トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年08月18日(木)

今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★重松清さん。今更ですが、直木賞作家(「ビタミンF」2001)であり、山本周五郎賞(「エイジ」1999)もとっているベテランの人気作家。その新作、家族小説。

★基本的に、家族小説といえば、多いパターンはやっぱり「おっ」というドラマが起きる。具体的に言うと、家族の誰かが死ぬ、家族内で非常に仲互いをする、、、派手な設定。
★重松さんの家族小説も、私が好きな「流星ワゴン」に代表されるような派手な設定のものが次々と出て、高い評価を受けているが、、、正直、私は最近ちょっと離れていた。
★理由は、泣いたりする小説は疲れちゃうから。特に、突然来るのならまだしも最初から畳み掛ける作品。重松作品が、という訳ではないが、最近、それを売りにする小説が多く、なるべく近づかないようにしていた。

★その点、きょう紹介する「ポニーテール」は違う。特に大きな事件はない、大きなドラマもない、、、そういう予感がしたからこそ手に取ってみたのだが、これが凄くいい!

★話は、母を亡くした小学4年生の女の子フミと、母親の再婚相手の娘でお姉さんとなった小学6年生のマキという「新米・姉妹」、そして「新米・家族」の物語。それが、小4のフミの視点で語られていく、、、というだけの小説。

★全部で7章あるが、再婚の家庭だからとかいうドラマチックな展開もなく、描かれるのは日常。例えば、ある章ではネコを拾ったり、フミの同級生とケンカしたり・・・

★どういう話かというと、小4のフミは小さいのでお姉ちゃんに構って欲しい。一方、小6のマキは半分大人で自分の世界があり、小さい奴に邪魔をされたくない。
★登校時、家を出る時は一緒に出るが、姉のマキはさっさと言ってしまう。フミを待ってくれない。仲が悪い訳ではないのに、なぜか冷たい姉。ちょっと寂しい妹。


★こういう日々の出来事を淡々と書いていくのですが、非常に一般性のある話。出てくるのは姉妹の話だが、男の私も兄との幼い頃の話を思い出したりする。「こういう時、お兄ちゃん冷たい時あったな」など。

★要するにどういう話か。帯にいい言葉があるが、「二人の心が近づいたり、離れたり、すれ違ったり、衝突したり・・・」そういう話。 
★特に大きな事件、ドラマはないが、逆にそれが我々の日常を非常に的確に映しているようなところがあって、読んだら止まらなくなっちゃって、はまり込んでしまう。

★また、うまいのは小説の縦軸。短編集だから何か通すもの、物語の芯みたいなものが必要だが、それがこの小説の場合は、ポニーテール。
★第一章の最初にフミちゃんがお姉さんを見て「アキちゃんのポニーテール、かっこいい!私もポニーテールしたい!」と。でも、髪が短いフミちゃんは、ポニーテールが結えず。
★そこで、髪を伸ばす事に。そのポニーテールを結えるようになるまでの話がこの小説。伸びていく髪を縦軸に、横軸の日常のエピソードがある。とてもうまい。

★さらに、小説の後半。フミちゃんと、ちょっと違う人の視点が入って来る事になる。これが誰かは言えないが凄くいい。さすが、重松清。 
★派手な設定を取り払い、「何も起きない」という中でこういう小説が書けるのは、ディテールと造詣が素晴らしい重松清の技があってこそ。
★なんか、直木賞とったり、山本周五郎賞をとったりすると、あがっちゃった作家と私なんかは思いがちで、どうしても新人作家に目が行ってしまうのですが、、、重松清は決してあがっていない、まだまだこれからが楽しみな作家です。 

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