
■ビタイチ! 役に立たなかった俺! オンラインゲームで落ち込む宇多丸
「マイゲーム・マイライフ」の番組ロゴを描いた山本さほさんがゲストにやってきました。重度のゲーマーで、『ファミ通』でもゲームマンガの連載を持っている山本さん。以前、でんぱ組.incの古川美鈴さんのゲスト回で、収録を見学していた山本さんが飛び入り参戦したこともありました。そのときは、山本さんがやり込んでいるオンラインゲームの「オーバーウォッチ」の話になったのですが、なんと今回その「オーバーウォッチ」を収録日の朝にやってきたという宇多丸さん。番組内でゲストにあらゆるゲームをお勧めされて「やります!」と言いながら、やるやる詐欺を繰り返してきた宇多丸さんだというのに、どういう風の吹きまわしなのでしょう……! オンラインゲーム自体もほぼ初体験だそうです。
ちなみに、私個人的には、オンラインゲームってリアルなコミュニケーションでありがちな「人と人の腹の探り合い」が発生するから、苦手なんですよね。かつては、どんなに失敗しようとどんなに下手だろうと、誰にも咎められることのない自分だけの世界、それがゲームでした。ところが、ゲームがオンライン化したことで、「失敗すると気まずい」、「ゲーム内で役立たずだと居場所がない」といったことが起こり得ます。宇多丸さんもそんな悩みを山本さんに打ち明けていました。
宇多丸「山本さんって、(ゲーム)プレイ上手いんですよね? 昔からやっているから」
山本「あんまりこう、あの、自慢っぽくなるので言いたくないですけど……そこそこ上手いです……はははは」
宇多丸「ですよね。僕はまずやっぱりその、普段アホなAIを相手にゲームしているせいで、リアルタイムの動きとか下手なんですよ。キャラクターの特性もまだわかってないですし。何ならその、今自分が何をすべきかもよくわかってない状態で、チーム戦に入るじゃないですか。ビタイチ! 役に立たなかった! 俺! みたいなのを、なんかこう、だんだん落ち込んできてですね……」
山本「ははは」
宇多丸「なんかみんなすんません!!! みたいな。やっぱり僕、根が真面目なもんで、すんませんの気持ちが強くなってしまって、つらくなってきちゃって。こんなところに俺はいてはいけない、みたいな」
そうそう、そうなんです。たかがゲームなのに、人に気を遣わなきゃならない気持ちになる、オンラインゲームのそこがしんどい。宇多丸さんはこの気持ちを、幼い頃のドッヂボールと重ね合わせます。
宇多丸「小学校のときのドッヂボールで、僕逃げることしかできないんですよ、基本的には。取るのも苦手、投げるのも苦手だから。避けるのはそこそこ上手いんですけど。俺が序盤で(ボールに)当たっちゃったら、何の役にも立たないわけですよ。みんなから、はい役立たずーって。あの感じをね、思い出して。つらい気持ちに……」
このあと山本さんは、役立たずだったプレイヤーに対して、お叱りのメッセージを送ってくるオンラインゲームユーザーの存在について語っていました。オンラインではよくあること、というさらりとした口ぶりでしたが、そんな恐ろしい文化があるとは……。「とはいえ、初心者ならゲームスキルがなくても皆さんたいていは察してくれますよ」と山本さんに励まされる宇多丸さんでしたが、以前からしばしば「ゲームしているのに知らない人にボコボコにされたくないの! アホなAIを僕がボコボコにしたいの!」と吹聴している宇多丸さんのことです。そんな恐ろしい話を聞いてしまっては、その後「オーバーウォッチ」は続けていないんじゃないかと内心思っております……。
■今回のピックアップ・フレーズ
山本「あのー、締切の日でも、やっぱり(ゲームを)やっちゃうんですよね。でも、仕事の合間にやるようにしていて、原稿一枚終わったら一試合、とか。合間合間に入れてて。でもこれは、水を飲むとか、ご飯食べるとか、トイレ行くとかと同じで」
宇多丸「糖分を摂る、みたいな、心にちょっと必要なんだ、と」
山本「そうですね。どんなに忙しい人でも、トイレ行くなとは言えないじゃないですか。水飲むなって言えないじゃないですか。それと一緒で、どんなに忙しくても合間にゲーム挟まないと(仕事を)できないんで。そこを責められたらもう終わりです」
宇多丸「これは編集者の方もそこはもう……?」
山本「そこはお願いしていて。ちょっとあの、ゲームちょくちょくやってるけど、見逃してくれ、と」
宇多丸「『ファミ通』連載なんて、言いづらいところありますよね。おたくゲームの雑誌だろォッ!(笑)」
文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)