現場にアタック

2011年04月06日(水)
★今日の取材は、リスナーの方からのこんなメールがきっかけでした。

TS3U00380001.jpg 原発事故による節電対応で、駅に設置されているエスカレーターが止められています。止められたエスカレーターには鎖がかけられたりして通行できないようになっています。階段と併用されている場所では、エスカレーター部分が通行できない分、通路幅が狭く、上りと下りのお客さんが錯綜しています。なぜエスカレーター部分を解放してくれないのでしょうか? <埼玉県川越市・51歳・小林さんより>

★確かに、都内を中心に、鉄道の駅などでは節電のためエスカレーターを止め、立ち入り禁止の看板などを出していますね。そこで今日は、この疑問にお答えすべく、『節電のため運転をストップしたエスカレーターの上を通行できないのは何故か?』ということについて調べてきました。

★取材にあたり、まず町で「停電でエスカレーターが止まっている」ことについてご意見を伺うと、「エスカレーターが使えないので階段に人が集中して危ない。特に混んでいる時は、無秩序に人が押し寄せる。お年寄りが転ばないか不安です。」「普段エスカレーターを使う人は疲れて歩みが遅いので、渋滞している感じで危ない。」といったご意見が聞こえました。特に、エスカレーターと平行している階段の幅が狭いところでは、人が殺到し危険な状態だということは、多くの方が認識していました。

★被災地や原発で避難されている方を思うと「それくらい...」と皆さんおっしゃるのですが、それでも、お年寄りが階段から転げ落ちそうになるのを見た方々は「危ない」と指摘されました。これは対策次第で防げることなのだから、けが人を増やすことはないですね。確かに、メールを下さった小林さんのように「なんとかならないの?」という気持ちになりますね。

★そこで、「なぜエスカレーターの上を歩行できないか?」という疑問を、エスカレーターのメーカーさんや、管理会社さんなどに電話をして聞いていたところ、「日本エレベータ協会」の方から納得のいくお答えを頂きました。

★日本エレベータ協会の保坂さんは『建築基準法の施工例で階段の規格は決まっています。学校や公の場所、大きな店舗の一例ですが、幅が140cm以上、蹴上げ(段の高さ)が18cm以下、また高さが3mごとに踊り場を作ることなど。エスカレーターはこれらを満たしていないため、法律的にエスカレーターは歩く階段としては認められないんです。』と教えてくれました。

★もちろん、杓子定規ではなく、非常時に避難経路がエスカレーターしかない場合は、緊急措置として歩行できますが、エスカレーターを歩くことによる転落事故もあり、協会は「運転中も、止まっているときも、エスカレーター上の歩行はお勧めできません」とのことでした。こういった状況を受け、鉄道各社も、危険を指摘されながらエスカレーターでの歩行を許すことは基本的には無いようです。ややお役所的ですが、メールを下さった小林さんの疑問への答えは『危険なので、建築基準法など管理責任の観点からも、エスカレーターでの歩行は認めにくい』というところでしょう。

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★ところで、節電とエスカレーターについて町でお話を聞くと、みなさん色々なご意見を持っていることがわかりました。中には『新宿あたりで長い階段だと正直ヒザにくる。長いエスカレーターが止まっているかと思えば、短いのに使えるのもあって、しっかり基準を決めてくれと思いますよね。』といった、節電の基準がわからないというものも多かったです。鉄道各社、混雑状況を見て「よかれ」と思ってやっている節電ですが、「不公平」「基準が不明瞭」と見る人もいるようです。現代に欠かせないインフラ「エスカレーター」を見る目は、まるで東電の計画停電を見る目のようです。

★こういった町の声を受け、鉄道各社に『どういった基準でエスカレーターの運転を決めているんですか?』と聞くと、中には「この話題には答えたくない」と濁す会社や、「なぜ答える必要があるんですか?」とピリピリした答えが。ある会社の広報担当は「基準を明かすと不満が出て収拾できない」と本音を聞かせてくれました。

★なお、回答を頂けた会社については、以下のような基準で決めているようです。

京浜急行 9割のエスカレータを停止しております。ただし、エレベータが設置されていない駅、
       階段が狭くお客様の安全を確保できない駅などは、時間帯によりエスカレーターを
       動かすことで、極力お客様にご不便をおかけしないよう配慮しております。

小田急   お客様の流動を著しく阻害する場合、動かします

京王電鉄 特に混雑する駅は、ラッシュ時に上りのみ動かします

東武鉄道 基本的にエスカレーターは運転させず、エレベータは運転しています。
       ただし、お客様の動きを著しく阻害するときはエスカレーターも動かします。

西武鉄道 各駅の混雑状況と判断に任せています。

東急電鉄 急な停電時にエスカレーターが緊急停止した場合、下りのエスカレーターのほうが
       危険なので、下りは停止するという対応をとっています。

★たしかに答えは様々で、「混雑状況による」「時間による」などもあり、曖昧に感じることもあるようですね。各社こういった基準で対応し節電に協力していますが、経産省は「電力使用制限令」発動の方針を表明しました。今後、止まるエスカレーターも増えるかもしれません。階段での安全誘導なども一策でしょうが、鉄道会社の中には「なかなか難しい」という声もありました。

★一方で、「日本エレベータ協会」の保坂さんは、恒常的に計画停電が行われるようになると、エスカレーター付近だけでなく、エレベータにも「閉じ込められる」危険があると指摘していました。計画停電の予告があったのに停電が遅れてしまい、たまたま動いていたエレベータに乗り閉じ込められたという例もあるそうです。保坂さんは『特に計画停電の前後はエレベータを使わないように注意をよびかけています』と警告します。

★エレベータに関しては「駅に限らず」ですね。今後、電力供給が安定せず、計画停電が続くようであれば、電気に頼った人間の導線も少しずつ見直す必要がありますね。「使わない」だけなら簡単ですが、エスカレーターのように、従来のインフラが一時的に通行の妨げになってしまうこともあるようです。被災地に比べれば申し訳なくなるような「小さな」問題ですが、対策次第で減らせるケガがあるなら、なんとかしたい問題です。

レポーター:近堂かおり

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