トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年08月25日(木)
 

今朝は、書評家の岡崎武志さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★毎年、この時期になると、心がそわそわ。なぜか。小中高と、夏休み、ずっと宿題をやらずに遊んでた。あと一週間で全部やらなくちゃいけないと思うから、なんですね。
★とくに小中学校の自由研究には困った。ナニをやっていいかわからない。たぶん、多くの小中学生が、お母さんから「自由研究、どうするの?」と叱られているのでは。
★そんな小中学生を持つお母さんお父さん、あるいは子どもたちに、「自由研究」をする一つのヒントになる本をご紹介します。それが、『さとやま』。

★「ヒトの節度ある自然の利用や管理によってつくられた、水田やため池、茅場や雑木林などがパッチワークのような模様を生む、変化に富んだ自然」と、解説には書かれています。昔からある日本的な風景だけど、最近、とくに美しい風景として、また生態系が保存されている場所として注目されている。

★著者は特に生物多様性とその保全という観点から「さとやま」の役割と再生をこの本で、くわしく紹介している。

★雑木林や竹やぶ、草地、ため池、用水路や田んぼが作るのが「里山」で、そこには植物を含むさまざまな生きものがいて、生態系のローテーションを守っていますが、いま、その「里山」が宅地化や放置されたり、ゴミが捨てられたりで危機的状況にある。人間と自然の関係を考えるカギが、「里山」にあるわけです。

★里山の保全は人が住むことが条件で、自然林を燃料の為に伐採することで、落葉樹が育つ、地面に光が届く環境が保てる。あるいは、家畜の放牧で草原が維持される。だから、人が住まなくなると、里山は荒れるわけです。

★水田があると、灌漑用の池や水路がある。そこはカエルやトンボにとって理想的な生育環境となる。この関係がずっと日本ではうまく行ってきた。

★「現在、日本列島には61種類の両生類が生息し、その固有種率(日本にのみ生育する種の割合)は七四%にものぼります」。同じ温帯のイギリスでは、両生類はわずか7種類、固有種率はゼロだそうです。また、日本に二百種いるトンボも、イギリスは三四種。
★ところが、宅地や工業用地開発、農地整備、水田の耕作放棄などで、環境が大きく変化し、トンボやカエルの生育を脅かしているのが現状です。そういえば、昔は町なかでも秋になるとトンボが群がって飛ぶ光景が見られましたが、最近、見なくなりました。

★これは日本だけではない。世界的な徴候です。それで、「里山」の再生が始まっている。2010年10月、日本で開催された生物多様性条約締約会議では、「人の利用によって形成され、維持されてきた自然」の再生を、日本語の「SATOYAMA」というコトバで提言され、取組みが議論された。

★日本でも様々な「SATOYAMA」再生プロジェクトが進んでいます。宮城県田尻地区では、普通、冬は水を抜く水田に水を張って、冬の渡り鳥がねぐらとして使えるようにした。ここで取れた米を「ふゆみずたんぼ」と名づけブランド米として売り出している。

★岩手県の久保川では、さとやまの樹林に亡くなった人を埋葬する「樹木葬墓地」を進めている。長らく放棄されて荒れた里山の樹林に手を入れ、そこを墓地とする。故人の好きな花を植えて墓標とする。都会の石とコンクリートの墓地は自然を壊すだけですが、ここでは自然を生かしている。

★私は、水田やため池、雑木林などが織りなす風景は、そこに住んだことがないのに、美しいと感じる。日本の原風景の一つだと思います。東京都内でも青梅とか、近隣では川越や鎌倉、千葉などに、まだまだ里山と呼べる風景が残されています。
★この本を参考に、ぜひ足を運んで、植物や生きものを観察して、自分なりの発見を「自由研究」にまとめてみるといいのでは、と元教師の私からの提言です。

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