トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年04月07日(木)


今朝は、書評家の岡崎武志さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★2010年は「電子書籍元年」と呼ばれ、出版界が大きく揺れ、大変革を迫られた年。
★アマゾン社の「キンドル」、アップル社の「アイパッド」といった、電子書籍が読める携帯端末機が日本に上陸し、「紙の本」は消え、みんな電子書籍に置き換わる、と。

★実際、大手出版社が電子書籍の部門を新たに作り、作家の村上龍さんは新作の長編小説を、自分で作った電子書籍の会社で出版する、というようなことが起きています。
★見慣れぬ巨大な新しい力、「電子書籍」の上陸を「黒船」に譬える風潮もありました。
★ただ、ぼくは、「紙の本」を愛する旧派で、正直のところ、はたして本当にそんなに凄いものなのか、紙の本とどう違うのか、といったところが分からなかった。

★この『出版大崩壊』は、著者の山田順さんが、昨年春まで光文社という出版社にいた敏腕編集者で、電子出版のビジネスを始めた経験をもとに書いている。
★いわば「紙の本」と「電子書籍」の渦中にいた人で、実感があって、大変わかりやすい。ぼくは、やっとこの本で、電子書籍のことが腑に落ちました。

★結論から言いますと、紙の本はこれから減っていく、それに反比例して電子書籍は増えていく。この動きはまちがいない。ただ、「結局、日本ではアメリカのような電子書籍市場は立ち上がらないのではないか」と言うんです。電子出版を始めた人がそう言うんだから、あれ?と思いますよね。

★日本の出版界がこれほど電子書籍の上陸に動揺して、飛びついたのは、本が売れない現状があります。もう10年以上、出版不況が続いている。
★1995年に「週刊少年ジャンプ」が653万部という記録を作りましたが、現在ではその半分以下。女性雑誌はバッグや小物など、景品をつけないと売れないというのが現状。
★書店はこの10年で4分の1が消えました。バラ色の未来を約束するメディアである 電子書籍に、大きな期待をかけることになった。

★2009年度の日本における電子書籍の売り上げは574億円、それに対しアメリカは3億6800万ドル、1ドル100円換算で約368億円(あれ、日本の方が多い?)。
★ところが、日本の電子書籍市場は特殊で、この売り上げはほとんどがケータイ配信で、しかも中身はコミックで全配信の83%。さらに言うと、売れ筋上位3つはエロ系(成人用コミック、ボーイズラブ、ティーンズラブ)。
★パソコン配信はむしろ2007年をピークに減少。これがアメリカとはまったく違う点。

★このエロ系コミックを読んでいるのは、いずれも日ごろ活字の本を読まない、書店に行った事がないような若者で、作家のネームバリューもストーリーが幼稚でも関係ない。彼らに向けて、過去の「紙の本」をいくらデジタル化しても見向きもしないだろう。
★例えば、低迷する出版界の救世主と言われ、何を出してもベストセラーの池上彰さんですが、電子書籍では並の作家。紙で100万部を突破した『伝える力』も、電子版は2万ダウンロードそこそこ。「もし電子版だけだったら、とても商売にならない」と関係者は嘆く。

★グーグルでは過去の出版作品をすでに1000万冊以上データベース化した。
★しかし、情報が過剰に増える今、人々は自分でモノが選択できなくなっている。「人間は一生の間にどれくらいの量の本が読めるのか考えたことがあるだろうか?」と著者は疑問を呈している。あと、情報がタダだという前提のなか、ネット上のものをお金を出して読むというのが「壁」になる。
★あるアンケートでは、「購入者の7割が300円を超えると買わなくなる傾向が明らかになっている」。利益を出すのはかなり難しい。けっしてバラ色の未来、とはいかない。

★著者がこの本の最後のほうに「本棚に青年時代に読んだ本を捨てられないで残している」と書いているのを読んで、ぼくは妙にホッとしました。





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