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食道3大疾患の1つ「食道アカラシア」の最新治療

森本毅郎 スタンバイ!

食道には「3大疾患」と呼ばれるものがあります。1つは「食道がん」、そしてもう1つは「逆流性食道炎」。この2つは有名ですが、もう1つ「食道アカラシア」という病気があります。そこで、今日はこの「食道アカラシア」について、6月11 日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

食道がんや逆流性食道炎に比べるとマイナーですが、食道アカラシアも影響の大きい病気です。

症状としては、まず食べ物だけでなく、飲み物も、飲み込みにくくなります。そして、胸のつかえ、痛み、胸焼け、進行すると、嘔吐や背中の痛みがでて、病状が進行すると体重が減少したり誤嚥性肺炎などが現れます。こうした症状があり、病気がはっきりしない方は食道アカラシアを疑ってみていいでしょう。

この食道アカラシアは、傷が残る外科手術しかなかったんです。そこに新しい負担の少ない手術方法が開発されて、日本でもかなり広がりを見せています。そこで今日は食道3大疾患の1つ、食道アカラシアについて、その最新医療をご紹介します。

★食道アカラシアとは

食道は、食べ物を胃に通す、という役割のほかに、食べ物が口に戻ってこないようにするという役割もあります。胃につながる食道の出口には、逆流を防ぐ筋肉のバルブ=弁のようなものがついています。そのバルブが閉じたままでは胃に食べ物が落ちて行かないので、物を飲み込んだ時にバルブが緩んでくれるのが、正常なバルブの動き方です。しかし、食道アカラシアになると、2つの異常が出て来ます。

①つ目は食べ物を胃に送るための、伸びたり縮んだりする収縮運動ができなくなる。

②つ目は、出口部分のバルブが緩まず、食べ物が胃に落ちない。

この影響で、はじめにご紹介したように、症状としてはまず食べ物が飲み込みにくくなります。これは固形物だけではなく、液体もうまく飲み込めなくなります。そのほか胸のつかえ、痛み、胸焼け、進行すると、嘔吐、特に夜間寝ている時に多い傾向があります。さらに背中の痛みがでて、病状が進行すると体重が減少したり誤嚥性肺炎などが現れます。

こうした症状のうちいずれかの症状がある場合は、食道アカラシアの可能性があります。

★原因は不明

食べ物を胃に運んだり、バルブを調節する筋肉は、脳からの信号でコントロールされているんですが、この信号になんらかの障害が起きているものと考えられています。そんな食道アカラシアの診断方法は4つあります。

①胃カメラ=胃の内視鏡。

②X線によるバリウム検査、

③食道内圧検査、

④CT検査です。

これらによって、食道の拡張=大きく広がりすぎていないか、や、食道と胃のつなぎ目が狭くなりすぎていないか、圧力が強すぎていないか。そして、食道がちゃんと正常な働きをしているかを検査します。それらを総合的に判断して、食道アカラシアかどうか診断します。

★治療方法は?

これまでは、薬物療法や、バルーン拡張術という、食道と胃を繋げる部分を広げる治療、そして、腹腔鏡手術などの治療が主に採用されてきました。特に腹腔鏡手術は治療効果が高いことから食道アカラシアの根治的治療の主体とされています。

しかし、おととし保険適用となった新たな治療法がここ数年で広がってきています。その治療法の名前が「POEM(ポエム)」経口内視鏡的筋層切開術といいます。この方法は、体に傷をつけずに内視鏡=いわゆる胃カメラだけで行う方法で、昭和大学江東豊洲病院の井上晴洋教授が世界に先駆けてヒトで成功した方法です。

★POEM(ポエム)とは?

「POEM」は口から入れた内視鏡を食道に挿入し、食道の粘膜を2センチくらい切って、そこから内視鏡を粘膜と筋肉の間に潜り込ませます。そして、食道を締め付けている筋肉を切って緩めることで、食道を広げるという手術です。

その「POEM」の良い点は、お腹を切ったり、穴を開けたりしないで済むこと。体への負担が少ないという点などです。

体に傷がつかないこと、という点でいうと、これまでの食道アカラシアの手術では、根治的治療ができて、再発が少ない腹腔鏡手術が行われていました。ただ、この腹腔鏡手術、腹部に5か所の穴をあけ、そこから腹腔鏡を挿入して手術します。これでは筋肉の切開が長くても7センチくらいしかできません。傷も残ります。加えて筋肉を25センチも切開することができ、きちっと治療を終えることが出来ます。

また、体への負担が少ない、ということでいうと、腹腔鏡手術では手術時間が3~4時間かかっていたんですが、POEMは口から挿入した内視鏡だけで筋肉を切開するので、時間は1時間半ほどなのです。また、腹腔鏡手術では通常、患者さんに『食事は普通にできるようになるが、胸の痛みは取れない』と説明するのですが、POEMの場合は7割方は胸の痛みが消える。入院期間は、術後4日で退院です。それで、翌日から水が飲め、2日目から食事ができます。

★食道を治療したのに2日目から食事ができる

一方、これまでの治療では合併症の逆流性食道炎が起こりやすくなると言われています。逆流性食道炎は、食道と胃のつなぎ目の筋肉が弱まって胃酸を含む胃の内容物が食道へ逆流するというものです。

これに対しPOEMは、内視鏡を使って、その筋肉を切って緩めることで、食道を広げるという手術で、逆流性食道炎の発生率は15%です。これまでに重症化した例はなく、すべて内服薬でコントロールできているということです。

POEMは、3歳以下の幼児や、全身麻酔がかけられない体の状態が悪い患者さんは、適応外となりますが、それ以外の患者さんであれば受けることができます。このため適応範囲が広く、メリットが多いので、世界的にも食道アカラシアに対する標準治療になってきています。

日本国内で現在POEMを導入している病院は、昭和大学江東豊洲病院の他、そちらで指導を受けた医師たちが地元の病院に戻って治療を行っていて、現時点で20施設程度あります。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180611080000

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