毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。
今回のテーマは・・・『「君の名は。」ブルーレイ&DVDの視覚障碍者向け音声ガイド』
“視覚障碍でもDVDを見たい!”という声に応えた「君の名は。」
去年の夏劇場公開され大ヒットした、新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」7月にブルーレイとDVDが発売されたのですが、視覚障碍のある方達からの要望を受けて、劇場版には無かった音声ガイドが新たに収録されたんです。
冒頭、この画面と共に「このディスクには、視覚障碍の方にもお楽しみ頂けるよう、日本語音声ガイドを収録しています」などの音声案内が流れ、そのまま10秒程待つと音声ガイド付きの本編が流れます。(音声ガイド無しで見る場合にはリモコンで「メニュー」ボタンを選択)こういった仕組みを取りいれたことについては、ブルーレイやDVDを購入した健常者の方達からも多くの反響が寄せられているそうです。
- 「君の名は。」の制作会社 株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム、落合千春さん
- メニュー画面が出る前に音声ガイドの案内のテロップが出るんですけど、なぜそういう画面がいきなり現れるのかということに対して「あ、なるほど、視覚障碍をもった方には画面上でのメニューの操作自体が困難なんだということに気付いて、こういうユーザーインターフェースになるんだということに気がついてくれた方とか、意義を感じてくれた方も結構いました。
音声ガイド付きのDVDは徐々に増えていますが、リモコンを操作しないと再生されないソフトもあるそうなので、今回の「君の名は。」のように、ディスクを入れるだけで音声ガイド付きの本編が見られるという方法がスタンダードになっていくと良いなと思います。また放送では実際に、音声ガイド付きの映画本編を聞いて頂きました。ヒロインの妹・四葉が組紐を編む場面だったのですが、音声ガイドが無いとどんな場面なのかさっぱり分かりません。組紐はストーリーの展開と密接に関わってくるので、視覚障碍のある方にとっては、音声ガイドがあるか無いかで物語の理解度も変わってくると思います。
そして今回「君の名は。」の音声ガイドを制作したのは、数々の映像作品でガイドを手掛けた実績のある制作会社です。音声ガイドを入れる上で気を遣っている点を伺いました
音声ガイドで景色をいかに伝えるか
- Palabra株式会社 松田高加子さん
- 作品を損なわないように、でも伝わりやすい原稿を書くという感じです。絵が綺麗なシーンがたくさんあったのでそこは意識的に説明したと思います。山の頂に雪が積もっているとか、緑豊かであるとか。一言で「綺麗な景色です」って言っちゃいけないと思うんですね。その世界観を頭の中で作り出してもらって、どっぷりつかってもらえたらいいな、という風に意識して作りました。
もちろんストーリーを追えることが大前提で、その上で作品の雰囲気をいかに楽しんでもらえるか。「君の名は。」ではヒロインの三葉が暮らす岐阜県飛騨市の風景を例えば「山に抱かれた湖」と、短い言葉で適格に伝えています。さらに今回の音声ガイド制作では、視覚障碍の当事者もモニター視聴に参加しその意見が反映されているということです。
音声ガイドは「説明をしすぎないこと」も必要
- モニターを行った、先天性の全盲の加藤秀幸さん
- 入れ替わっちゃったということが見えてる人にとってどの辺で気づくのか。じゃあ僕らもそこの辺で分かるようにガイドをつけてもらいたいねって説明をします。どのタイミングで状況がつかめるのかが同等であるかどうかっていうこと。「あっ変わっちゃったんだ」って自分で気づくことが面白かったりする。たくさん入れすぎちゃうと面白味ってたぶん無くなっちゃうし。その引き算というか、そこがすごく大切だと思います。
「君の名は。」の物語の肝はやはり男女が入れ替わる部分だと思うのですが、入れ替わりがどこで起きたのかという説明は当初の想定より少なくして、健常者と同じように物語の展開を楽しめるように配慮がされているそうです。このように当事者の意見も取り入れた上で、音声ガイド付きの映像作品がどんどん増えてくると良いなと思います。
(担当:中村友美)
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(C)2016「君の名は。」製作委員会
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