トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年09月01日(木)
   

今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★今週はすごい話題作。トム・ロブ・スミスというイギリスの作家の新作で、ちょうどきょうが発売日。
★この番組で前に紹介した『チャイルド44』、その続編『グラーグ57』に続く三部作の完結編。とはいえ、前を読んでなくても充分楽しめる。この本を読んで面白ければ、前の2作にさかのぼればいい。

★このシリーズ。ペレストロイカ前のソ連の話しで、主人公はレオ・デミドフという男。大きな流れを言うと、組織の決まり第一という嫌な国家保安省の役人だった主人公が妻と知り合う事によって変化。自由がきかないソ連で波乱万丈な人生を生きるという話。

★とにかく、このシリーズ。スケールが大きい。今回も舞台は大きく3つ。1950年のモスクワ。1965年のニューヨーク。1980年のアフガニスタン。時代も国境も飛び越えて話が進む。

★では、どういう話か。話の中心は、1965年のニューヨーク。ここある陰謀に、主人公レオの家族、妻のライーサと娘2人が巻き込まれる。というのも、妻ライーサは教育界では有名人で、ソ連の少年少女たちをつれた友好使節団の団長として、娘と共にニューヨークに行っていた。そこで事件が起きた。

★この序章ともなるのが、1950年のモスクワ。事件の15年前。ここで語られるのは2つ。ある物語の中で重要な黒人シンガーがこの年、モスクワを訪問。護衛をレオが担当していた。
★もうひとつ。前2作では、主人公レオと妻ライーサはすでに夫婦だったが、初めて2人がどうやって出会ったか、という事が詳細に語られる。
★そして物語の後半が1980年のアフガニスタン。事件から15年後。ここで主人公レオは駐留ソ連軍の特別顧問をしているが、悲惨で、すさんだ日々を送っている。
★そのレオが、アフガニスタンの戦場から、パキスタンに向けて脱出。最後に、ニューヨークまで行き、自分の家族に何が起こったのか、を調べるという展開。

★表面的には、友好使節団のニューヨーク訪問だったが、その背後にいろいろな思惑があるというのが語られ、いったい何が起きているのか、真相はなんなのか、誰が何のためにやっているのかというのを読者はわからず、非常に緊迫して話が進んでいく。そして、最後は・・・感動のラストが。

★アフガンを脱出してニューヨークにと、スケールの大きい展開だが、どうやったのか、というディテールを読ませる技術が、この作家は抜群。すごい。

★因みに、第1作目『チャイルド44』は、実際にソ連であった44人の子どもが殺された連続殺人事件がモデルの話で、理想国家・ソ連が「殺人事件は存在しない」との立場で捜査に後ろ向きな中、主人公レオが孤独に捜査をすすめる、という話。主人公がイヤな国家保安省の役人から徐々に変化していく。
★2作目『グラーグ57』。前作の殺人事件解決が中央から評価されるが、イヤな役人時代に行っていた不当な扱いの復讐を受けるという、主人公の苦難がえんえんと描かれる。

★この3部作は、戦後のソ連を舞台にしたミステリではあるが、その一方、家族小説ともいえる。非常に自由がないソ連で暮らす家族が様々な苦難に遭遇して、、、という話。
★主人公レオ、妻ライーサ、そして娘2人の家族。この娘2人、実は養女だが、遡って読むとこの2人がどうして養女になったのか、という背景もしっかりと描かれている。おすすめ3部作です

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