トークパレット木曜日「スタンバイ・ブックナビ」

2011年04月28日(木)


今朝は、文芸評論家の北上次郎こと、目黒考二さんにお薦めの本を紹介していただきました。

★今年最大の話題作と言われている作品。(まだ4月ですが、、、)
★帯にある宣伝コピーの文句は、「孤高の暗殺者ニコライ・ヘルの若き日の壮絶な闘い」

★年配の方なら覚えている方もいるかと思いますが、かつて30年前にトレヴェニアンという人が書いた『シブミ』という冒険小説の金字塔とされる作品の続編。
★トレヴェニアンは覆面作家で出てきたが、有名な作品は、『アイガー・サンクション』。アイガー北壁を舞台とした山岳サスペンスで、クリント・イーストウッドが映画化。
★当然、トレヴェニアンは故人だが、その続編を当代一流の人気作家といわれるドン・ウィンズロウが書いたものだから、「あの作品を、あの作家が!」と話題に。

★まず、1979年に書かれた前作『シブミ』。主人公は、ニコライ・ヘルという暗殺者。1970年代を舞台とし、バスク地方に住む主人公が、仕事依頼を受け、、、という冒険小説。
★印象深いのは、回想シーン。というのも、主人公は白系ロシア人の母親を持つ、上海生まれだが、母親なき後は日本の岸川将軍の庇護の下に日本で育てられる。    
★そこで、岸川将軍に教えられて、『シブミ』の精神を身につけたという話なのだが、回想で描かれるのは古き日本の風景。ちょっと変わっていて記憶に残る作品だった。

★そして今回の『サトリ』。『シブミ』の続編と言っても続きの話ではなく前日談。『シブミ』の回想で、数行出てくるエピソードを掘り下げている。

★『サトリ』の舞台は、1950年代、戦後の日本。日本にいた主人公はある事がきっかけで、米軍に捕まり巣鴨拘置所に入れられるが、CIAから釈放を条件に仕事を依頼される。
★その仕事というのが、ソ連の要人を北京で暗殺するという極秘任務。アメリカが中国とソ連の急接近を警戒しての秘密作戦だが、この極秘任務が今回のメインの話。

★主人公ニコライは実業家(フランスの武器商人)に顔を整形して化けて、北京に入る訳だが、冒険小説というよりは、スパイ小説(エスピオナージュともいう)。
★話は、「いかにこの主人公がその任務を成功するのか」、「失敗するのか」、「どういうアクシデントが起きるのか」、という、敵地潜入もののスパイ小説の王道をいく形。

★ところが、王道にも関わらず、一気読みさせるのは、ドン・ウィンズロウのうまさ。

★ここでドン・ウィンズロウがどういう作家かというと、、、
★現代の実力作家。アメリカ。日本でも人気で、一番新しいのは一昨年の「犬の力」というマフィア小説で、これは2010年度「このミステリーがすごい!」第1位。
★また、有名なのは、「ストリート・キッズ」という1991年に書かれた作品。孤児が街頭で独りで生きていく為に盗みを働いているところを大人につかまり私立探偵へ。そして成長していく姿を描いた作品は、探偵ニール・ケアリーシリーズとなり人気。

★この人がうまいのは、まず人物造詣。
★今回の作品『サトリ』で主人公は、フランス人に化けて、潜入するためにソランジュという美しい女性からフランス人の特訓を受けるが、恋仲になったり、、、いい。
★そして、なんと言っても凄くうまいのが物語のメリハリ。これは、言っていいのか、、、物語の半分のところで秘密任務の結果が出てしまう。つまり、そのあと半分は別の展開。
★それがまた、どんどん緊迫感を畳み掛けてくる。

★この手の冒険小説、スパイ小説は。いろいろなパターンがあって、最後の最後まで 任務で引っ張るパターンもあるんですが、この作品は任務が終わった後も、逆にサスペンスの緊張がどんどん、どんどん、高まっていく。そういううまさがあります。
★一気読みさせます!そういう小説です。

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