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音締めの良さは当代随一! 浪曲三味線・沢村豊子さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
1月20日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、「曲師(きょくし)」と呼ばれる浪曲三味線の第一人者、沢村豊子さんをお迎えしました。浪曲師の方たちから「今日はいい音が聞こえると思ったら、やっぱり豊子師匠だ」と言われるように、「音締(ねじ)め」(三味線の音のキレと響きのこと)の良さは当代随一。来月で81歳になる今も現役です。

沢村豊子さん

沢村豊子さんは1937年、福岡県生まれ。幼少時代を佐賀県の炭鉱町・北方町(現・武雄市北方町)で過ごし、10歳から日本舞踊(藤間流と坂東流)を習い始めます。そして将来は踊りのお師匠さんになりたいと思うようになりました。父から「踊りの師匠になるなら細三味線が弾けたほうがいい」と勧められ、端唄(はうた)の三味線も習うようになりました。

豊子さんが11歳のとき、佃雪舟(つくだ・せっしゅう)という浪曲師が九州巡業にやってきました。九州は浪曲が大変な人気でした。というのは、明治時代の人気浪曲師で浪曲中興の祖といわれる桃中軒雲右衛門(とうちゅうけん・くもえもん)が、横浜から駆け落ちし、京都を経て福岡に移り人気を博したからです。

沢村豊子さん

豊子さんが当時暮らしていたヤマ(炭鉱)に、浪曲好きのおばさんがいました。その人は自分の息子2人を浪曲師・伊丹秀子に弟子入りさせていました。伊丹秀子は当時の浪曲界の大看板の一人で、“七色の声”と評され「唐人お吉」「杉野兵曹長の妻」「九段の母」「瞼の母」などで人気を博した人です。その弟子筋にあたる佃雪舟が自分専属の三味線弾きを探しているというので、浪曲好きのおばさんは豊子さんを佐賀の劇場に連れて行き、雪舟に引き合わせたのです。

「三味線をやってるんだって? ちょっと弾いてごらん」と言われた豊子さんは戸惑いました。豊子さんが習っていたのは端唄で使う細棹(ほそざお)三味線でしたが、浪曲では棹が太く胴も大きい太棹(ふとざお)三味線。小さな女の子には弦を抑えるのもやっとです。それに豊子さんが一生懸命だったのは踊りのほうで、三味線はそれほどでも…。ところが雪舟に「音締めが良い」とほめられ、東京に行くかい? と誘われたのです。豊子さんは三味線弾きにスカウトされたとも知らず「東京へ行きたい! 東京で踊りを習いたい」と飛びつきました。そのまま雪舟の巡業について行き、12歳で上京。そこから浪曲三味線の厳しい修行に入りました。

沢村豊子さん

弟子入りの年季明けまでの5年と御礼奉公の1年が終わった17歳から、当時、ラジオで人気を博していた国友忠の三味線を担当。ラジオ東京(現在のTBSラジオ)の浪曲ドラマや、文化放送の人気連続ラジオ小説「銭形平次」に出演するなど、国友忠専属の「相三味線(あいじゃみせん)」を30年務めました。昭和30年代はラジオに数多くの浪曲番組があり、豊子さんは毎日各局をかけ持ちしてとても忙しい日々を過ごしました。ラジオから流れる浪曲は当時の娯楽の代表でした。

また、国友忠が東京・赤坂で主催した「浪曲教室」にも参加し、大看板から若手、さらに素人(いわゆる天狗連と呼ばれたプロ並みの一般人)までいろいろなタイプの浪曲師の相手を務めました。これが三味線の腕を大いに磨くことになりました。また豊子さんはラジオや舞台、CM、歌謡ショーなどで広沢虎造、二葉百合子、三波春夫、村田英雄といった方々の三味線も弾きました。虎造からは「豊ちゃんはカンがいいねえ!」とほめられたそうです。どんな浪曲師にも合わせて弾ける曲師は、今は3~4人しかいないそうです。

浪曲を実演中

曲師の三味線は単なる伴奏ではありません。浪曲は、浪曲師が節(ふし。歌い上げるところ)と啖呵(たんか。セリフや地語りの部分)を交互に繰り返しながらストーリを展開します。その際、時代設定や季節・場所などを説明する冒頭部分、地名や情景をテンポよく語っていくところ、悲しい場面、風雲急を告げる場面、エンディングなど、シーンに合わせて三味線は常にBGMを奏でています(キッカケ、道中づけ、憂い、愁嘆、セメ、バラシなどと呼ばれます)。さらに、風の音、足音、涙など、様々な効果音も三味線ひとつで表現します。スタジオでは豊子さんにほんの一部分、実演していただきました。節を唸ったのは最年少浪曲師、22歳になったばかりの国本はる乃さん。豊子さんの三味線に続いて「子別れ峠」をひと節。

国本はる乃さん

2人はあうんの呼吸で節・啖呵と三味線を掛け合います(豊子さんは、はる乃さんがまだ10歳のときに三味線を弾いてあげたことがあるそうです)。聴いているほうは無意識のうちに物語に引き込まれていきます。いえ、聴き手ばかりではありません。語っている浪曲師自身も三味線の音や曲師のかけ声によっていっそう物語に入り込み、節がどんどん乗ってきます。そうなると今度は曲師のほうも三味線の手(アドリブの伴奏)がさらに回っていく。これが独特のグルーヴ感となって、演者も聴衆も「気持ちいい!」となるのです。『おらおらでひとりいぐも』で第158回芥川賞を受賞した若竹千佐子さんは、あの小説を書くときに浪曲の語りの気持ちよさを参考にしたと言っていました。三味線は主役の浪曲師の引き立て役でありながら、実は浪曲の生命線そのものなんですね。豊子さんに「イヨッ」「ハァ~ッ」と声をかけられると出ない声まで出てくると言う浪曲師はたくさんいるそうです。

「いや~、今日はすっかり堪能しました」(久米さん)

「豊子師匠の三味線は、演っていて本当に気持ちいいんです」(はる乃さん)

「演者はいいけど、こんなふうにぷつぷつ短く区切られちゃうと、三味線は感情が乗のってこないんですよ(笑)」(豊子さん)。

「それはすみませんでしたねぇ(笑)」(久米さん)

曲師の方はおしゃべり好きが多いそうですが、その中でも豊子さんは話し始めたら止まらないことで有名なんだとか。舞台を離れるとジーパンをはいて浅草を闊歩しているというチャーミングな師匠。ぜひ、いつまでもお元気なお声と素晴らしい三味線を。

沢村豊子さんのご感想

沢村豊子さん

ちょっとうまく弾けなかったところがあるので、恥ずかしいのよ(笑)。
久米さんのような立派な方にお相手していただいて感激しました。久米さんとおしゃべりできてホント、楽しかったです。お会いできて嬉しかったです。今日はありがとうございました。

2018年1月20日(土)放送「今週のスポットライト」、ゲスト:沢村豊子さんhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180120140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

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1月27日の「今週のスポットライト」には、日本人初の「南極点無補給単独歩行到達」に成功した荻田泰永さんをお迎えします。これまで北極に15回訪れている“北極男”が初めて体験した南極の50日間。

2018年1月27日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180127140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)