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【書き起こし】自民党・猪口邦子 参議院議員 電話インタビュー

※自民党の猪口邦子議員が、産経新聞社(著),古森義久(監訳)『History Wars Japan-False Indictment of the Century 歴史戦 世紀の冤罪はなぜ起きたか(産経新聞出版)』(『歴史戦 朝日新聞が世界にまいた「慰安婦」の嘘を討つ(産経新聞出版)』の英日対訳ダイジェスト版)と、呉善花(著)『Getting Over It ! Why Korea Needs to Stop Bashing Japan(たちばな出版)』(『なぜ「反日韓国に未来はない」のか (小学館新書)』の英訳版)をアメリカ在住の文化人類学者・山口智美さんなど海外在住の研究者や、日本在住の外国人ジャーナリストなどに対して送付していた件について、 2015年10月21日(水)に猪口邦子議員に行った電話インタビューの書き起こしです(聞き手:荻上チキ)


2015年10月22日(木)「自民党の国際情報発信を徹底検証」(取材報告モード)
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荻上 最初に、今回、猪口議員が山口智美さんに二冊の本、『history wars』と『Getting Over It?』を送ったということは事実なのでしょうか?

猪口 はい、そうですね。

荻上 どうしてこの二冊の本を送ろうと思ったのですか?

猪口 これは山口先生だけでなく、何人かの影響力のある方々、あるいは発言を積極的にされている有識者、あるいはメディアの方々に送っておりますので。そういう中で、山口先生も業績をあげていらっしゃしますので、献本という形で、ひとつの資料として送らせていただきました。

荻上 なるほど。それはアメリカの研究者の方々などに送ったということになるんですね?

猪口 アメリカの、というか、なに人かということですか?

荻上 いえ、特にそういうことではなく送る対象としてということです。

猪口 アメリカで活動している影響力のある方々ですね。

荻上 例えばその学者の方、というのは以前、日本の歴史家を支持する声明というものに署名した研究者の方もいらっしゃいましたけども。

猪口 そういう方々もいますね。

荻上 その方々には全員に送られたんですか?

猪口 全員かどうかは、リストで確認しているわけではなく、いずれも著名な日本研究者、あるいは一般的な国際関係論について発言している方々だったと思いますので。

荻上 誰に送るかは猪口さんがお考えになったのでしょうか?

猪口 そうですね。いろんな方の意見交換もしますけどね。

荻上 どのくらいの方に送ったんですか?

猪口 それは、その規模そのものをですね、資料として送りますので。それ自分の本だったらさらに幅広く送りますけども、これは私の本ではありませんので、特定の範囲ということです。

荻上 数百人くらいということでしょうか。

猪口 そんなたくさんじゃないですね。数百というともっと多い感じですかね。

荻上 百は越えるけれども。

猪口 そうですね、そのくらいだと思います。

荻上 この二冊の本は選書された経緯や理由を教えていただいていいですか?

猪口 まず英語で書かれているということ。そうでないと世界への発信になかなかならないということですよね。ええ。その中から、さまざまな観点を資料として送るという努力の一環だと思います。

荻上 様々な観点というと、具体的にどういう観点を重視されたのでしょうか?

猪口 日本にもいろいろな考えがありますからね。そのひとつであり、もうひとつの著書は、執筆者は日本人ではありませんけども、その方の本も、そういう意見もある、と。代表的であるかは私は判断つきかねますけども、さまざまな観点。こういう複雑で、難しい問題について、アメリカで活動している知識人の皆さまが、考えるなんかの参考資料になればという観点ですね。

荻上 いろいろある意見の中でも、特に世間に流通しているものとはちょっと違う角度からということになるんですか?

猪口 違うかどうかわからないですし、どういうものが流通しているか、それは皆さんの方がよくご存知と思いますけども、日本にもさまざまな意見がありますし、日韓関係を改善するということは、私は議員連盟はじめ、非常に積極活動をしておりまして、それを切に願うものですね、日中・日韓を改善して、将来世代のために、努力していきたいと。私は日韓議連の未来委員会委員長を務めておりますので。そういう活動の中で考えること多く、また多様な意見、柔軟な意見、ありますので。そういうことです。

荻上 確認ですけど、これは猪口議員が個人で送ったということになるんですか?

猪口 そうです。

荻上 以前、山口さんが電話取材をした際には、チームとして取り組んでいるという話でしたけども。

猪口 ですからね、どういう対外発信をするか。そういうことは常時意見交換するみなさんがいらっしゃいますよ。それは議員であるということは、学者と違ってですね、単独ですべてやるということではなくて、もちろんいろいろな意見を聞いて、そこは慎重に、かなり幅広く意見を伺って判断するということになります。チームということを、固定的なものじゃないんですね。

荻上 特定の部会で意思決定されて送ったというわけではないということですね。

猪口 そういうのじゃないですね。私、名誉回復委員会ってあるじゃないですか。自民党の部会でね。そういうところで決定して送ったということではない。ただ自民党の議員の連携の中で、そういうチームという言葉が適切かわからないんですけど、意見を交換する仲間と言いますかね。あるいは対外戦略発信。これを努力する仲間の議員、先生方がいらっしゃいますので。いずれも英語でそれを発信できるということが条件になりますけど。そういう先生方との意見交換もよくしていることですし。幅広く、意見交換をいたします。

荻上 その上で猪口さん個人が、送られたということになるわけですか。

猪口 個人がといいますか、自民党の議員として送っているということですね。

荻上 自民党議員として。ただし党として......

猪口 個人というとちょっと違うと思いますね。

荻上 はい。

猪口 個人だったら自分の本を送るでしょうから。

荻上 党として部会としてではなく......

猪口 そういうことではない。党の決定過程を通しているというわけじゃない。

荻上 なるほど。書籍の購入はどういったお金でなされたものなのですか?

猪口 といいますかね。書籍についてはよくあることなんですけども、献本ってたくさんあるんですね。ですからそういう寄付していただくということですよね、本を、そのものを。そういうことはよくあることです。

荻上 ということは、産経新聞出版やたちばな出版から本をいただいたものを送ったということですか?

猪口 そこは寄付者がないかということは、これは篤志家のやはり立場を尊重して、それは明らかにする必要はないと思いますね。

荻上 なるほど、出版社ではなくて、誰か個人の方が送ってきて下さったものを送ったという。

猪口 だからそれも含めてですね。

荻上 それも含めて。

猪口 そこはだって、どうしてそういうことを聞きたいんですか? 逆に。

荻上 つまり意思決定の中で、例えば出版社と連携したものなのか、

猪口 ああ、連携したってことはないですけど。

荻上 個人が、私費で出したものなのかというのでは、

猪口 いやいや連携したことはないです。

荻上 意味合いが少し変わってくると思うんですけども。いかがですか。

猪口 連携したってことはないですよ。

荻上 百冊以上というのはかなり多いと思うんですけども。そのものがすべて寄付ということであれば、それは版元なのか、個人なのかで意味がかわってくると思いますが。これは本の入手経路というものはどういうものだったのでしょうか。

猪口 ですから寄付者は明らかにするべきじゃないと思うんですね。

荻上 するべきじゃない?そこは説明責任は出されないという。

猪口 えーどうして? そんな資料としていろいろなものを送ることはいけないんですかね。私、いろいろなものを送っていますよ。

荻上 もちろん、もちろん。

猪口 そういうことを聞かれるのってちょっと初めてなんですけどね。

荻上 初めてですか。

猪口 ええ。だっていろいろな資料を送っていますもん。

荻上 他の資料はわからないんですが、こういった歴史認識に関する書籍を送る際に、例えば党のお金なのか、個人のお金なのか、それとも他の方々の寄付となったら運動体なのかどうかで、おそらく意味が変わってくると思いますし。他の党がそういうことをやった場合には、自民党の方も追及されるような気がするんですが。

猪口 いやあ、でもね、対外戦略配信というのは、もう少し柔軟にですね、もっといろんな考え方をアメリカに伝えないと、と思いますよ。いや、根本的に。例えば、TBSさんが、なにか英語でですね、翻訳されている出版をしたらね。やっぱり広く読まれるものだと思います。

荻上 もちろん。

猪口 そういう観点で、そういう対外戦略、まあいろんな発信がありますけどね。やっぱり書籍って言うのは、やっぱり書く人たちも時間を使うわけだし、それはまた、なんていいますかね、部会の提言書、かなり分厚いものとかありますよね。それを英語にする場合もあるんですね、私ね、そういうのを送りますけどね。例えば女性活躍推進も英語にしてありますしね、提言書。

荻上 自分たち政府の文章を送ることと、特定の、例えばメディア、版元の出版物を送るのでは意味合いが変わってくると思うのですが、なおさら、国会議員の方が送るとなると意味づけも出てくると思うんですけども。重ねて聞きますが、そこは明らかにできない?

猪口 ここはね、いまね、そもそも、対日の、議論というのがね、もう少しバランスある形でなされるべきと考えているところはたくさんあるんです。特にですね、女性の人権に関して、我が国が戦後70年間、特に韓国との関係で、どういう努力をしたかということですね。これは私も説明するためにですね、アメリカにいたこともありますけども、まあそれは本当に知られていないんですね。 ご存知の通り、政府 対 政府、これは請求権の放棄という形で、日本としては、法的な解決をみてもらっているわけですよね。それに対して、しかしそのときの日本からの賠償、それがその国内の、どういう形に活用されたかということについては、これは主権国家ですから、戦争の結果としての賠償となりますとですね、これは政府対政府で、きちっとやったわけですね。その時代。で、ところが、いろいろと戦争の犠牲となった、あるいは戦争におけます女性の人権侵害、こういうことについての問題について、まあそれですませていいのか、ということがあるでしょう? これについて、私は、アジア女性基金、これは研究者の頃から、有馬真喜子先生と一緒にずっと頑張ったことなんですね。で、これはまあ、ピープルトゥーピープルですね。

荻上 市民から市民へってことですね。

猪口 そうです。政府から政府へということはなされたと。それはお詫びを込めてなされているんですね。だけど人のことはどうなるのかということのなかで、アジア女性基金を通じて、ピープルトゥーピープルという努力はしたと。その中には、お詫びの気持ちもこめた、生活保障、そしてこれ本当に他の国じゃ無いかなとおもいますけどね、総理大臣のお詫びの手紙が、すべての中に、含まれていたということですね。そういうことまでやって、努力して、なんとかその時代のことを日本も反省する。これは村山談話以来の流れがあるわけでしょ。向こうも許すと。という流れを作るということに腐心してきたわけですよ。

荻上 そうした経緯があまり諸外国では理解されていないじゃないか、という趣旨になるわけですね。

猪口 わかってもらえていない。まったく初めて聞く話だというようなことなんですね。

荻上 そこで確認なんですけども、猪口さんはこの二冊の本を読まれたうえで送ったわけでしょうか?

猪口 もちろんですよ。

荻上 本の内容に関してはおおむね理解できるというか、同意できるから送ったというのはあるのでしょうか?

猪口 参考資料としていろいろな見方を送ったと申し上げましたよね。ですから自分の書いた本ではなく、その本全体を評価するということはありえないんですね。自分の本だってですよ、なかなかそこまで評価できないと後日思うものですから。ただその中で、多様な見方、これをお伝えするということの一助になればということを、願ったということです。山口さんという方は、さっきおっしゃった。その方とは、国際電話で直接お話したんですよ。

荻上 取材の様子は聞いております。

猪口 取材というんじゃなくて、意見交換ですよ。だって取材する立場でいらっしゃらないと思いますし。

荻上 山口さんは文化人類学であると同時に研究者として

猪口 研究者として

荻上 取材をいろいろ調査という形で

猪口 取材ということじゃなくて、まあ献本してもらったんだけど、そういう趣旨は? ということで、お電話いただいたので、お話しました。いまのようなことを。

荻上 その言葉は山口さんはネット上にお書きになっていますからね。

猪口 うん。それで、よく理解していただいて、まあ多様な意見の一つとして。あと70年の日本の努力。これがもう少し評価されてもいいと。それから評価っていうか、わかってもらう。評価はできないでしょうけど。まあそういうことだったんだと。70年の眠りについたということでは、少なくとも女性側はないということでうね。

荻上 山口さんがその意見に同意したということですか?

猪口 わかってくれたと思います、私。その会話で。国際電話で、いまのこのお電話よりは長くないですけど。

荻上 手短にということですね。

猪口 手短にというか15分くらいですけどね。

荻上 確認ですけれども、多様な意見を理解してもらいたいという趣旨で本を送ったのであって、こうした意見を受け取ってくれという中身に賛同して送ったわけではないということですか?

猪口 多様な意見として、参考資料として送っているというわけです。

荻上 そうしたときに、なぜあえてこの二冊なのかということが気になるのですけれども、例えば英語で書かれている本というあれば、歴史学者の吉見義明さんが書かれている本も英語になっていると思うんですけども、あえてそれではなく、産経新聞社の方を送ったということになるわけですよね。そしてその本が誰かしらから寄付されて、100冊以上を送るということになったと。それをどのマネーで送ったかということも明らかにされないとなると、国民の側からするとそれはいったいどういうことなのかという疑問が出てきてしまうんですよ。いかがでしょうか?

猪口 ですから他の本を送ることも十分考えられます。ただ英語になっていて、そこが結構なネックなんですね。うん。そうですね。案外とそうなんですよ。ですから今後ですね、いろいろと出てくる可能性もありますので。幅広く、日韓、あるいは日中、あるいは日米韓。私は日米韓・国会議員会議の団長なんですね。ですからアメリカともそういう会話する立場にあって、議員さんたちとね。あるいは議員のスタッフも含めて。ですからそういうところで、やはり日米に、日米はいまよろしくなっているんですけど、日韓・日中、しかしこれもですね、今回のアメリカの強い働きかけがあってじゃないですか。日韓が打開されつつあるのもね。

荻上 未来志向であることは猪口さんは、ひとつ思っているということになるんですね。

猪口 そうです。そうです。続く世代のためにね、しかも過去の世代といったら申し訳ないですけども、この70年を歩んだ女性たちだって、実は同じ意見なんですよ。

荻上 同じ意見。

猪口 そう。乗り越えて、悪かったけれども、なんとか乗り越えて、こちらも詫びるし許してもらいたいと。それで未来に向かって歩み始めたいという気持ちだと思いますよ。

荻上 つまり慰安婦問題に関して日本は悪かったけれども、その後の歩みをみてくれということになるわけですか。

猪口 そういうこと、そういうこと。そういう観点すらね、日本だったらそりゃね、当たり前の議論ですよね。でも、私はね、多くの国会議員、アメリカの議会人に、上院議員中心にお話しましたけれども、全員初めて聞く意見だと聞いた。これは驚くべき事実ですよ。意外とですね、ローカルで世界の中では、日韓のこのことというのは、理解される余裕がね、アメリカの議員も忙しいから、と思いますけども。自分も国会議員ですから、自分の分として、アメリカのカウンターパートでアメリカの国会議員、あるいはその政策のスタッフたちですね。ここにきちっと説明していく必要があると思っています。

荻上 今回は議員やスタッフには送っていないわけですか。

猪口 議員スタッフも含めてですよ。もちろん。だって私が説明にいったくらいですから。

荻上 となると連携というかすでに交流がある議員の方々などに本をおくったりしたのもあると。

猪口 そうそう。かなりね。

荻上 かなりの量で。

猪口 ただ学者は、私の専門は国際政治の理論の方だから、日米とか日韓のね、専門家というのは必ずしも直接存じ上げていない。まあ論文では知っていたり、本ではだいたい知っていると思いますけども、全米政治学会とか、そういう場で交流してきたというわけではないと思います。ただかなりの人はそういう全米政治学会の私の古くからのメンバーで。最初に自分の論文を発表できたのは、日本では女子にチャンスが開かれていなかったので、全米政治学会なんですけどね。そういう活動をする中で、様々な方々を存じ上げていますし。あの頃若かった中で我らの中で、本当にアメリカで重鎮となられたような方もたくさんいます。

荻上 いろいろな方に今回送ったということなんですけども猪口さん自身の歴史認識として、慰安婦の問題に関しては、どういう風にお感じになっていますか?

猪口 まずそれは絶対に間違っていたということです。そういうことは二度と繰り返されてはならない。

荻上 それは慰安婦制度があったことについてですか?

猪口 その現象は、私は専門家ではなくて、その日韓の研究者でないので、それがですから、総理もおっしゃっている通り、歴史家に任せないといけないですね。私も学者だったから、学者はだてに学者をやっていないですよ。それは24時間、自分のすべてを注ぎ込んで、データ検証をやるわけですから。それはそこの意見を、その結果もまた多様かもしれませんよ。でも普通に科学的に反証可能性とかね、求められますから。いまの学問の世界はそんなにやわじゃないですから。

荻上 それは存じ上げているんですけども、猪口さん自身の、認識としては、総じて、反省すべきだったということだったんですけども。具体的にどういった点でしょうか?

猪口 まず戦争における女性に対する暴力、人権侵害、そういう問題は、当時もそうですが、今日でも克服が完全にされているとは限らない。そもそも国際法は、戦闘員の活動をカバーする。あるいはそれを守るという。そういう観点から構築されていますので、非戦闘員、もちろん国際人道法の分野がありますけども、それも兵器に限られたものなんですね。それは人道的な兵器か、非人道的な兵器かという。でもその人間単体に着目したそのような国際法の分野というのは、非戦闘員については、まったく未開拓なんですよ。で、これから二十一世紀の課題なんですね。二十世紀のそういう国際法も不在のところですから。特に、非戦闘員の内のさらに囚人的な立場にあった女性たちですね。そこを守る国際法はないわけですよ。そういう中で起こったたくさんの悲劇があって。そういうことを向き合っているわけですよ。だから女性基金なんですよ。

荻上 ということは、慰安婦制度は女性に対する人権侵害であったので、これは許すべきではなかったと。

猪口 制度とおっしゃるけども、さっき言った制度かどうかということについてね、私は十分に研究者としての研究をしている方々の比較行為ができていないからね。

荻上 えっと、さすがにですね、強制連行云々について意見があるのは知っているのですけども、慰安婦制度があったかなかったかという点について意見がわかれているとは僕は知らないんですけど。

猪口 なるほどね、そういう意味でね。強制連行かどうかということではなくて、コンフォート・ウーマンを提供するということは。

荻上 そこは確かですよね。

猪口 ああ、うん、なるほど、それはいいですよ、それで。ですから、それは、そもそも売春禁止ですから、日本としてもね。ましてや、戦時下において、その抵抗するすべがあったか。そういうことを考えると、やはりここは、完全に、禁止されないといけないと。それは、当然でしょう。慰安婦が必要でしょっていうひとは、意見としては、私としては違うと思います。

荻上 つまり一般的には、連行時の強制性ところばかりが着目されるけれども、慰安婦制度やそこに行かざる事情も含めて、広い意味での強制性そのものを問題視し、人権侵害だと議論すべきであったということですかね。

猪口 まあこっちはお詫びしているわけですからね。お詫びするというときにはそういう意味合いがあると思います。どういう事情があったとしても、戦時下において、女性がそのような、性的サービスを強要されていたということについて、それがもし日本の戦闘員のことであったならばね、それはその後の世代も含めて、お詫びするということだと思います。

荻上 なるほど。

猪口 それは率直な人間としてのお詫びで。ピープルトゥーピープルはそういうことなんですよ。そういうことをもっと話せば本当にわかってもらえるんですよ。

荻上 一点だけ確認をさせていただきたいんですけど、河野談話の中で総じて本人の意思に反して行われたというような表現がありますよね。猪口さんもそうした理解だということになるわけですよね。

猪口 私は河野談話を完全に支持しています。

荻上 一方で、猪口さんがお送りになった産経新聞の書籍はですね、河野談話の文言に対してはかなり批判的なトーンになっているのと、強制連行という点に関してはかなり批判的なトーンでまた書いているんですけど。

猪口 ですからそういう意見もありますけども。河野談話は、それは否定されていることはないですから。

荻上 それは誰によってですか?

猪口 私は与党議員ですけども、政府与党によって否定されていることではない。

荻上 でも与党議員の中では河野談話については、多様な意見がありますよね。

猪口 そうそう、それはそういうことはあります。で、私はそういう一員ではないということです。ただ政府与党として、過半数は河野談話は支持していると思います。ただね、いま言ったように、セットでその後の70年のピープルトゥーピープルのお詫びの気持ちと、これを未来委員会の委員長ですから、日韓議連の副委員長だな、委員長は民主党さんに譲っています、この委員会は。私は与党副委員長ですね。その活動をしているわけだから、そこはちゃんと信じてもらわないと。それは誰が聞いても、疑う人はいないよ。韓国側も非常に私の活動を歓迎していますし。

荻上 そんな猪口さんが、河野談話や強制連行に否定的な本を特にピックアップして送ったことに対して、もしかしてそうしたこともあるんじゃないかなという人も。

猪口 否定しているんじゃないですよ。否定はしていないと思いますね。それはまた一部ですよ。考え方として。全体の中、そこだけを取り出して、ということじゃないと思いますね。ですから先ほど申し上げた通り、本全体に賛同するわけではない、と。

荻上 本のどこの部分を読んでほしいというのはありますか?

猪口 それは個別的に、申し上げるのも大変ですけども。乗り越えて、新しい日韓、日中もそうですけども、未来志向の部分を開いていくための努力ということですよ。

荻上 今回の本を送ったことによってどういった効果が果たせればいいなとお感じなったのでしょうか?

猪口 うーん、まあその対外戦略発信というのが非常に難しいんですね。多様な意見というのが、もう少し自由に、そして柔軟に、それが交流されてもいいんじゃないかと。その中で、なぜその人はそのように思っているのか。例えば一部の国会議員にもいまおっしゃったような、非常に、私とは違う立場をとる先生方もいらっしゃいますよね。じゃあどうしてそういうところに追いやられていくのか。そういうことも議論できるんですよ。これだけの日本の努力、それをことごとく、評価されないどころか知らないと。知らないままでいいと。ですから自民党の名誉回復委員会というのがあるんですね。やっぱり主権国家だから、その国家の名誉というのがあるから。その名誉について、もう少し敏感になってもいいんですよ。だけど歴史についての、責任は、それをみたことのない世代でも、取る覚悟でこういう議論をしているわけでしょう?だけど続く世代に、ある意味続く世代が、よりあまり偏った形になっていくとですね。やっぱりそこは不安であるというところもあるんですよ。

荻上 ただその多様な意見を交換できる場を作るという意味でおっしゃるのであれば、猪口さんと違う随分と歴史認識も違うような意見も、今回書籍として送ったということは、ある意味多様性の体現ということになるおつもりなんでしょうかね。

猪口 まあそのなかでの、本全体を、ひとつの主張という風にとらえているわけでもないんですけども。おっしゃったような部分もありますよね。

荻上 ということは今回の本を受け取った方に、どういう反応を期待して本を送られたのでしょうか?

猪口 うーん、まあいろいろな日本からの発信もあると。資料として本というよりも資料的な私は位置づけで送っていますので。ええ、そういう意味で、まあ受け取って、見ていただけたらいいと。そして、日本は、歴史において、慰安婦の問題についても韓国の女性の名誉を傷つけているわけですから。尊厳と名誉。これについての深い反省が必要で。そのお詫びも必要で。そして、繰り返しを許さないという戦後の歩み。まあ人権公助、女性の地位向上、こういう努力が必要だったと。これは私よりも上の世代が、本当のたいへんなところをやってくれて。私の世代になってそれは当たり前のことという時代になっていたけれども。そこは世界というか韓国には理解されていないし。アメリカにもなかなか理解してもらえないので、そしたらですから日本は、他国の名誉を傷つけたと。でも、同時に日本の名誉も、一定程度、やっぱり救済されないと、そこは主権国家同士の未来の関係としてはですね、ちょっと不安なものを残すことになるかなと。別にこの本に賛成してくれと言っているんじゃないですよ。だけど多様な意見があって、日本もつらかったんですよ、と。こういうことを向き合うのが。

荻上 どういった状態から、どういった状態に名誉を回復したいのでしょうか?

猪口 それは、その、これだけの反省やお詫び、歴代総理、最近の安倍総理の談話も含めて。それからピープルトゥーピープルのアジア助成基金の位置づけ、あの私、第二次男女共同参画基本計画を可決した大臣なんですけども。

荻上 担当大臣ですよね。

猪口 そのなかにも位置づけていますよね。それはすごい努力だったんですよ。これをきちっと位置づけるのはね。そういうある瞬間、ある立場で、できることは全部やったということです。学者としてもできることはやった。

荻上 名誉を回復したいということは、通常、なにか誤解されている点があって、そこはまあ

猪口 そこは名誉回復ということじゃなくて。ようはそういう努力をしているということの、位置づけですよね。

荻上 それは戦後の歩みの方であって。

猪口 そうそう。

荻上 慰安婦問題に関しては、申し開きはできないというような理解の上でということですか。

猪口 まあ申し開きというか、正当化する言い分というのはないんじゃないですかね、さすがに。

荻上 例えば国内でも、その正当化する方もいるし。

猪口 いやあ、どうですかね。

荻上 また加害性というものをなるべく小さくしようとする方もいるし。あるいは売春婦がやっていたものなんだからという形で、合理化するという方もいますよね。

猪口 まあでもそれは、純粋な商業的なものではなかったという意見が大半じゃないですか?

荻上 自民党でもそうですか?

猪口 私は意見調査をしたことはないですけども。それは、大半ではないと思いますよ。そこは無責任なね、人の意見ですから。だから民主主義というのは、いろんな意見があるけど、だけどいろんな意見がずっとあっていいというわけでもなくて。一定のことについて、やはり収斂していかないとですね。続く世代が苦労するであろうと。また日本の名誉回復のために極端な主張もでてくるかもしれないので、そこは私は恐れますね。

荻上 猪口さんのチームの方々というのはどうだったのでしょうか?

猪口 それはもうリベラルじゃないですか?私のチームですから。

荻上 なるほど。先ほど対外情報発信の話を少ししていただいたんですけど、それをつかさどる部会の原田(義昭)議員ですよね。

猪口 原田先生は、ある部会の会長をされています。でもそのチームでやったことじゃないです。それは文脈が違う。あそこはオープンエンドの会ですから、都合つけば参加していましたけど。そこは違うんです。

荻上 先日原田さんにお話を伺ったときにですね。原田先生は、強制連行はなかったという話をされていましたし。

猪口 それは原田先生のご意見であって、私の意見ではない。それだけ自民党の中の、いずれの中でも学者ではないというわけです。だから研究者に預けないといけない。私としては、先ほどから繰り返しているように、戦争と女性に対する暴力、女性の立場として絶対に許すべきではない。今後繰り返すべきではない。特に我が国がやったのであるならば、何年経っても後悔しなければならない。だけど後悔の上に、なにをしたのかということも見つめて、これが正しい方向かどうか努力として。それは直近では人権向上、女性の地位向上ということを言いましたけど、それは古い表現なんですね。最近としてはですね、男女共同参画基本法というのは99年、これは国会で全会一致で通しました。私は学者ですけど執筆に関わっています。こういう思想ですよ。あの基本法に、徹底的に塗り込められた思想。あれはですね、義務があるんですよ。

荻上 あの、法律の重要性はとてもよくわかっていますし、戦後の歩みというもので評価されるべき点があるというのも共感はするんですね。例えばいまお話していただいた内容というのはすごく大事なもので、戦後の歩みをみてくれといったときに、例えば河野談話を出しました、あるいは何かお詫びをしました、でも一方で、国会議員レベルからもそうした否定する声がすぐに出てくるとなると、

猪口 そこはね、そこは私に聞いちゃ駄目よ。私は、一国会議員であって、同僚のそこまでですね、そこは私がコントロールするというのは責任を負わされるというのは、荷が重い。

荻上 責任を負わせるわけではなくて、先日原田さんが慰安婦の問題に関しては

猪口 だからそこはそうじゃないでしょ、って話はしていますよ。だから部会で決議が取られた瞬間があるんですね。その決議に大きく介入した発言をしたのは私ですよ。

荻上 介入というのは?

猪口 介入というのはリベラルな観点から、表現を全部緩和。わたしが激しく発言していますから。ですから、そういうことは部会に出席して、一議員としてやりますけども。

荻上 つまり原田さんは対外発信の代表ではあるんですけども。

猪口 それはそれで、そういう対外発信はいろんなところでいろんな議員が努力しているんです。原田さんは年次が高いという、原田先生は、ということがあり

荻上 それに加えて、自民党が党として、そうした活動をしてるんじゃないかと思われやすい状況がある中で

猪口 なるほどね、うんわかった。じゃあそれはね

荻上 猪口さんはそれとは違うリベラルな立場からいろいろ意見を申していることはわかったんですけども、その一方で、猪口さんが送った本は、リベラルとは言い難い本を送っているとなれば、対外的に、これがどういう効果を持つのか。自民党の議員はいろんな議員が歴史修正主義的な動きをしているんじゃないかと捉えられかねないかなと思うのですがそちらはいかがでしょうか?

猪口 そういうことはね、そういうことは心配ないと思います。

荻上 心配ないですか。

猪口 アメリカはもっとね、学術の自由と言いますか、そういう表現、もちろん取材、メディアの自由、報道の自由もそうですけど、多様な意見ですね。ただ一定のラインを越えてはいけないという暗黙の合意はあると思いますね。それはアメリカの国家建設に関わる、人の平等とかね、人権の根本の考え方とかね、あるいは人種差別的な発言とか、そういうことの自由は絶対にないですけども。でもいろいろな歴史についてのいろいろな見方、分析、これはでていますので。それはこの本ですから全体をということではないですけれども、日本として、どういうまあ苦しい、乗り越える道というのが、戦後あったのかということですね。こういう大きな、戦争、敗戦国。

荻上 聞き方を少し変えたいと思うんですけど、政治学者の猪口先生として、送った2冊の本は、学術的に評価できるものだとお感じになりましたか?

猪口 学術書というのとは違うものですね。ですから、学術書としての位置づけで、送ったんじゃない。先ほど申し上げたじゃないですか。資料であると、多様な見方の。

荻上 資料であるという見方の仕方をしてほしいということなんですけども、例えばこの産経新聞のほうでも注釈で引用文献などが明記されているものではないわけですよね。

猪口 学術の基準としては、わたしも学術書を何冊か書いているし、人生の前半がその分野での活動ですから、非常に厳密なもので。そこは学術書ということでは必ずしもないですよ。

荻上 学術レベルとしては評価はできない。

猪口 本にはね、学術として書く本と、そういうことじゃなくて、ワールドビューというかね、自分のビューですよね。

荻上 オピニオンを言うという。

猪口 そうそう、そういう本だってたくさんある。そういう本の方が多いんじゃないですかね。

荻上 ということは多様なオピニオンのひとつとして資料を提供するというような意味でしょうか。

猪口 オピニオンというとちょっと軽いかもしれないですけど、英語であえていわなくてもよくてですね。多様な見方についての資料と戦後の日本の努力、乗り越えなくてはならなかった課題の重さ。そこを考えるひとつの契機になればということですね。それから一国の名誉ですね。私はそれで自分が不名誉だとか思っていないんですけど、でもやっぱりあまり場面でいろいろと深い議論をしたことのない方々が大半ですよね。別に普通に、職業的に必要ないわけですから。そういうときにですね、あまり自分の国についてまあ場合によっては、もともとやったことが不当なことだからといわれたらすべてそうなんですけども、70年の歩み、これも見ていただけないというようなことからですね、やっぱり日本がそこまで駄目だったのかと。で、どうやったら許してもらえるのかとかね。そういう思いになっていく人はたくさんいると思うんですね。

荻上 70年前の日本がしたことを、例えば、70年前のあれはよくなかったことで、今傷つく名誉というのは具体的にどういうことなのでしょうか?

猪口 傷つく名誉というのはないんですけど、その後、それを乗り越えようとし、それにお詫びをする努力というのはしてほしいと思っているんですね。そのままの日本という感じになるとですね、ちょっと違うかなと。そこは日本としての対外発信が、長い間眠ったということですよね。その努力の割には、語っていないんですね。

荻上 その歴史に関して反省している日本の姿を見せることが対外発信として重要だということですね。

猪口 まずそれは見せているんですよ。それは国是じゃないですか。そこは履き違えたらたいへんで。

荻上 ということはそこに反するような対外発信であっては......。

猪口 だけど国家と国家だけじゃなくて、ピープルトゥーピープルとか、議員対議員とか、そういうところでもっと深い話をわかってほしいってことね。

荻上 対外発信としてそういう歴史的な批判、歴史修正主義的なものがあれば、猪口さんは当然批判する立場にあるという前提を理解して欲しいというのがあるんですね。

猪口 ん? 対外発信として?

荻上 ええ、対外発信として、歴史修正主義的なことがもし行われるような動きがあれば、猪口さんはそうではない。自分は批判する立場だということも理解してほしいということですね。

猪口 まあそうかもしれないですね。わたしはそういう動きがあったときにご存知の通り参加していないですよね。政治的なそういう動きに参加したことないですよね。

■資料 猪口議員から山口智美さんに送られてきたパッケージ
※差出人として猪口氏と連名で、気付(c/o)として「フジサンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナル」の名前とワシントン支社の住所が記載されています。
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猪口議員から日本在住のアイルランド人ジャーナリストに送られてきたパッケージ
※差出人として猪口氏と連名で、気付として「産経新聞出版」の名前と住所が記載されています。
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シノドス【猪口邦子議員からいきなり本が送られてきた――「歴史戦」と自民党の「対外発信」山口智美】

「フジ住宅株式会社」創業者の今井光郎氏が代表理事を務める「一般社団法人 今井光郎文化道徳歴史教育研究会」の助成先(PDF)

【全文起こし】自民党・国際情報検討委員会委員長・原田義昭 衆議院議員インタビュー
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荻上チキ、南部広美
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