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国が危ない方向に舵を切る兆しは「報道」と「教育」に顕れる / 脚本家・太田愛さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
4月28日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、平成ウルトラマンシリーズやドラマ『相棒』の脚本で知られる太田愛さんをお迎えしました。小説もお書きになっていて、『犯罪者』『幻夏(げんか)』『天上の葦(てんじょうのあし)』といった読み応えのある社会派ミステリーは一級のエンターテインメントであるだけでなく、いまの日本社会への警鐘となっています。

太田愛さん

太田愛さんは1964年、香川県高松市生まれ。高校生の時から市民劇団に参加し、また小説も書いていました。青山学院大学でも演劇にかかわり舞台脚本を執筆。卒業後は塾の講師をしながら小説を書き続けていました。小説を書き始めると話がどんどん膨らんで終わらないので、文学賞などに応募したことはなかったそうです。

そんな生活が10年になった頃、出版社にいた先輩から「テレビで平成のウルトラマンが始まった」という話を聞いて、円谷プロを訪ねると「じゃあ、とりあえずプロット(物語の筋)書いてみて」。当時は「プロット」が何かも知らなかったそうですが、書いて持っていったところ採用。1997年1月、『ウルトラマンティガ』で脚本家デビューしたのです。

「そのときはまだ塾の講師をやっていたので、お昼から夕方4時ぐらいまで監督と打合せをして、夕方5時から塾で教えて、夜9時半ぐらいからまた監督と会って今度は『魚民』でああでもない、こうでもないって朝まで議論して。それで『昼までに書き直して』って言われて、家に帰ってまた書いて。お昼に監督と会って、夕方になるとまた塾に行って。あれ、全然寝てないぞって(笑)。これはとても体がもたないと思って、でも塾の子供たちを放り投げるわけには行かないので2月まではなんとか頑張って、受験が終わって送り出したところで、シナリオの仕事だけにしました」(太田さん)

スタジオ風景

その後の平成ウルトラシリーズでも脚本を担当した太田さんは、2009年から人気ドラマ『相棒』の脚本に参加。3年続けて元日スペシャルを手がけるなど人気脚本家の一人になりました。太田さんが脚本の回は面白い! という相棒ファンがたくさんいます。

2012年には『犯罪者 クリミナル』(文庫では『犯罪者』と改題)を書いて小説家としても注目されるようになりました。続く『幻夏』(2013年)と『天上の葦』(2017年)は「日本の空気が危うくなっている。いま書いておかないと手遅れになる」という危機感から筆を執ったそうです。ここから太田さんのお話のトーンは一気にギアチェンジします。

天上の葦

『天上の葦』はTBSと思しき放送局が舞台で(ただし太田さんは明言はしていません)、政府に批判的な大型報道番組(ニュースステーション?)を立ち上げようとする話が出てきます。「他人事とは思えなくて、どんどん読んでいった」と久米さん。物語には現代の犯罪と戦争犯罪、2つの犯罪が絡んできます。この話は太田さんが非常に気にかかっている「報道と権力の関係」がテーマになっているのです。太田さんはこのところ急に世の中の空気が変わってきたと感じています。それは、政府に批判的なニュースキャスターたちが画面からどんどん消えていったり、「反日」「非国民」「国賊」といった戦時中によく使われた言葉がネットなどにあふれるようになってきたり。つい最近も自衛隊幹部が野党の国会議員に向かって「お前は国民の敵だ!」と叫ぶという、それこそ戦前・戦中に逆戻りしたようなことがありました。でも、こうしたことに対して私たちはあまり驚かなくなっています。そこが怖いことだと太田さんは言います。かつての戦争のときもそうでした。私たちが気づかないうちに日本は戦争への道を走り始めていました。そして気づいたときにはもう後戻りできなくなっていました。そして「戦争が始まってしまったからには、兵隊さんを応援しなければ」という空気に変わっていたのです。これは太田さんが、戦争を体験した方たちから聞いた話だそうです。

「国が危ない方向に舵(かじ)を切るときに、いちばん顕著にその兆しが表れるのが報道です。その次が教育。報道というのは情報を操作して、非常に巧みに空気をつくっていきます。そして現実の世界とは違うものを見せることができます。だから報道の戦争責任というものも問われなきゃいけないと思います。そしてそんな報道を一人ひとりの善良な人たちがどうして許してしまったのか、そこもきちんと検証されなければいけなかった。でもそれがないまま来てしまった。いま『非国民』とか『国賊』といった言葉が一般の人々の生活の中で幅をきかせ始めているのは、検証や総括をしてこなかったことが大きいと思います」(太田さん)

久米宏さん

「放送ではNHKのラジオが大本営発表を伝えていました。当時、民間放送はまだありませんでした。つまり民放は、戦争に向かっていくときに世の中がどうなっていくかということを経験していないんです。そのことをよほど気にしていないと、NHKと同じ轍を踏むことになる。それをきちんと認識もしないで毎日、報道していたらいかんと思います。だから僕は、民放がんばれって言ってるんです」(久米さん)

「報道は政府広報ではないんです。でも当時の新聞にとって戦争は『儲かるイベント』だった。戦時中は新聞がすごく売れたからです。だから情報源である軍の近くにいたかった。そのうち検閲に引っかかるような記事を書く記者が誰もいなくなってしまった。結局、新聞は権力と闘うべきときに闘わず、企業の存続を考えて自滅したんです。そのことを伝えたいと思って『天上の葦』を書きました」(太田さん)

太田愛さんのご感想

太田愛さん

終わってほっとしました。久米さんとお会いできると思ったときからずっと緊張していたので、やっと解き放たれてよかったです(笑)。『ニュースステーション』で強く印象を受けた世代なので、出演の話もはじめは半信半疑で。あっという間に駆け抜けた感じでした。

テレビの話をするときはだいたい制作現場の話が多いのですけど、自分の小説について話をするときはその内容について聞かれるので特に緊張します。話しているときは、間違ったことを言ってはいけないと思って集中していて、緊張もどこかへ行っちゃうんです。でも話が終わると、重力がのしかかるみたいに緊張がどーんと戻ってくる(笑)。もう、ひざが笑っています。

久米さんは本当にすごくいろいろなことをご存じで、むしろ私のほうがもっとお話をお聞きしたかったです。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:太田愛さん(脚本家・小説家)を聴く




次回のゲストは、コインランドリー「WASH&FOLD」運営・山崎美香さん

4月28日の「今週のスポットライト」には、コインランドリー「WASH&FOLD(ウオッシュ・アンド・フォールド)」を運営する株式会社アピッシュの代表・山崎美香さんをお迎えします。洗濯物を洗ってたたんで自宅に届ける「洗濯代行サービス」を日本で初めて取り入れたコインランドリーが急成長。いまや利用者は30万人!

2018年4月28日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180428140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)