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なぜスウェーデンは政治に関心がなくても投票率が80%を超えているのか?

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
11月4日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、明治大学国際日本学科教授で政治社会学者の鈴木賢志さんをお迎えしました。この日のテーマは「日本の若者の投票率はなぜ低いのか?」。

鈴木賢志さん

10月22日の衆議院選挙の投票率は53.68%と、戦後2番目の低さでした。10代の投票率は41.51%(18歳50.74%、19歳32.34%)とさらに低くなります(数字はいずれも速報値)。久米さんは以前から「選挙の投票率の低さはなんとかしなければいけない」と言っていました。投票率50%の中で半分の議席を獲得しても、全体からみれば25%の支持です。それで国の重要な政策を決められてしまうのは日本にとっては致命的だというのです。でも今回の選挙でも、この傾向に歯止めはかかりませんでした。

これと対照的なのが、北欧の国スウェーデン。あちらの投票率はなんと85%。若者に限っても81%。日本から見ると驚異的な高さなのです。この差はどこからくるのでしょうか。

スタジオ風景

鈴木さんは、日本社会の色々な制度や政策をスウェーデンと比較研究している政治社会学者です。東京大学法学部を卒業し、富士総合研究所勤務、ロンドン大学留学を経て、1997年からスウェーデンのストックホルム商科大学欧州日本研究所で10年間、研究生活を送りました。スウェーデンでは国の政策はどのように決められ、そこに国民の考えや社会の制度はどう反映されているのか。日本と大きく違っている点として鈴木さんは「若者の投票率」に着目しました。

スウェーデンの学生たちに「どうして若い人たちはみんなそんなに投票に行くのか」と尋ねると、反対に「なんで日本の若者はみんな投票に行かないの?」と聞き返されるそうです。スウェーデンの若者はみんな意識が高くて、日本の若者はそうではない…と、思うかもしれません。でも「政治に関心はありますか」という聞き取り調査では、日本もスウェーデンも結果はさほど変わらないのです。むしろ、日本のほうが「関心がある」と答えた人が多いのです。それなのに日本の若者は半分以上が投票に行かない。一方、スウェーデンは8割以上の人が投票に行く。どうしてなのでしょう?

それは「当事者意識」の違いだと鈴木さんは言います。政策が変わったら、そのあと長く影響を受けるのは自分たち若い世代なのだから投票に行くのは当たり前、というのがスウェーデンの若者たちの考え方です。そしてその根本には「自分たちがアクションを起こすことによって社会は変えられる」という認識があるです。ここが日本の私たちと大きく違うところです。スウェーデンでは選挙の時に、何十万人という中学生・高校生たちが投票を行っています。それは日本で行われている「模擬投票」のような“投票ごっこ”ではなく、実際の政党に投票を行っているのです。そして投票の翌日の新聞でその結果が公表されています。もちろん彼らの投票結果は議席につながりませんが、政治がかなり身近なものになっています。また政治家たちも、数年たてば選挙権を持つ子供たちに対して、真剣に政策を訴えているそうです。スウェーデンでは12、13歳になると政党の青年部に入る子供も多いそうです。私たちとは政治との距離感が随分違いますね。

スタジオ風景

スウェーデンでは、子供は子供なりに社会に対して自分たちの意見をはっきり主張するように教育されているのです。例えば日本では「学校の校則はきちんと守るように」と教えられます。スウェーデンでは「校則が本当に正しいのかどうか、自分たちで判断しなさい」と教えられます。そして「もしその校則が正しくないと思ったら、自分が思うことをやってみるといい」と言われているのです。しかもこういうことが社会科の教科書に書いてあるのです。

“もしあなたがとんでもなくド派手な格好で学校に行きたいと思ったら、やってみましょう。初めはまわりの抵抗があるかもしれません。でも頑張ってやり続けていると、それが普通のことに変わるかもしれません”

規則やルールや社会の仕組みは、自分たちがアクションを起こすことで変えられる。そう教えられて、スウェーデンの子供たちは育っていくのです。

「つまりスウェーデンでは、子供を“社会人”として扱っているということです。大学を卒業してようやく社会人と言われる日本とは大きく違います。日本では“社会人”の中に子供は入っていません。でも子供だって国民ですし、主権を持っています。私たちは、子供は弱くて守るべき存在という考えが強いので、子供扱いしてしまっています」(鈴木さん)。

久米宏さん

「それは、子供たちをばかにしているということですね。子供だって実は世の中のことをかなり分かっています。大人になるとそのことを忘れて、子供扱いしてしまう。でも、子供も生まれた瞬間から一人前の社会人だと、根本から考え方を変えなきゃいけないですね」(久米さん)。

著書「スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む」

もちろんスウェーデンのやり方がすべて正しくて、日本人の考え方がすべて間違っているということではありません。でも日本の若者の投票率を手っ取り早く上げる方法はなさそうですから、子供たちの「教育」を見直すことから地道にやらなければいけないのかもしれませんね。スウェーデンの小学校で何をどう教えているのかを書いた鈴木さんの本『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』には、目からうろこが落ちる話がいろいろありますよ!

鈴木賢志さんのご感想

鈴木賢志さん

若者の投票率を上げるためにはどうすればいいのかというと、特効薬はなかなかないんです。やはり、久米さんもおっしゃっていたように被選挙権を「18歳以上」に引き下げるとか、あとは放送では言えませんでしたけど、選挙に出るときの供託金をなくすといったところを変えて、10代の人も選挙に立候補できるようにすると、投票が身近になってくるでしょうね。今の被選挙権(衆議院議員は25歳以上、参議院議員は30歳以上)の年齢は、12歳の人からみれば倍以上も離れているので、遠すぎますね。

それと、日本では「良い子が投票に行く」と考えられています。私のところの学生がタンクトップ姿で投票に行ったら、「なんであんな子が来てるの?」という目で見られたというんです。「あれがだめなんだ、と思いました」とその学生は言ってました。良い子じゃなくても、どんな子でも選挙に行くのが当たり前というふうになるといいんですけどね。

今日は率直に言って、楽しかったです。ありがとうございました。

2017年11月4日(土)放送「今週のスポットライト」、ゲスト:鈴木賢志さんhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171104140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

次回のゲストは、メディカルイラストレーターのtokcoさん

11月4日の「今週のスポットライト」には、メディカルイラストレーターのtokco(とくこ)さんをお迎えします。医師や患者さんを、イラストを使ってサポートする仕事ですが、日本ではまだ数十人しかいません。

2017年11月11日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171111140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)