トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年06月23日(木)
今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★ジャンルで言うと、時代小説の人情話。『深川澪通り木戸番小屋シリーズ』という人気シリーズがあり、今までに4作書かれているが、その新作がこれ。
★このシリーズ。1作目で泉鏡花文学賞を受賞、4作目『夜の明けるまで(2005)』で吉川英治文学賞受賞と評価も高く、ファンも多いが、今回の新作が7年ぶり。待ちに待ったという人も多いのでは、という作品。

★どういう話かというと、舞台となるのは江戸の街。当時、夜になると、不審者を出入りさせない為、町内ごとに「木戸」と呼ばれるものがあり、夜になると閉じていた。
★その「木戸」に住み番人をしている「木戸番」というのがいたが、その中の深川澪通りというところの木戸番が、この物語の主人公。笑兵衛、お捨という夫婦。

★この夫婦。笑兵衛が60近く、お捨が50近く。江戸時代としては老夫婦。笑兵衛は無口でいるかいないかわからない感じで、お捨はふくよか(太め)、な世話好き。だけど上品。

★ちょっと過去に何かあるな、と思わせる夫婦。木戸番は薄給のため内職で使ったものを店頭で売りながら日々を過ごしているが、、、そこにいろいろな人が訪ねて来る。
★というのも、妻・お捨は、誰が来ても愚痴を聞いてくれる世話好き。街のひとは困った事があると、この木戸番小屋に来て、愚痴をこぼして帰っていく。

★孤独。後悔。訪ねて来るのは、愚痴をこばさずにはいられない問題を抱えた人たち。そのそれぞれの人生が8編語られ、相談にのった笑兵衛・お捨夫婦が一緒に問題解決を試みていくのだが、、、という話。

★ただ、この作者がうまいのは、問題が解決するという事がほとんどないこと。我々の現実と同じ。リアリティがある話になっている。

★また、シリーズものだが、うまく出来ているのは、シリーズの前を読んでいなくても話しについていける作りになっていること。「笑兵衛・お捨という夫婦がいったい何者なのか」、という事がどの作品でも語られる。
★普通の初老夫婦には見えないのはなぜか?、、、今回、久々に若い時どうだったか、というのが出てくる。これは言っても大丈夫ですが実は笑兵衛は元武士。かつて、藩がある商人に騙され件に絡み藩から追放され、、、妻・お捨もその件に絡んでくる。

★実は、北原亞以子さんは2大人気シリーズを持っていて、ひとつはこの『木戸番小屋シリーズ』。もうひとつがNHKでドラマ化された『慶次郎縁側日記』シリーズ。(主演:高橋英樹)。※最近は、慶次郎シリーズばかりを書いていて、木戸番が7年あいた。

★北原さんは、この2大シリーズを書き分けていて、
 ・木戸番小屋・・・お捨・笑兵衛という夫婦が街の不満を聞いてあげる作り。
          みんなで協力して、問題解決にあたる。      
 ・慶次郎  ・・・ここに出てくる連中は、誰にも相談せず。自分の力で解決しようと   
          する。主人公以外もそうで、その脇役がメインとなる話もある。
★つまり、2つのシリーズでは問題の解決に取り組む形が違う事。ただ、2つに共通する点もある。それは、問題が解決されない事が多いこと。
★物事、揉め事が解決しなくても、人は生きていかなくてはいけない、じゃぁ、どうやって生きていったらいいのか、という事を両方のシリーズで描いている。
★問題が解決しない、という結末をいかに読者に納得させるのか、というのは作家の筆力が問われるところだが、北原亞以子さんはその点が凄い。特異。

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