。

はっきりしているのは、フィル・ロードとクリストファー・ミラーとは正反対の資質の監督、っていうのは間違いない。とにかくロン・ハワードが、残り撮影期間3週間っていう異常な状態の中、70%とも80%以上とも言われるような撮り直しを行った、っていうことなんですね。まあ、かようなドタバタの体制が広く知られてしまっていたのに加えて、さっき言ったような、やっぱりディズニー体制のシリーズ量産サイクルに、みんながね、早くもちょっともう飽きだしている、というのはある。あとは恐らくはこれ、先ほどのメールにもちょっと通じるところですけど、一種の袋小路感が、早くも感じられだして。まあ、そんなようなタイミングが重なったこともあって、いざ全米で公開されてみると、少なくとも興行収入的には、『スター・ウォーズ』フランチャイズとってはかなり期待はずれな結果になってしまった。

■全体の味がぼんやり薄味

ということで、まあいろいろ不幸というか不運な作品になってしまったことは否めないですよね。たとえばですね、もともとマイケル・ケネス・ウィリアムズさんという方が演じる予定だったクリーチャーがですね、ロン・ハワード作品に何度か出てたポール・ベタニーに代わって、見た目は割と普通の人間キャラになって。そのへんはまあいいとして、明らかに撮る時間がなかったんだろうなっていうぐらい、このポール・ベタニーの出てくる場面は、同じ画角のショットが何回も出てきたりして、まあ非常に単調なんですね。「ああ、時間がなかったんだろうな」っていうのが見え隠れしちゃったりとか、そんなのがあるんだけど。

ただまあ、そういう明らかなね、その超巨大なハンデを背負った作品であるというのを一旦脇に置いておいて、まあ一応フラットに見たとしてもですね……やっぱり1個の映画として、そしてもちろん『スター・ウォーズ』内の一作品、ハン・ソロの前日譚として、とにかくただただひたすら、無難にまとめ上げることに終始してる。まあ、この状況で無難にまとめあげたというだけでも、ロン・ハワードの手腕がすごいっていうのは、それの証明ではあるんだけど。ただ、作品単体として見ると、正直全体にかなり……1個1個がめちゃめちゃダメとかじゃないんだけど、1個1個の味が薄いというか。なんか見終わった後に、「うーんと、どんな味の何を食べたのかよくわかんないな」っていう(笑)、非常に全体の味が、薄めな1本になっちゃってることは否めないと思いますね。

たとえばですね、今回は『スター・ウォーズ』のスピンオフシリーズで、僕が事前に思っていたのは、こういうことだろうなと。要は、スピンオフでは、様々なジャンル映画的表現に振り切ることができる。たとえば『ローグ・ワン』だったら、戦争映画に振り切ることができる……まあ、それがちゃんとできていたかどうかは別として。あれもね、監督交代劇とかありましたから。ということで、ハン・ソロのスピンオフならそれは当然、誰がどう考えても、西部劇だろ!っていう。これはまあ、非常に妥当な発想ですよね。で、なおかつ、ハン・ソロといえば当然アウトローなわけですから、アウトローで西部劇なんだったら、じゃあもういっそ『大列車強盗』で行こうぜ!って、これも映画史的必然として出てくるアイデアですよね。

で、その大列車強盗シーンのロケ地に、ドロミーティ山地っていう、まあマカロニ・ウエスタンゆかりの地をチョイスするという、この文脈の踏まえ方も抜かりがないですし。まあ非常にわかりやすい、西部劇ですよ!っていう記号的なショット。たとえば、股の下とか、あとはホルスター越しに相手を捉える、まあもう記号的と言っていいぐらい西部劇!なショットもあるし。あるいは、焚き火を囲んでさ、何か話をして。で、マグカップで飲んでいる飲み物を、ビシャッて火にやるとかさ。もう西部劇の記号的演出と言ってもいいんだけど、まあそういうのもあるし。もっと言えば、野蛮な襲撃者たちと思っていた連中が、実は……というような後半の展開は、まあ修正主義的西部劇の流れ。ポリティカリーコレクトネス的にも、そういうのの配慮があったりとかして。とにかく、狙いとしてはもちろん、ハン・ソロのスピンオフやるならばこういうことでしょう、という。まあ、狙いとしては間違っていないし、実際にそれらをいちいち律儀にちゃんとやっている、とも言えるわけですね。

あとは、たとえばワーウィック・デイヴィスを出してきて、もちろんイウォーク(のオマージュ)であったりとか、あとはジョージ・ルーカスのプロデュースでロン・ハワード監督ということで、『ウィロー』オマージュが入っていますよ、とか……いろいろなね、そういう押さえるところをちゃんと押さえている、律儀にやっている、というのはちゃんとやっている。ただ……いま説明した、以上でも以下でもない、っていうことなんですよね。

■薄味の原因は「詰め込みすぎ」

たとえば、大列車強盗しますよっていうんで、ジェットコースターみたいに車両がこう、グリグリグリグリ横に縦に動くという、ジェットコースターみたいなね、ああいう列車という……まあ、舞台立てとしては非常にワクワクしますし、「ああ、これでどんなあっと驚くアクションが出てくるのかな?」って思ってると、別にその舞台立てがそれほどフレッシュに、愉快に活用されるわけでもなく、みたいなね。「危なーい!」かなんかやっているんだけど、もうちょっとそのさ、縦・横に動くからこうなった、みたいなの、ないわけ? みたいなのとかね。

とかですね、あとたとえば、アウトローチームの絆の深まりがね……はみ出し者たちがどんどんチームになっていく、これは我々は大好物のはずなんだけど、その絆の深まりが、割と表面的なままスイスイ進んだ挙げ句、サクサクサクサク、どんどんどんどんなんかお涙頂戴的なというか、お別れ的な展開までどんどんどんどん行っちゃって。要は、絆も大して深まっていないのに、もういきなりお別れ、みたいな流れになって。なんか「感動的でしょ?」みたいに言われるんだけど……そのせわしなさ、雑さっていうのは僕、これは『ローグ・ワン』の時にも感じたことなんですけど。

これね、原因は割とはっきりとしていて。要はこの、はぐれ者チームが集まって、このチームだから、このメンツのチームワークで勝利した、っていうのを一度はまずしっかり描いてからこそ、「ああ、このチームは最高じゃん!」って……で、「メンバーが欠けたら嫌だ!」っていう気持ちが生まれるのに。そこをちゃんとやってないで、もういきなり作戦が失敗してんじゃん!(笑)みたいなところとか、まあいきなり死んじゃったり、とかっていうのがあるから、なんかついていけないっていうね。これ、たとえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の一作目で、ちゃんとやっぱりそのチームワーク感みたいなのを積み上げているのと見比べると、はっきりしますけどね。とにかく、1個の作品の中に、いろんな展開とか感情の起伏みたいなのを詰め込みすぎて、急ぎすぎていることから来る問題だと思うんですけどね。

■ハン・ソロ前日譚としてクリアすべきポイントは律儀にクリア

同様にですね、たしかにハン・ソロの前日譚として、クリアすべきポイントをいちいち律儀にクリアしていく作品ではあるんです。もうこれも、私がいちいち挙げるまでもない。たとえばね、あのチャラーンってチェーンのついたダイス。これ、クリア。そもそもこのダイスは、ジョージ・ルーカスの出世作『アメリカン・グラフィティ』で、ロン・ハワードが役者として出てましたね。そのロン・ハワードが乗っていた車についていたサイコロのマスコットのオマージュが、そのミレニアム・ファルコンのダイスなんで。たとえばロン・ハワードがそのダイスのオマージュ返しするのは、まあ、ねえ。理には叶っている。文脈的には合っている。で、ダイスはクリア。

で、名前の由来、クリア。あれは『ゴッド・ファーザーPart 2』のゆるいオマージュだっていうんですけどね。あと、当然チューバッカ、チューイとの出会いもクリア……この、でもチューバッカとの出会いのくだりは、僕はここはすごいよかったなと思いますね。ひょっとするとここの、要するにフィル・ロードとクリストファー・ミラー的なちょっと掛け合いのギャグ感、ここはひょっとしたら、その2人の撮ったところの名残りなのかな?って。これはあくまでも想像ですけども。チューイとの出会いもクリア。で、ブラスター。モーゼルを作り直したブラスターをゲット。クリア。しかも、さっき言ったドロミーティ山地でモーゼルっていうことですから、『殺しが静かにやって来る』とかね、そういうようなオマージュもあるのかもしれませんよね。まあ、それでクリア。

で、ランドとの出会い、クリア。ランドが乗っているミレニアム・ファルコンに乗るのもクリア。で、ファルコンの中のモンスターチェイスもクリア……とかまあ、とにかくいろんなものをクリアしてく、っていう感じで。もちろんファンとしては、いちいちそのね、「ああ、ああ、あれね。あれがこれね。はいはい。あれがこれ、あれがこれ、あれがこれ」って。いちいち「おおっ」ってなるんですよね。ボスクっていう名前が出てくれば、「ああー」ってなるんだけど……これもやっぱり、「それ以上でもそれ以下でもない」。ねえ。

■隙間を埋めていくことで逆に世界が狭くなる

で、いちばん問題なのはこれ。さっきのメールにもちょっとあったことに通じますね。本来スピンオフっていうのは、シリーズの世界観の隙間で、自由に想像力を羽ばたかせられるからこその、スピンオフなわけですよね。だから楽しいのがスピンオフのはずなのに、たとえばコレリア星がどういうところなのかとか、チューイとの出会いがどうだったとか、あとはそれこそ、「ケッセル・ランを12パーセクで……」とかっていうのが、具体的に何なのか?っていうのをいちいち見せられるとですね、要は「あの作品のあれが実際にはこうだ」とか、「あの作品のあそことここが実は繋がってる」とか、「あのキャラが実はここにも関係している」とかばっかりこうやって張り巡らされると、どんどんどんどん、逆に作品世界が狭く感じられてくる。閉塞感が強くなってくる、っていう問題があるわけですね。

あと、今回で言えばですね、これはちょっと若干、最後のネタバレになりそうなギリのあれですけど……CGの方のシリーズの『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』を見てないと、要するに実写版のシリーズだけだと、「えっ、えっ、えっ?」ってなるキャラクターが、サプライズ的に登場するんですよね。これもまたちょっと、意外と重大な一線を、平然と超えてくるな!っていう。「えっ、マジで? 『クローン・ウォーズ』の方のラインのあれ、アリにするんだ?」みたいな。そんな諸々もあってですね。なんかちょっと、スピンオフというか、このシリーズ化で、どんどんどんどん記号的な「クリア」だけ重ねていくのの、問題が出てきている。

■若きハン・ソロを演じるオールデン・エアエンライクは好演

フォローをしておくと、役者陣はもちろんみんな好演しているし、魅力的なキャラやシーンも、あるはあるんですよ。いくつかはね。あの、オールデン・エアエンライクさん。ハン・ソロ役をやるという重責を担っていますけど、顔立ちそのものというより、全体の雰囲気で、「エピソード4手前のハン・ソロ」というのを僕は見事に体現してると思います。ただちょっと、むしろ体現が上手くできすぎてて、寄せ方が上手すぎて、今回の未熟な、青いハン・ソロのキャラクターにしては、ちょっと大人っぽすぎるんですよね。役柄としてはほとんど、20代前半とか、ティーンでもいいぐらい、今回のハン・ソロは幼いし、少年っぽいくらいの行動とか役柄なんですよ。行動原理が。

だから、なんかそのハリソン・フォードのハン・ソロ手前にしては、お前、なんかいろいろ童貞くさすぎるぞ……みたいな(笑)。もうちょっと少年っぽい人でもよかったぐらいかと思いますけどね。あと、『ゲーム・オブ・スローンズ』でお馴染みエミリア・クラークさん。キーラというキャラクターを演じていますけど。もちろん非常に魅力的なキャラクターなんですね。ただ、これももったいないのは、彼女は逆に、非常にオトナな役柄ですよね。まあ子供向け映画にしてはちょっとどうなんだ?っていう、オトナな背景を感じさせるキャラクター。この役柄が本来ポテンシャルとして持ってる深みみたいなものを、お話や演出で掘り下げようもありそうなのに、まあディズニーで子供も見る映画だから……っていうので、まあこんぐらい、というもったいなさもあるし。

対照的に、チャイルディッシュ・ガンビーノこと、ドナルド・グローヴァーさん演じるランド・カルリジアンはですね、逆に彼は、(オリジナルキャストである)ビリー・ディー・ウィリアムズをほとんど意識してなさそうに見える、非常に自由な雰囲気で演じていて、これがなんかむしろよかったです。「こんぐらいでいいんだよ!」っていうぐらいの感じ、しましたけどね。そのドナルド・グローヴァー演じるランドと、まあ女性っていうか女性的なドロイド、L3っていうのが今回、出てきますね。L3との関係性は……まあ『ローグ・ワン』からこっち、ドロイドのキャラクターを立てようとするあまり、いくらなんでもドロイドが人間的すぎないか?っていう気はしなくもないけども。

このフィービー・ウォーラー=ブリッジさんが演じているL3というキャラクターと、そのランドの関係性。「えっ?」っていう踏み込み方(笑)。ここもちょっと、フィル・ロード&クリストファー・ミラーパートの名残りなのかな?って……要するにちょっと踏み込んだギャグというか。それも含めて非常に楽しいっちゃ楽しいし……という感じですね。あと、あれですね。フィル・ロード&クリストファー・ミラーコンビっぽいといえば、向こうの方にいるファルコンが、勝手にビャーッて飛んでいっちゃう(笑)っていうショットがあって。この「向こう側で何か変なことが起こっている」みたいなのは、すごく2人のコンビっぽいギャグ感だなと思いましたけどね。

■隠せない監督交代劇の悪影響、そしてそもそもの出発点に疑問符

ただですね、やっぱりその、キャラクターとか演技とかは良くても、その展開が……特にクライマックス。裏の裏の裏みたいなこと、「意外な展開、意外な展開」みたいなのを重ねすぎているのと、それでもそれぞれのキャラクター、特にハン・ソロとかは、「それでもイイ人」「裏の裏だけど、イイ人」みたいなことをやるから、どんどんどんどんキャラクターの焦点がボケっていっちゃって。「えっ、だから結局、なに?」みたいな。まあまあ、なんとなくぼんやり「イイ人」……「ぼんやり悪くて、ぼんやりイイ人」(笑)みたいな感じになっちゃって。なんかやっぱり、ピントがボケる一方になっちゃっている。

で、そのロン・ハワードの資質と、そのカスダンが最初からキッチリとやっていればまた話は違ったかもしれないけど、やっぱり急に作っているせいで、手堅いことが悪いわけじゃないのに……今回はその手堅さっていうのを、一段上の段階っていうか、一段上のクオリティーに持っていく時間とか余裕が、やっぱりなかったんだな、っていう感じがします。手堅いことそのものが悪いわけじゃないと思うけどね。あとはやっぱり、とにかく今回は、そもそもやっぱり、フィル・ロード&クリストファー・ミラーって、あの2人に任せるんだったらやっぱり、どういうことになるかは想像しておけよ!っていう(笑)。『21ジャンプストリート』、見てねえのかよ!っていうさ、ことだから。そもそもね、降ろすぐらいなら任すんじゃねえよ!っていうところも含めて、ちょっとやっぱり、脚本のローレンス・カスダンとの食い合わせが悪かった。逆マジックが起こっちゃった、っていうのがあると思いますね。

ただ、僕はじゃあ今回、手堅くエンターテインメントの……割とたしかに、見たことがあるような展開が多くて、広がっていかないっていうのがあるけど。だからといってじゃあ、僕の意見ですよ……『最後のジェダイ』のように、粗雑な逆張りをドヤ顔で重ねりゃいいか?っていうと、全くそうは思いませんので。っていうか、やっぱりあれが粗雑すぎたので、『スター・ウォーズ』から気持ちが離れた人っていうのが多いのが、結構オレは大きいと思いますけどね! (小声で)僕もその1人ですし……。

ということで、じゃあどうすればいいか?っつったら、やっぱり僕はエピソード7の方向性。つまり新キャラを……『スター・ウォーズ』の世界観とかレールを使って、新キャラをしっかり描く、っていうことだと思うんですけどね。だから、これはまあ高橋ヨシキさんが言ってましたけど、『スター・トレック』みたいにいっそ100年後とか、そのぐらい飛ばしてやるとかしちゃうしかないよもう、っていうね。そういう感じには思いますね。まあでも、兎にも角にもですね、いろいろとシリーズの公開体制、量産体制の見直しとかあるらしいですけど、兎にも角にも、絶対にやってくるエピソード9……ねえ。どういうことになるのか? (棒読みで)「いろんな意味で今から楽しみでーす」。ぜひぜひ劇場でウォッチしてくださーい!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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