トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2012年01月26日(木)
今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。


★ミッキー・ハラーという弁護士を主人公にしたシリーズの第2作。1作目の「リンカーン弁護士」と同じ主人公ですが、続きものではないので、これだけで十分、読めます。
★マイクル・コナリーというアメリカの作家。元々、ハードボイルドのハリー・ボッシュという主人公のシリーズで有名なんですが、新たにスタートしたシリーズが、今回のミッキー・ハラーという弁護士を主人公にしたシリーズ。

★この主人公は「リンカーン弁護士」と呼ばれるカテゴリーの弁護士。これは高級車リンカーンの後部座席をオフィス代わりに使い、ロサンゼルス市内に点在する、およそ40箇所の裁判所をかけまわって、細かく報酬を稼ぐ弁護士のこと。
★高級車を使っているとはいえ、決して金持ちではなく、むしろほとんどが固定したオフィスを設ける金がない、という零細法律事務所。
★ミッキー・ハラーもそうした一人で、家や車のローンに追われ、さらに2度離婚、娘がいて、その養育費の支払いもあり、生活が結構、たいへん。それで、リンカーンであちこち飛び回って、事件を解決しているという設定。

★そして、今回の事件。知り合いの弁護士が何者かに殺害されるところから始まり、その弁護士の仕事を主人公が引き継ぐ事になるのだが...という話。
★というのも、アメリカの弁護士制度は特殊で、弁護士が事件を引き受ける時に、自分が死んだ場合、その事件を引き継ぐ弁護士を事前に決めておく仕組みになっているが、殺された弁護士が、引継ぎ弁護士として、主人公を指名していた事がわかる。
★主人公は知らなかったんですが、ある時に判事に呼ばれて、「引継ぎ弁護士になっています。やる意思がありますか、」と聞かれて、、、いくつかの事件を引き継ぐ事になる。

★ところが、引継いだものの中に全米で注目の事件がある。逮捕されたのが、ハリウッドの映画製作会社のオーナー。妻と妻の愛人が銃殺された事件があるが、その容疑がこの男にかけられている。妻が浮気していた訳で、動機があり、アリバイもなくて、なおかつ、手からは銃の発射痕が見られる。かなり濃厚な容疑。

★その裁判をこの主人公のミッキー・ハラーがやる。つまり、リーガル・サスペンス。上下巻があるが、下巻がまるまる裁判の話。これがうまいんです!
★ネタばらしになるからはっきり言えないんですが、二転三転して、「えっ!」という驚愕の最後まで一気読みさせるんです。

★さらに、この小説には、ミソがあります。それは、作者マイクル・コナリーが生み出した人気シリーズの主人公ハリー・ボッシュが、この『真鍮の評決』にも出てくる事。
★ハリー・ボッシュは警察官(一時、探偵)。このシリーズは、12作か13作、翻訳されているのですが、驚くことに、今までに一作も駄作がない、という奇跡的なシリーズ。
★その主人公が登場。ファンにとっては、たまらない話。ミッキー・ハラーの目から語られるハリー・ボッシュは...

★こういう手法は、アメリカではよくある。2つのシリーズを書いている時に、片方のシリーズの主人公がもう一方のシリーズにちょっと顔を出すという、読者サービス。
★ただ、今回の作品においては、チラッと顔を出すどころではない。かなり登場してくる。重要な脇役といっていいほど出てくる。
★確かに「ハリー・ボッシュ?知らん。」という読者もいると思うが、気になさらず。この本を読んで、ハリー・ボッシュが気になったら、彼を主人公にした話がまた別にあるよ、そういう風に思ってもらえばいい。

★一方、ミッキー・ハラーという主人公のキャラクターもなかなかよい。2回離婚しているが、2人とも仲がいい。(前の妻が秘書、その前の妻は検事)。愛すべき男。 

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