トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年07月21日(木)

今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★4つの短編を集めた作品集。こんな奇妙な話を書くのは篠田節子しかいないだろうと思うのですが、これが凄く面白い!

★どう奇妙か。例えば、1話目の「深海のEEL」。これは海の底からレアメタル入りのウナギが発見されて、、、という設定。

★ある日、ウナギを食べた人間の食中毒が発生。調べてみると、ウナギの体内からレアメタル!自然破壊がもたらした公害か、となるが、、、これに目を付けたのが企業。
★「うなぎからレアメタルを取り出せば儲かる!」という話となるが、ウナギの生息はわかっておらず。莫大な金を投資して探すか否か。、、これが意外な方に着地をする。

★また、ある話では、建築現場から大量の人骨が発見されて、眠っていた縄文時代の寄生虫が現代に蘇るという設定。

★ほか、ある短編では、どことは書いていないが、北の方の外国の地で合成麻薬を使った日本人の青年が、警察に逮捕されるのを恐れて逃げた挙句、ある村へたどり着く。
★ところが、その村から出られなくなる。凄い極寒の地、村にはトンネルを掘る一族がいて、トンネルを掘らされ脱出しようと度々、試みるが、、、という話。 
★元々、話の設定だけでも十分に奇妙なんですが、一番ビックリするのは、「奇妙な設定がどう展開していくのか」。これが絶対に予測できない展開をしていくこと。

★僕が一番好きなのは、今まで出てきていない表題作「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」という短編。

★舞台は、田舎町にある小さなハイテク部品工場。主人公はこの工場に勤める事になった事務員の女性。地元に戻り、仕事を探した結果、この工場に勤め始まるが、、、、

★主人公の女性が働いていると、40センチ四方のラジコン、おもちゃの車が、なぜか追っかけてくる。しかも、カメラ付き。付けて来ては、じぃ~とカメラで見る。
★始め主人公は盗撮を疑う。ところが警察を呼んで調べてもらってもコントローラーを持った不審な男などは見つからず。手を出さず。ただ、風呂場でもカメラが、じぃ~と。
★「なぜ、追っかけてくるのか」「何が目的なのか」怖いホラー短編のような話だが、全く想像もつかない着地をする。最後は、ほのぼのした結末になる。

★とにかく奇妙な設定を、絶対に読者が想像できないような形で転がしていって、見事な着地をする、という短編集。まぁ、ビックリしました。

★篠田節子という作家は、山本周五郎賞を1997年に受賞。さらに直木賞も受賞しているベテラン。基本的に昔から他の人が書かない異色作品を書くが、今回がその局地。

★作品全体のテーマは何か、というのを知る上でヒントとなるのは、帯にある文章。『科学に翻弄される人間の滑稽な姿を描く、現代の黙示録』。これで何となくわかる。

★ただ、読者の楽しみはいろいろなタイプがあると思う。「何が書かれているか」という楽しみもあるが、そういう事を抜きにして「どう書かれているか」を楽しむのもひとつ。この作品、「どう書かれているか」という醍醐味を久しぶりに味わえた作品でした。

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