トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年05月12日(木)
今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。



★妻と夫の彼女の人格が入れ替わってしまう、という話。

★このパターンは過去にいくつかある。例えば、
 ・「パパと娘の7日間」...父親と娘(女子高生)の人格が入れ替わる。ドラマ化。
 ・「今夜は心だけ抱いて」唯川 恵...母親と娘の人格が入れ替わる。
 ・「秘密」東野 圭吾...娘の体に母の人格が入り込む。有名。
★過去にもあるパターンだが、今回は、妻と、妻が夫の浮気相手と疑っている女性の人格が入れ替わってしまう、という設定。

★この手の設定のおもしろさは、相手の立場になってみると、相手の事情がよくわかる、という点。よく昔から、ものごとを相手の立場になって考える事は大切、言われるが、人格が入れ替わってしまうというのは、その究極の形。
★そうすると、意外な事が見えてくる。いつも威張っている人が実はそうでもなかったとか、いつも暗い顔している人が実はそうでもなかったとか、、、

★今回、入れ替わる2人。妻、コマツバラ・ヒシコ39歳。非常にきまじめな、料理も上手で、良妻賢母という設定。
★一方、夫の浮気相手と疑われている女性、20歳の派遣社員の女の子、ヤマグチ・サトミ。こちらは、非常にがさつで、料理も下手。言葉遣いも悪い。
 ※「浮気相手と疑われている...」というところがミソ。

★全く正反対の性格の2人。これが物語の中で生きてくるのだが、人格が入れ替わり、それぞれの生活の中で、全く違う態度、言動をするので、周りの人がビックリする。

★例えば、妻となった浮気相手とされる女の子。PTAに行くが、会長がひとりで仕切るのに我慢ならない。「会長だけで決めていいんですか?」と、ずけずけ、発言する。
★これまで、PTA会長の独裁体制で1時間ぐらいでシャンシャンと終わっていた会だったが、彼女がどんどんと雰囲気を変えていってしまう。

★一方、20歳の派遣社員になった妻。がさつな20代の派遣OLに変わり、会社に行くが、非常にまじめ。メモをとり、研究し、与えられた仕事をしっかりやる。
★周りはビックリ。挙句、「そんなに仕事をやる気だったのか」と、社員にしてしまおうか、という話まで出てくるようになる。そういった展開が面白い。

★最後、この手の話は全部同じパターンで人格が元に戻るのだが、戻った後、本人たちも変わってくる。つまり、成長する。
★さらに面白いのは、この非常に特異な体験を通して、本人だけでなく、周りまで「変化していく」こと。これが最大のミソ。
 ※例えば、PTAの親たちが、どんどん発言をし出したりするなど。

★この垣谷美雨という作家。奇抜な設定の小説をいろいろと書いている。例えば、
  ・「リセット」...中年の女性4人組が高校時代に戻り、人生をもう一回やり直す話。
  ・「結婚相手は抽選で」...抽選見合い法という法律が国会で通った世界の話。
★奇抜過ぎる感じもある設定だが、それをディテール豊かに描いて、形にしていくのが、この作家のうまさで、今回の「夫の彼女」もそれが生きている。おもしろい!

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