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放送中

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図書館新時代

森本毅郎 スタンバイ!

森本毅郎・スタンバイ!ロゴ

忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」
(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)
8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」
全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。

木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「賢くなれる雑学コラム」!

月尾嘉男

今日4月31日(木)は「図書館、新時代」

4月2日は図書館開設記念日

4月2日は「図書館開設記念日」になっています。明治5年の4月2日、江戸時代に徳川幕府直轄の教育研究機関「学問所」が置かれていた神田湯島の昌平坂に、だれでも無料で利用できる近代的図書館「書籍館(しょじゃくかん)」が設置されたことを記念したものです。これは1860年代にアメリカやヨーロッパを訪問した福沢諭吉が出版した『西洋事情』(1866年)で欧米諸国の図書館制度を紹介したことを契機にしていますが、明治維新の騒乱の時期で、すぐには実現せず、新政府になって文部省が設立したという経緯です。

国家戦略だった図書館

現在分かっている世界最初の図書館は、紀元前7世紀のアッシリアのアッシュルバニパル王が首都ニネヴェに作った「アッシュルバニパル王の図書館」とされていますが、さらに大規模な図書館は、紀元前4世紀のマケドニアのアレキサンダー大王がナイル川河口の都市アレキサンドリアに建設した図書館です。それ以後、図書館は世界各地に増えていきますが、目的は国家が収集する情報を蓄積しておくことでした。その結果、蔵書数が図書館の地位を象徴するようになります。蔵書数で順位をつけると、1位・アメリカ議会図書館(3100万冊)、2位・中国国家図書館(2800万冊)、3位がドイツ国立図書館(2700万冊)で、日本の国立国会図書館は1000万冊で7位になっています(2012年の統計)。いずれも国内で出版された書籍は、出版した者が図書館に納本する義務を負う納本制度を整備し、自動的に集まってくる仕組になっています。この歴史も古く、先程紹介したアレキサンドリア図書館は船が港に入港すると、所持している本や地図を没収し、その写本を作ってから返却するという制度を実施していました。本物を図書館に収め、写本を返却したという説もありますが、当時の可能な限りの情報を収集していました。

増え続ける蔵書

現在の納本制度に近いものは16世紀のフランスで始まりましたが、その当時の出版点数では問題がありませんでした。しかし、現在のように、日本だけでも書籍が年間8万2500点、雑誌が4000種も発行されると、保管する場所が問題になります。そこで各国とも図書館を増設したり新館を建設したりしています。イギリスの大英図書館は、カール・マルクスが30年間通い詰めて「資本論」を書いたという逸話のある円形の建物が手狭になったため、1982年にロンドン郊外の新館に移転しています。アメリカ議会図書館は本館に隣接して2つの別館が建設され、地下で往来できるようになっています。 日本も1961年に建設された建物が手狭になったので、1200万冊が収蔵可能な地下8階、地上4階の新館が1986年に開館しましたが、これもいずれ限界になると予想され、2002年に関西文化学術研究都市に巨大な関西館が建設されています。

デジタル化で爆発的に増加

紙媒体に記録された書物は貯蔵に空間を必要とする問題があります。そこで最近では電子媒体が注目されていますが、これは別の大問題を引き起こしています。デジタル情報が爆発的に増加していることです。2007年にアメリカのコンサルタントが、2008年には人間が1年間に作り出すデジタル情報が「エクサバイト」という単位になると予言しました。これは「1」の後に「0」が18個並ぶ数で、普通の本に換算すると1兆冊になります。これは予言通りになったのですが、以後2年ごとに2倍になる勢いで増え、昨年(2015年)は「8」の後に「0」が21個並ぶ「ゼッタ」という単位になってしまいました。「ゼッタ」は大英図書館の所蔵している本の情報の6億倍以上(!)で、もし1人の人間がすべて読もうとすると、160兆年…地球の歴史の3万5000倍の時間がかかるという量ですし、5年後にはさらにその5倍以上になると予測されています。大英図書館は過去170年間にイギリスで出版された書籍を集めていますが、それに匹敵する情報を現在は0.05秒で作り出していることになります。

病院、駅、喫茶店に「小さな図書館」

一般の図書館が巨大化する方向へ突進しているのとは反対に、極小の図書館を普及させようという活動もあります。これは「マイクロライブラリー」というもので、世界各地で広がりつつあります。自分の家の前、病院、喫茶店など、様々な場所に鳥小屋のような箱や小さな書棚を置いて、そこに不要な本を自由に置いていったり、そこから自由に借りていったりできる施設です。欲しい本を持ち帰ってもいいマイクロライブラリーもあります。 私も不要な本を北海道の一日の乗降客が数十人しかない鉄道駅のマイクロライブラリーに送ったり、自分の住んでいるマンションの公共スペースのマイクロライブラリーに寄贈していますが、このような場所は日本では数百、世界では数万に増えていると推定されています。不要になった本を苦労して古書店に運んで売っても1冊10円にもならず、輸送賃さえ出ないのが現実です。そうであれば、読みたい人に上手く本が届くマイクロライブラリーに寄贈する社会を創れば、本も生きるのではないかと思います。

TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」は月~金6:30-8:30で放送中。
AM954kHz、FM90.5MHz。パソコンやスマートフォンでは”radiko”でもお聞きいただけます。是非、お聞きください!