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在日外国人の生活保護受給率について、次世代の党への追加質問

各党共通の公開質問状とは別に、次世代の党に対しては、山田宏幹事長にご出演いただいた際(2014年12月5日)に話題に上った「在日外国人の生活保護の受給率」について、追加質問をお願いしました。以下にその回答を全文掲載します。

また「在日韓国・朝鮮人の戦後史」の回にご出演いただいた明治学院大学 教養教育センター准教授の鄭栄桓さんにも、在日外国人の生活保護受給率についての見解を伺いましたので併せて掲載致します。

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次世代の党への質問

Q. 平沼党首の演説や「タブーブタのウタ」などでは、生活保護の受給率が日本人に比べ、在日外国人は8倍にのぼると主張されています。これはどのような調査をもとに算出されたデータでしょうか?

    ◆次世代の党からの回答◆

・保護率「8倍」とする外国人とは、「韓国又は北朝鮮」籍の人を指します。
 他の外国籍の人は含んでおりません。
・平成22年10月1日国勢調査(5年ごとに調査)においては、
 世帯主が「韓国又は北朝鮮」籍の場合の保護率(世帯)は
 27,035/190,246=14.2%   ※ただし、世帯数比較
 全生活保護者数(日本籍+全外国籍)
                  [出典:平成22年被保護者全国一斉調査]
 平成22年 保護率 1.52% (1,410,049世帯 1,952,063人)
  保護率:各年度10月1日の推計人口に対する被保護実人員の割合
 この時点で 1.52 と比べて 9.2倍
 平成24年、保護率は1.67%に上がっているので、8.5倍

☆世帯数と保護率の比較となり、しかも調査日に3か月のずれがあるため、
 多く見積もり過ぎないに配慮しました。
☆平成12年、17年の保護率(世帯)、保護率とも、上昇率はほぼ同じで、
 この現状は、ここ10年は続いていると考えています。

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明治学院大学 教養教育センター准教授 鄭栄桓さんへの質問

Q. 次世代の党は、2014年12月11日現在、選挙広報用の動画サイトで「日本の生活保護なのに日本国民なぜ少ない、僕らの税金つかうのに外国人なぜ8倍」と主張していますが(*1)、これに対する見解を教えてください。

◆鄭栄桓さんからの回答◆

(1)そもそも2010年の統計によれば、全被保護世帯数に占める外国籍者を世帯主とする被保護世帯の割合は2.48%である。次世代の党が特にやり玉にあげる「韓国・朝鮮」籍者(*2)を世帯主とする被保護世帯の割合に至っては1.68%にすぎない(*3)。
上記の宣伝文句は、あたかも外国人の生活保護受給者数が日本国民のそれの「8倍」であるかのような誤った印象を与えるものである。被保護世帯の圧倒的多数が日本国民であることは明白であるにもかかわらず、外国人が生活保護を日本国民より多く需給しているかのような宣伝を行うことは、多くの誤解を招く可能性がある。

(2)次世代の党は、「外国人なぜ8倍」とは「保護率」を指すとしている。「韓国・朝鮮」籍世帯数から割り出した2010年の被保護率14.2%と、全被保護人員数から割り出した2012年の被保護率1.67%(*4)を比較し、「韓国・朝鮮」籍者の被保護率が「8.5倍」であるという。
 だが、被保護世帯数と被保護人員数という異なる母集団を「比較」することにそもそも問題がある。仮に全被保護世帯数(1,608,994人)を総世帯数(51,950,504人)で割るならば、被保護率は3.10%であり、次世代の党の「比較」の方法を用いるならばその差は「4.58倍」となる。但し、国勢調査は外国人登録に比して外国人人口が低く現れる傾向にあり、これを勘案すればさらに低い数値となるだろう(*5)。被保護世帯の総数は厚生労働省によって公表されているにもかかわらず、なぜあえて異なる母集団の「比較」を行ったのか不明である。

(3)すでに指摘した通り、生活保護受給者の圧倒的多数は日本国民が占めており、実数が圧倒的に異なる集団の被保護率を比較することにいかほどの意味があるのか疑問である。むしろ、貧困が存在するにもかかわらず実態に比して日本国民の被保護率が低いのだとするならば、捕捉率の低い現状をこそ改善すべきであろう。圧倒的少数の外国人受給者に責任を転嫁すべきではない。
 そもそも、「韓国・朝鮮」籍の高齢者が生活保護制度に頼らざるをえない状況が作り出された背景には、戦後日本の社会保障制度の欠陥がある。現在の「韓国・朝鮮」籍者の生活保護受給者の約半数が高齢者の一人・二人世帯であるといわれるが(*6)、これらの高齢者の多くは日本人の高齢者の所得保障の中心をしめる公的年金から排除されているからである。いわゆる在日朝鮮人高齢者の無年金問題である。
 国民年金法(1959年11月施行)には国籍要件があったため「韓国・朝鮮」籍者は国民年金制度に長らく加入できなかった。難民条約批准(1981年)に伴い1982年より加入が可能となったが、それ以前に排除された人びとへの救済措置は採られなかった。このため1982年1月1日の時点で①60歳以上の者は加入できず、②35歳以上の者は25年の受給資格期間を満たせないため老齢年金を受給できず(*7)、③20歳以上で失明等の障害のあった外国人は国民年金には加入できても障害年金は受給できないこととなったのである。しかも在日朝鮮人の多くは、企業からの就職差別や国籍条項による公務員就業からの排除のため被用者年金(厚生年金、共済年金)を受給する資格も得られなかった。このため、多くの日本人の高齢者の所得保障の中心をしめる公的年金から排除された在日朝鮮人高齢者にとっては、生活保護が唯一のセーフティネットとならざるを得ない。
 「韓国・朝鮮」籍世帯数に占める生活保護受給世帯の割合が、総世帯数に占める被保護世帯の割合よりも高い背景には、以上みたような、戦後日本の社会保障から排除されてきた在日朝鮮人高齢者の無年金問題がある。欠陥のある制度を作り出した責任に触れることなく、実数としては圧倒的少数の受給者のために、日本国民が生活保護ご受給できないかのような主張を展開することは、重大なミスリードになり得る。


*1 「タブーブタ/次世代の党」(次世代の党チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=R7ilGGkne-I

*2 「回答」には、「保護率「8倍」とする外国人とは、「韓国又は北朝鮮」籍の人を指します」とあるが、「韓国・朝鮮」籍の誤りである。外国人登録上の国籍表示「朝鮮」は、朝鮮民主主義人民共和国の国籍を意味するわけではない。

*3 2010年7月1日現在の厚生労働省調査による被保護総世帯数は1,608,994世帯、うち外国人を世帯主とする被保護世帯数は40,029世帯、「韓国・朝鮮」籍者を世帯主とする被保護世帯数は27,035世帯である(厚生労働省『被保護者全国一斉調査』平成22年度)。この統計はあくまで外国籍者が世帯主である被保護世帯を示すに過ぎないため、受給世帯の構成員がすべて外国人であるとは限らない。

*4 なお「回答」は、2010年の被保護率を「1.52%」とし、根拠となる「全生活保護者数」について2010年の「被保護者全国一斉調査」(以下、「一斉調査」)をあげて1,410,049世帯、1,952,063人とするが、これは誤りである。この数値は厚生労働省が算出した2010年度の一ヶ月平均被保護世帯数であり、「一斉調査」によるものではない。「一斉調査」によれば、被保護総世帯数は上述の通り1,608,994世帯、被保護総人員数は1,878,725人である。

*5 2010年の国勢調査による「韓国・朝鮮」籍者数は423,273名であるが、同年の「韓国・朝鮮」籍の外国人登録数は565,989名である(総務省統計局『人口推計』「平成17年及び22年国勢調査結果による補完補正人口」及び法務省入国管理局『登録外国人統計 統計表』2010年を参照)。

*6 金耿昊「戦後日本における在日朝鮮人生活保護「問題」の現在と過去――在日一世世代に対する民族差別と貧困の継続」、君島和彦編『近代の日本と朝鮮 「された側」からの視座』東京堂出版、2014年。なお、戦後日本における外国人の社会保障からの制度的排除とその問題については、田中宏『在日外国人[第三版]』岩波書店、2014年もあわせて参照されたい。

*7 1986年4月の国民年金法の改定によるいわゆる「カラ期間」の適用措置により、この時点で35歳以上かつ60歳未満の在日朝鮮人には老齢年金受給の可能性が開かれたが、この場合の年金の支給額は実際に加入した期間からのみ計算されるため、その額は低額にとどまるものとなった。 

荻上チキ、南部広美
radiko.jp

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