トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年04月14日(木)
 

文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★すごい面白いミステリ小説。

★主人公は、ハリー・ブロックという売れない小説家。中年の作家で、ミステリからヴァンパイア小説、ポルノ小説まで、何でも書きまくって食いつないでいる男。

★この男のところにある日、一発逆転のチャンスが訪れる。きっかけはダリアン・グレイというニューヨークを震撼させた連続殺人鬼からの手紙。

★このダリアン・グレイは12年前にニューヨーク市内で4人の人間を惨殺して捕まって、死刑が確定しているが、一切、犯行を自供していない。
★その殺人鬼が、手紙で「あんたのファンだから小説を書いてくれないか。」「全部今までの犯行を自供する。特別に」と。そして、刑務所に会いに来ないかと。

★何にも自供していない男なので、そいつの告白本を出版すれば、大ベストセラーになるのは確実。売れない作家なので喜んで、刑務所に訪ねていく。

★そうすると、条件を出される。それがちょっと奇妙な条件。
★ダリアン・グレイは残忍な殺人鬼だが、全米からファンレターが来る。その中から4人の女性をダリアン・グレイがピックアップするので、この4人に会いに行って欲しいという内容。
★そして、何をするかというと、会って取材をして、その女性とダリアン・グレイを主人公にしたポルノ小説を書いてくれ、と。1人1編で計4編、それを私に読ませろと。
★これをやってくれれば、1編ずつ書く毎に4分の1ずつ自供し、全部、特ダネをあげるというのがダリアン・グレイの申し出。
★とにかく大ベストセラー確実。とりあえず4人の女性に会いに行く。そして、話し方とか人となりを取材するだが、、、

★その後、残虐な殺人事件が相次ぐ。しかも、12年前のダリアン・グレイに似た手口で。おまけに主人公の作家は謎の何者かに命を狙われたりするので、降りかかる火の粉を払いのけるため、自ら犯人探しをしなきゃいけなくなってくる、、、という展開。

★ダリアン・グレイは刑務所にいてアリバイがあるが、真犯人が他にいるのか?

★凄くうまいのが、複雑なプロット。最近、ミステリを語る時に「どんでん返しがある」というとそれだけでネタばらし、と言われる時代なので、そうは言えないのだが、最近ちょっと珍しいくらいによく出来ていた。

★そして、もうひとつ。うまいのは、出てくるキャラクター。お主人公の作家は、結構いい加減な男で、凄く面白い。
★また、他にも、クレアという女子高生。主人公は、売れない作家なのでアルバイトとして家庭教師をやっているが、その教え子がクレア。頼りない主人公の尻を叩く。ビジネスパートナー的な存在になってくる。
★もうひとり、大事なのがダニエラというストリッパー。彼女は、ダリアン・グレイに殺された被害者の遺族の一人。双子の姉を殺された妹。他の被害者遺族がダリアン・グレイの伝記執筆に反対する中、彼女だけは主人公に協力する。
★つまり、売れない作家のハリー・ブロックは、クレアという女子高生とダニエラというストリッパーの2人の力を借りて、犯人探しをする、という構造になっている。

★最終的には、非常に単純に見えた話が凄い複雑な真実を含んでいた、という話なのですが、ここ最近ではないタイプのミステリ。デビュー作だが、ピカイチの出来。
★割と、近年のいいミステリは、文学的なあじわいを打ち出したものが多い印象だが、この小説はそれとは違い、完全なエンタテインメント。痛快!とにかく、そこがいい!

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