トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2012年02月23日(木)
今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。


★戦国時代を描いた歴史長編小説...といえば、武田信玄、織田信長、豊臣秀吉という名前が浮かぶが、この本の主人公は、蠣崎 季広(かきざき すえひろ)。
★この男。北海道・松前藩の祖を作った人物で、函館辺りを治めていたのだが、いわゆる学校で習う戦国時代とは違うところがどうなっていたのか、がわかって面白い。

★まず、戦国時代の北海道。凄く切り離された場所というイメージを持っていたが、そうではない。信長が京都に入ったなどの情報がすぐに入ってくる。
★理由は、陸上としては凄く離れているが、海上の交通が凄く発達。貿易が盛んで、日本各地のみならず、ロシアなど海外とも交易し、国内外の情報が集まっていたよう。

★そうした中、主人公・蠣崎 季広がどう生きたか。文庫の帯が凄い正確なんですが、「戦乱の世を見通す透徹の目を通して、秀吉、家康、2人の天下人に認められ、戦わずして蝦夷の地を護った一族の物語」

★戦国時代の東北の情勢。あまり知られていないが、秀吉が全国統一で現れる前は、いろんな争いがあって、もめていた。秋田の安東家、そして青森の・・・
★そうした戦乱の中、蠣崎 季広という男は、時代の流れに敏感で、強力な兵力をもっていた訳でもないのにうまく立ち回っていく。
★例えば、まず秀吉が出てくると、すぐ秀吉に会いに行って、交易権(貿易をする事の許可)をもらったりする。ただ。秀吉が天下をとった後に朝鮮に攻め込んで、非常に残虐非道な事をしていると知るや、「こういうトップに未来はない」と早々に見限って、まだ秀吉天下の時代に、今度は家康に接近していく。

★そして、予見通り、家康の時代到来。家康にとっては、自分が天下をとる前に近づいてきた訳で、蠣崎に対して、非常に優遇する、そうして、この男は北海道の地を護る。

★私、知らなかったんですが、松前藩の松前という名称の由来。本来なら蠣崎藩なのだが、どうして松前になったかというと、 徳川の松平家、、、松平の前にひれ伏す、という忠義を示すため、松前という名前を名乗って、これを家康に了承してもらったそう。

★というように、非常に混乱した時代を先見の明で切り抜けていく。この男がいなければ、北海道の地は当時のようにまとまっていなかっただろう、そういう男の話。読ませる。

★一応、一族の物語という事で、蠣崎 季広と、その息子・慶広(よしひろ)、その2代に渡る物語という事だが、ほとんど末広の話。350ページ。
★ただ、おもしろいの函館を護っている一族も一枚岩ではなくこと。北海道の各地をいろんなやつが治めている中、蠣崎 季広は生涯20人ぐらいの子をもうけ、政略結婚させる。
★うまく一族を治めたかと思いきや、逆に晩年になってくると、あまりに子が多すぎて、相続権争いとかそういうのに巻込まれたりとか、なかなかたいへん。
★国の動向に目を光らせつつ、それと同時に、家族の顔色を伺いつつ、一族に訪れる難問を切り抜けていく・・・

★この土居 良一という作家。元々は群像新人長編小説賞をとった作家で、純文学で出てきたのだが、その後、「ネクロポリス」という、近未来のサハリンを舞台にした冒険小説を書いたり、ジャンル横断型の作家。
★「ネクロポリス」が好きで、今回、手にとったのだが、すごく面白かった。戦国時代の小説としては、ちょっと地味な感じはあるが、広く読まれてほしい小説です。

★因みに、戦国時代の東北を描いた作品。数は少ないのですが、高橋克彦が故郷を舞台に熱き思いを込めた歴史巨編「陸奥3部作」、特に「天を衝(つ)く」は傑作。
★ちょっと変わった角度から戦国時代小説を読みたいという方は是非。

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