トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2012年01月19日(木)
今朝は、書評家の岡崎武志さんにお薦めの本を紹介していただきました。


★5月22日に開業予定の新電波塔「スカイツリー」。年間来場予定者数が500万人、周辺を含む町全体の来場者数は2900万人という試算もある。
★ロンドンオリンピックと並び、今年一番話題を呼びそう。

★建築中からテレビ雑誌などでも大きく取り上げられ、その話題はいいよ、と言われるかもしれませんが、今日ご紹介する本はちょっと視点が違う。著者は「下流社会」というコトバを作った評論家で、町歩きの本も書いている人です。
★みなさん、スカイツリーを見物に行くのはいいけど、そのまま帰ってくるのはもったいない。せっかくだから、スカイツリーの見える押上、向島、北千住、立石、小岩など「東京下町」を散歩してみませんか。そこに、明治以来の近代東京の意外な顔が見えてくる、というコンセプトで書かれた本なんです。

★まず、スカイツリーの建っている場所。墨田区押上ですが、なぜここに建つ事になったのか。これが江戸時代の画家、鍬形蕙斎が描いた「江戸一目図屏風」という江戸の町の鳥瞰図が、その理由の一つだという。
★鳥瞰図というのは鳥の視点で上空から見た絵という意味。この「江戸一目図屏風」は、隅田川の東側上空から江戸時代の町を眼下に見下ろし、遠く富士山を見渡している。
★もちろん当時、ヘリコプターはないですから想像図。江戸時代の人が想像するだけの風景を、いままさに、我々はスカイツリーに上れば見ることができる。これは東京の新しい観光名所にふさわしい、ということです。

★スカイツリーの絶景ポイントの一つが、浅草・吾妻橋。ぼくもここから眺めましたが、対岸のアサヒビールの屋上にある「金色の雲?」の向うにスカイツリーが見える。
★著者は、ここで写真を撮ったら、そこで引き返さず、橋を渡ろうと提案。渡った所に吾妻橋観光案内所があって、地図やパンフレットが貰えるそうです。

★しかも墨堤通りを北上すると、隅田公園がある。これが素晴らしい日本庭園。旧水戸藩下屋敷跡だそうです。江戸へタイムスリップ。
★さらに上流へ向うと三囲(みめぐり)神社。ここの狛犬はキツネ。ついでにライオンの像もある。不思議な神社です。このライオンの像は、もと三越池袋店にあったもの。閉店したとき、運ばれたもののようです。ちょっと人に教えたくなる。

★また、この本にはカラーで地図やたくさんの写真が収録されていて、この一冊を片手に散歩したくなるんですが、著者はモダニズム建築や、町で見つけたいい雰囲気の建物や店を盛んに写真に撮って紹介している。

★ぼくがこの本を読んでおすすめなのが北千住。「路地と迷宮のある宿場町」として紹介されています。「かどやの槍かけだんご」「名倉医院」「横山家住宅」など、古い建物がまだまだ残っていて、町の空気に溶け込んでいる。古い商店街や銭湯が健在。
★とくに、ぼくもわざわざ入りに行きましたが、創業昭和二年の「大黒湯」は、お寺と間違えそうな見事な外観で、煙突には猿が昇っている。生きている猿ではなく、作り物の猿ですが、ぼくは気づかなかった。荒川土手近くの「タカラ湯」は、縁側から眺められる庭がいいそうです。銭湯から上がって、風に吹かれて地元の居酒屋でビールとくれば、この世の天国でしょう。

★いま若者がこうした昔ながらの町をよく散歩している。東京郊外の住宅地で育った現代の若者には、下町を「見たことがない」町として心が引かれるのだろう、と著者は分析。
★「スカイツリーは、下町に対する人々の意識、イメージを変える大きな起爆剤」とも言います。スカイツリー見物を兼ねた、下町散歩のよきガイドとして、また町の歴史を知る一冊として、ぼくもこれを持って下町を歩こうと思っています。    

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