トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年07月14日(木)
今朝は、書評家の岡崎武志さんにお薦めの本を紹介していただきました。

 

★不明にして知らなかったのですが、「HAPPY NEWS キャンペーン」というものがあって、日本新聞協会が主催。全国から、新聞を読んで、あなたをハッピーにした記事を募集する、というもの。
★毎年開催されていまして、今年が7回目。応募総数1万5570件から選ばれた66のニュースがここに集められました。

★たしかに、新聞を開いても、政治や経済などでは暗い話ばかりですが、地方版などでは、東京および首都圏にいると気付かない、ちょっとしたいい話が、紹介されていることが多い。それもまた、新聞の魅力だと、私はこの本を読んで思いました。

★私のおしゃべりより、なるべくたくさん紹介したい。たとえば「朝日新聞」2010年4月19日付け夕刊に載ったニュースが、「満員電車 友だち10人」という記事。
★川崎市に住む37歳の若月玲代(あきよ)さん37 歳は、毎朝、通勤電車に乗るのが楽しみで仕方がない、というんです。あれ?と思いますよね。

★その理由はこうなんです。若月さんは東京・銀座の化粧品会社で働いていますが、2004年に長女あんなちゃんを出産し、一年後に職場復帰したのですが、地元の認可保育園は満杯。親会社がもつ企業内保育所に預けることにした。
★午前7時起きで、娘を抱えての通勤が始まった。ところが、満員電車に小さな子どもを乗せるのはなかなか大変。そこで毎朝、同じ時刻の同じ車両に乗ることにした。子どもが苦手な人は乗る車両を避けるだろう、と思ったから。

★ところが思いがけないことが待ち受けていた。当時2歳だったあんなちゃんを通して、同じ車両に乗る乗客と会話を交わすようになり、一つの輪ができた。「背が伸びたこと、保育圓で公園に遊びに行ったことを顔見知りになった乗客に話すようになって、やがて「電車友だち」が増えていった。

★「電車友だち」の一人、旅行会社役員の57歳の男性は「通勤途中に新聞や本を読むより、子どもの声を聞いていた方が安らぐ」と話す。あんなちゃんは、この男性を見かけると、「おじちゃん」と言って抱きついてくる。「殺伐とした通勤電車も、声をかけ合うことで温かい空間に変わることがある」と取材した記者は書いています。

★時の流れの早さを感じたのは、2010年9月18日付け「読売新聞」。「帰ってきたよ付属池田小に 事件当時6年教育実習」と見出しがついています。
★もう10年も前になる。大阪教育大付属池田小学校で、児童殺傷事件が起きました。宅間守という男が突然、刃物片手に校内に乱入し、次々と斬りつけ、児童8名の命が奪われた事件でした。当時6年生だった2人が、いま大学生となり、教師を目ざして、母校である池田小で教育実習に励んでいるという記事です。

★うち一人の浜野さん(20歳)は、当時6年生で事件の渦中にいた。いま、「私が教師になったら、子どもたちを守れるだろうか」と自問することもあったが、当時を知る佐々木副校長から「守るべきものができたら、必ず乗り越えられる」という言葉をもらって勇気づけられた。安全面が徹底された新校舎で、「命の重さを伝えられる先生になりたい」と、児童と正面から向き合う姿が伝えられている。

★すごい話だなあ、と思ったのは、2010年5月9日付け「読売新聞」。「読み書き習い感謝の手紙」と題された記事。
★この年の四月、奈良市の団地に住む夫婦の夫から妻に感謝の手紙が贈られた。「もし君との出会がなかれば、今の生活はなかったと思います」という文章が、角張った文字で書かれていた。
★夫の保さんは、このとき74歳になりますが、8年前まで、なんと文字の読み書きができなかった。家が貧しくて、学校でも哀しい事件があって、以後、学校へ行かなくなった。就職しても文字の読み書きができないことは負い目となった。そのことを秘密にして35歳で妻の皎子さんと見合い、結婚をする。
★バレたら離婚されても仕方ないとビクビクしながら隠し通して、ある時、ついに告白。しかし妻の皎子さんは「一緒に頑張りましょう」と言って手助けするようになった。  夜間中学に通うようになって8年、ついに文字を習得。妻に感謝の手紙を書いた。
★こんな話、とても一面には載らない。しかし、読む者の心を、動かす。それも新聞の魅力ではないでしょうか。

★小さい記事だけどいい話も。「270人271脚 ギネス断念」は、本当に小さな記事で京都新聞から。
★2010年7月11日の体育祭、長浜市の浅井中学校の生徒が、2人3脚の要領で「270人271脚」による50メートル完歩に挑んだ。みごと成功。

★ところが、15日になって、生徒の一人が、残り10 メートルを切った地点で、脚を結んだ手拭いがほどけていたことを自己申告。立会人の証言やビデオ映像では確認できなかったけど、本人の申し出を尊重して、ギネス申請をあきらめたという記事です。

★この記事を選んだ京都府在住27歳の女性は「この勇気ある行動から、損得を考えず正直であることの大切さ、そして勇気を教えてもらったような気がします」と選んだコメントを寄せた。ほか、函館の現役では日本最古という観覧車に、親子三代が乗って楽しんだという小さい記事など、地方版でしか読めない記事だと思いました。

★小さい記事でも、読む者を慰めたり、励ましたりすることもある。目立たない本ですが、今こそ紹介したいと思って、今回、取り上げました。

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