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ご本尊は3Dプリンター製のレプリカ!?

森本毅郎 スタンバイ!

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忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」
(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)
7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」。本日3月15日(水)はレポーター・近堂かおりが『ご本尊は3Dプリンター製のレプリカ!?』をテーマに取材しました!

現場にアタックレポーター:近堂かおり
取材の着眼点とインタビューでの表現力に定評あり。

お寺の仏像が盗まれる事件が各地で続いています。2012年には長崎県対馬市のお寺から重要文化財の仏像などが盗まれて韓国に持ち込まれた事件がありましたちょうど今、日韓両国で協議が行われています。こんな外交問題にはならないまでも、転売目的の仏像の盗難が後を絶たないため、最近はその対策として、3Dプリンターで本物そっくりのレプリカを作って本尊の代わりにするお寺が少しずつ増えているということなんです。

★高校生×3Dプリンター=仏像!?

数年前、大量の仏像が盗難被害にあった和歌山県では、工業高校の生徒たちが授業で3Dプリンターを使って作った仏像をお寺に安置する活動が進められている。レプリカを作っている県立和歌山工業高校の武本征士先生にそのきっかけを伺いました。

武本征士先生
博物館にあるものって触ったりできないんですけど、それを手で触って楽しめるようにできないか、仏像みたいなものも作れないかという話になってきたんです。そういうのをうちの生徒たちが実物から3Dで計測して実物そっくりに作ったんです。それができるのであればということで、和歌山県は無人のお寺がたくさんあって、それを狙って文化財の価値が分からないような人が押し入って盗んでいくんです、仏様を。それで博物館で啓発のために文化財盗難の実情を知ってもらうためにレプリカを知ってもらおうということになってきたんです。

初めは和歌山県立美術館から、視覚に障害のある方が触って楽しめるようにと3Dプリンターで展示品のお面のレプリカを依頼されて作り、翌年からは、仏像を作るようになった。そのころ和歌山では、過疎地域のお寺で1年間に60件も盗難被害があったので、3Dプリンター仏像を防犯対策としても活用されるようになったといいます。実際地域の方からは、「これで安心して眠れます」と喜ばれたそうです。

★3Dプリンター製レプリカのご本尊って、アリなの!?

千葉県南房総市にある小松寺では、千葉大学大学院の研究室から3Dプリンターで仏像を複製させてほしいという申し出に協力したというので、ご住職の大沼圭真さんに3Dプリンターによるレプリカについてどうお考えか、聞いてみました。

ご住職の大沼圭真さん
真言宗なので、大日如来という如来さんがいるんですが、大日如来以外の仏さんはうちのご本尊の薬師さんでも、阿弥陀如来さんでも、すべて大日如来さんが違うかたちで現れた姿といいますか、そういう考え方もありますから、そういう意味では代わりというか、一部と考えて複製を置くのもありかなという気もします。世間で盗難なども騒がれていますし、また、身代わりとして実際の本尊の代わりに置かれるお寺もありますけど、ただうちの仏像は全部でかいものですから、まだそこまでは考えてないです。

3Dプリンターでつくったレプリカは、形はもちろん忠実にトレースしてあり、着色も素晴らしく、仏像の形と木の質感まで見事に再現されていて、言われなければレプリカとは分からない出来だったそう。ただ、小松寺では仏像のレプリカをご本尊の代わりにはせず、ミニサイズで複製してお守り袋に入れたといいます。
でもご住職の大沼さんは、レプリカを本尊の身代わりにするという考え方には容認派。「ただ、私は在家出身なので考え方が緩いところがあるかもしれません」とのこと。
たしかに、檀家さんの中でもお坊さんの中でも、3Dプリンターのレプリカには賛否両論ありそうですよね?
お寺の専門雑誌『月間住職』編集長、矢澤澄道さんに、3Dプリンターによる仏像のレプリカについてお聞きしました。

★『月刊住職』(!!)の編集長に直撃!!

矢澤澄道さん
レプリカ自体は昔からありました。ただ、レプリカとはいえ、やはり仏師にとって一刀入魂で刻んで、本当に大切に魂をこめて作るというのが少なくとも伝統なので、デジタルプリンダーの仏画と同じように、形は同じだけども製作にかかる人たちの精神、魂というものがどこか即物的になりがちですよね。ですので窮余の策としてそのようなことをすればいいんでしょうけれど、常道的な対策ということはいえないのではないかと思いますね。

 

仏師が作ったものと同じか、と言われると、う~ん・・・確かにちょっと違うような気もしてしまいますが、ただ矢澤さんによると、今、全国にある7万7千のお寺のうち、住職がいない無人のお寺は2割もある。特に過疎化・高齢化が進む地方ではお寺の維持が大変で仏像の防犯までなかなか手が回らない。

だからご本尊は博物館に預けて、3Dプリンターを使って、仏師よりも費用をかけることなくレプリカを作って身代わりを安置しよういう声が出ているのです。ところが、この点について、矢澤さんからもうひとつ指摘がありました。

★無人寺の仏像をどう守る?

矢澤澄道さん
レプリカを作っても、博物館で受け入れてくれるかどうかはまた一つのポイントです。やはり文化財でなければ簡単に預かってほしいと言っても預かってくれないですから。そこはそんなに対策になるというものでもないですね。本尊は文化財という言い方をみなさんされますけど、文化財じゃないんです。多くのお寺では指定文化財ではありませんから。毎日のように拝んでいる仏様は自分たちにとってとても重要な仏さんでありますけども、歴史的価値や彫刻的価値がすべてにあるわけではありませんから。そういう仏様の防犯対策の方が本当は重要じゃないかなと思いますね。

すべての仏像が文化財じゃない!・・・確かにそうですね。
とはいえ、地域の皆さんにとっては大切なもの。だから、本物は博物館などに預けて、と考えるわけですが、博物館なども場所に限りがあるので、際限なく預かれるわけではないですよね。そうなると、せっかく複製を作っても、本物はどこに保管するのか・・・、ということになってしまうかもしれません。盗難にあった仏像がネットオークションなどに出回っているケースが見受けられる。それを取り戻すには盗品であっても買い戻さなければいけないので、無人の寺にはその費用が負担になる。

そう考えると、3Dプリンターでレプリカを作ることの賛否もさることながら、考えなければいけないことがありそうですね。

(取材・レポート:近堂かおり)

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