■オンラインゲームなら見知らぬ人と「普通のやり取り」をできる
人気商売である芸能人にとって、気の休まる場所はほとんどありません。特にこのSNS時代、プライベートであっても気を張っていなければなりません。また、プライベートでの出来事や交友関係をSNSに投稿することも多々あるわけですから、もはやそれはプライベートと言えないようにも思います。
「マイゲーム・マイライフ」のゲスト・南條愛乃さんのトークを聞いていて、唯一の気が休まる場所はオンラインゲームの世界なのではないか……と思ったのでした。
南條さんはオンラインゲームのFF14廃人です。
南條「お正月休みがあったんですけど、4日くらいあって、ずっとログアウトせずにいましたね。お雑煮とかも作るのめんどくさいので、焼いただけの素モチを食べて。ゲームの中でフレンドさんと初日の出を見ました。晴れ着っぽい装備を見繕って。私の正月、充実してるな今回、って(笑)」
オンラインでの友達、いわゆる「フレンド」もいるようで、FF14の世界での交友関係を楽しいと感じている理由が印象的でした。
宇多丸「向こうは南條さんとはわかってないんですよね、当然ね」
南條「そうなんです。それがまた、当時の私にはすごく刺さって。南條愛乃ということを知らずに、人間対人間の単なるやり取りをできるんです。『大丈夫? 疲れてない?』とか。“南條さんに対して”の『疲れてない?』という気の遣い方ではなく」
宇多丸「むき出しの人間性でね」
南條「この人は本当に優しいんだなっていう人もいれば、自分の利益だけを追い求める人もいて、そういうのがすごく楽しかったです」
どこへ行っても「南條愛乃」でいなければならないし、「南條愛乃」を求められ、「南條愛乃」前提の人間関係しか周りにない。芸能人としては当たり前のことかもしれませんが、こうして考えるとやっぱりちょっと異常です。だからこそ、なんでもない、ただ一人の人間として、フラットな人間関係を構築できるところにオンラインゲームの面白さを感じるというのは、なかなか思い至らなかった視点でした。
■今回のピックアップ・フレーズ
(ゲーム上のアバターの話)
南條「うーん、(どんなアバターを作っているかは)あんまり言うとねえ、特定しようとしてくる人がいるんですよ(笑)」
宇多丸「ははははは。ちなみに僕は、ものすごく自分に寄せてしまうタイプなんですよ。作りやすい問題というのがあって。スキンヘッドにサングラスって、自分に寄せやすいから。だから、ゲーム上でそういう奴を見かけたら疑ってください(笑)。やたらと慎重な動きをしていたら、僕の可能性があります」
文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)