日本全国8時です
1月15日 国語辞典とことば
きょうの荒川さんは、まず
発売されたばかりの国語辞書の話題から。
*******************
先週の金曜(11日)、『広辞苑 第六版』発売。
10年前の前回は23万、今回24万語。
1万の新項目には「いいとこどり」「いけ面」「温度差」「癒し系」「うざい」など。
分冊の、簡単な漢和字典も、便利。DVD‐ROMも同時発売。
とはいえ、若い世代はもっぱら電子辞書。
必要なときに情報を取り出すのみ、という感覚。
いっぽう、辞書の楽しさを、
みんなで辞書をつくることで感じてみようという試みも。
国語辞典「明鏡」の大修館書店主催、
去年の第二回「「もっと明鏡」大賞・みんなで作ろう国語辞典」には応募4万4000件。
中・高校生が、自分のまわりで使われてる言葉、
気になるものを「見出し語」にし「意味・例文」添えた。
その一語を、辞書形式に。本格的。
どんな言葉だって、いつか誰かがつくったもの。
特に明治期には、たくさんの言葉が作られた。
雑木林(国木田独歩)、趣味(尾崎行雄)、
情熱(北村透谷)、憧憬(高山樗牛)、
俳句(正岡子規)、非人情(漱石)、
西洋(福沢諭吉)、人格・意識(井上哲次郎)、
哲学・主観・客観(西周)、雑誌(柳河春三)・・。
最初は慣れない言葉も、いずれみんなで使うようになる。
いつも、日本語は十分とはいえない。
こんなことばがあったらいいな、このあたりのことは手薄だなと思うところも。
「うまい」「おいしい」。この周辺のことばが、日本語には足りない。
「批評」と「批判」の間にニュートラルな日本語が不在。
「愛情・情愛・慈愛」系、「歩く」系も不足。
歩行・通行・出歩く・ぶらつく・徘徊・逍遥・散歩では、足りない。
もうひとつ「歩く」にかかわる日本語があったら便利とか、個人的には感じる。
「人生」あたりも手薄。
「現実にある」言葉を勉強するだけではなく、あってほしい言葉を夢想すると、
日本語の姿、日本の歴史、生活、文化が見える。
「あなたの日本語は正しいか」ではなく「日本語は、十分なのか」の発想もだいじ。
造語の要求は、そこから生まれる。
1月8日 付箋紙
今回の荒川さんは、
「初買い」の話から始まって、「買い物」について。
筆記具はすっかり買わなくなってしまったものの、
荒川さんが
これだけは絶対必需品(他の作家の方々もそうらしい)だという「付箋紙」。
付箋紙というと「ポスト・イット」が代名詞のようになっていますが、
文豪具店をめぐると、その他にもいろいろなブランドがあるようです。
荒川さんが付箋紙のブランドについてやたら詳しかったのが、妙におかしかったです。
そんな荒川さんがなぜか手を出せないのが、ハガキの半分くらいの大きさの付箋紙。
どうにも「もったいない」と思ってしまうそう。
1月1日 今年の出版界
あけましておめでとうございます。
元日の荒川さんは、今年の出版界、刊行予定など中心にお話を。
***************************
●辞書の世界
去年は白川静ブームもあり、
新潮社『新潮・日本語漢字辞典』など漢和字典に新風。
今年は国語辞典からスタート。1月11日、広辞苑・第六版。10年ぶり新版。
「ことばには、意味がある」のコピー。
新語もいいが、基礎的なことばの意味をたしかめることも大切。
「さようなら」は「左様(然様)なら」という接続詞。
そうならば、から生まれた。そのようにおさえて発音すると、心がこもる。
「こんにちは」を「こんにちわ」、昔という意味の副詞「かつて」を「かって」と書く人もとてもふえた。話すときは「かって」でも可だが、書くときは「かつて」。
●全集類
去年の末に刊行開始、以下三つの全集が、今年一月に第二巻が出て全開。
①『世界文学全集』24巻・河出書房新社。20年ぶりの世界文学全集として話題に。
②『ちくま日本文学』30巻。文庫版の日本文学全集。
日本文学全集も20年ぶり。太宰、江戸川乱歩が一月に。三島、安吾と続く。
③『日本の歴史』16巻・小学館。
第二巻、平川南「日本の原像」は、稲作、特産物から、古代の社会浮き彫りに。
じつは新しい全集には共通点がある。「函入りでない」こと。はっきりいって「全集」は買いにくい時代。揃えてもかさばる。系統的な知識得るより、断片的ですませる時代。そこで函をやめ、買いやすい値段に。※第一巻はコレクターもいて売れるが、今月に出る、第二巻が勝負。
●個人全集
すでに全集出た作家の、ある傾向の作品を全集に、が主流か。
作品社『山本周五郎探偵小説全集』全六巻。「樅の木は残った」など時代小説でいまも最高人気の作者は若き日、探偵小説の名手。戦前、少年雑誌に発表。「ウラルの東」は中国、「南方十字星」は南洋、イタリア人の圧政に苦しむエチオピア舞台の「獅子王旗の下に」など山本周五郎のミステリー名作を、発掘。知られざる名作。
●知られざる注目作家
今月下旬より刊行『石上玄一郎小説作品集成』全三巻。未知谷という小出版社。作者は兵庫在住、今年98歳。当初は「いそのかみ」、あとで「いしがみ」にペンネーム変えた。札幌生まれ、高校は弘前、太宰と同級。太宰をじかに知る作家はいまやこの人だけ。石上は「太宰の軽妙さがもてはやされているあいだ」少数の読者には知られたが、実存思想、仏教思想などふまえ現代の病理を先駆的にえぐった。代表作「針」「黄金分割」など。「その鍛錬、その大胆、その執念」と武田泰淳は讃えた。各巻8000、9000円と高いが注目の全集。年末に出た『結城信一 評論・随筆集成』(未知谷)も、香り高い書物。
(未知谷のサイトはこちら → http://www.michitani.com/)
●今年は、どんな作家、作品が注目を浴びる?
全体に、社会の文章が単純で、かるくなっている。だから、多彩な文体、語り口をもち、読者の語彙をひろげ、刺激する人。高橋源一郎は記す。「小説を書く人間の大半は、誰かによって命令されたかのように、まるで他には何も存在しないかのような様子で、従順に、同じ方角を向き、同じ一本の樹を熱心に写生している」と。(『ニッポンの小説』文芸春秋)
かつては文体が多彩。林芙美子「放浪記」は歌物語。伊藤整の名作『鳴海仙吉』1956(このほど岩波文庫)は小説、詩、戯曲、批評の混然たる小説。そのなかで、いろんなことが起こってた。現代の第一線では、町田(まちだ)康(こう)、堀江敏幸、松浦理英子(りえこ)、みな四十代、
文章の感性は群を抜く。若手は日和(ひわ)聡子(さとこ)『おのごろじま』(幻戯書房)。「詩と神話のあわいを語る」叙事詩的力作(読売・12-16)。蜂飼(はちかい)耳(みみ)『紅水晶』(講談社)も、文章が新鮮。ともに30歳始め。これまでの小説にとらわれない、新しい言語世界を切り開く人に期待。
●小さな出版社
がんばっている印象。採算優先の大手は、良いものを出しにくい時勢。良い書物は小出版社から出る。幻戯書房、未知谷、群像社、吉夏社、港の人など、「出版社」単位で見つめることもだいじ。
12月25日 2007年の本の世界
きょうの荒川さんは、今年の本の世界を振り返りました。
*******************************
どんどん軽くなる時代には、どうしたらいいか?
哲学の言葉に帰ること。
しっかりしたことばで人間について考えた人たちにふれること。
今年は、岩波書店「哲学塾」14巻、中央公論新社「哲学の歴史」12巻などがスタートし、好調。
木田元「反哲学入門」新潮社(12月20日刊)は、日本人にどうして西洋哲学が
わからないか解く。さらに、カント「永遠平和のために」が、古典新訳文庫と
この12月、集英社の単行本で池内紀訳と、新訳ふたつも出たとは驚き。
今年はやはり古典回帰だったのか、文学部門も、古典の文庫が好調。
●光文社古典新訳文庫『カラマーゾフの兄弟』全五巻が、この一年間で55万部に。
●すごかったのが、ソル・フアナ『知への賛歌』古典新訳文庫。17世紀から19世紀の300年間の「アメリカ大陸最大の作家」。1651年生まれ、終生メキシコ。17歳で修道院。26年間そこから一歩も外出せず43歳没。彼女は「本を読みたいがために、学問をしたいがために、作家になりたいがために」修道院生活選ぶ。当時、女性が人間らしく生きるためにはその方法しかなかった。
圧迫・抗議はねのけ、大胆な主張。学問への意識も現代的。異なる分野こそ「光」であり「ある分野の作者が書いていることで理解できないことを、大きく隔たっているように 見える別の分野の別の作者を読んで理解できることがしばしばある」など。「少しでも彼女の作品を読んだ人は彼女のことを愛さずにいられなくなる」と訳者。
北原白秋『フレップ・トリップ』(岩波文庫)も型破り。
大正14年(40歳)樺太への船旅の記録。当時、白秋は童謡、詩が知られ人気もの。船内の集まりで「で、とにかくこれが私――白秋です。よく見て下さい」とあいさつ。
なんでも歌にする。多彩な文体、躍動。当時、小説は生まれたばかりで試験期間。読者は、詩歌のリズムを楽しむ。そこから多くを感じとり想像できる人たちがいた。
今年は他に、ヘンリー・ジェイムズもブーム。20世紀最高傑作『大使たち』岩波文庫、『鳩の翼』講談社文芸文庫など。
単行本より制作経費は、3割方安い。 カバーなどパターン決まっているので早く出来る。棚にも置かれやすい。そのため、ただ売れるものだけではなく、名作を「まぎれこませる」余地。携帯するなら、ケータイ小説よりも、名作文庫を。
12月18日 明治の商い
きょうの荒川さんは、「明治期の物売り」についてでした。
****************************
きょう登場した本は、明治期の「物売り」を絵と文で紹介した文庫、
三谷一馬さんの『明治物売図聚』(中公文庫)。
実にいろんなものを売る人がいた。
明治の商いは、個人が編みだすだけに多彩。