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放送中

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知的障害者の「4年制大学」的福祉施設

人権TODAY

毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

知的障害者の大学進学者は、ほぼゼロ

知的障害者が大学や専門学校に進学する人の割合は、わずか0.4%。日本では知的障害者を受け入れる大学は、ほとんどないといっていい状況です。そのため、知的障害者は高校に当たる特別支援学校の高等部を卒業した後は、福祉施設の作業所などに入るか、就職するかの二者択一となっています。

そうした状況の中、福岡県の社会福祉法人「鞍手ゆたか福祉会」は、知的障害者の学びの場として、4年制の大学に見立てた「カレッジ」を設立し、現在5か所で運営しています。その1つ、東京・新宿区にある「カレッジ早稲田」を先日取材し、理事長の長谷川正人さんに聞きました。

鞍手ゆたか福祉会の長谷川正人理事長

鞍手ゆたか福祉会の長谷川正人理事長

カレッジはどんな施設?

「もっと僕は勉強して一人前の大人になりたい」とか「もっといろんな経験して自分をもっと成長させたい」という人たちがいますが、そういった人たちが行く場がないという中で、4年間かけて健常者が大学で学ぶのと同じように、友達との関わりの中で成功体験もあり失敗体験もありと、いろいろなことを経験して多感な時期を過ごして、一人前の大人になってたくましく社会に出ていくと、そういったことを準備する場所です。

大学ではないが、社会に出る前に4年間学べる施設

このカレッジは、障害者総合支援法が定める「自立訓練事業」と「就労移行支援事業」を組み合わせた福祉施設で、授業料は原則無料。能力の高い人の「普通科」と、障害の重い人向けの「生活技能科」の2つのコースがあり、設立3年目の「カレッジ早稲田」では、現在5人の3年生をはじめ、およそ40人が学んでいます。

授業風景「秋について学ぶ」

授業風景「秋について学ぶ」

普通科では1・2年生は、社会に出るためのスキルを身に着ける「教養課程」として、さまざまな授業が行われます。
 ・基礎学力  漢字の読み書きや計算など
 ・経済    電卓の使い方や買い物の計画、銀行の利用法など
 ・ヘルスケア 栄養や食事、病院の利用法、からだの仕組みなど
その他、資格を取る勉強や、自分の興味のあることについて1年間かけて研究論文を書く「自主ゼミ」などがあります。

3・4年生は、就職に向けたスキルを身に着ける「専門課程」として、教室を企業の職場に見立てて、清掃や介護、事務管理などの職業訓練を行います。4年生では、様々な職場を見学し、就職を希望する企業の職場で一定期間実習するインターンシップがほとんどです。

その他に、スポーツや芸術などの授業もあり、私が取材に訪れた時は、ちょうど外でバスケットボールの授業を終えた生徒たちが帰ってきたところで、元気に挨拶をしてくれました。それから、教室で授業も見学しましたが、大学というよりは小学校や中学校の教室の雰囲気に似ているなと感じました。

パソコンを使った授業

パソコンを使った授業

そんな生徒さんたちに、カレッジについて聞きました。

1年生「私自身が一人生活で必要な力が不十分で、自分の力で何をしようかっていうのを分からないから、ここで勉強したかった。自分から話もあまり養護学校の時はできなくて、でもここだとそれが克服できて良かった」

3年生「本当は第一希望は違う会社に行こうかなと思ったんですけど、仕事はまだ早いなと思って。役に立ったのはコミュニケーションですね。友達を大事にしたいなと思って。自分に合った仕事を探していきたいなと思っています」

この2人は「養護学校(特別支援学校)では、2年間で職業訓練を詰め込まれて、厳しい指導の中、仲間もあまりできなかった。でも、ここに来たら仲間も多くて、自分のやりたいことができるし、興味のある仕事場にも行ける」と楽しそうに話してくれました。

音楽の授業

音楽の授業

卒業後もバックアップ

「カレッジ早稲田」より先に出来た、九州の「カレッジ福岡」では、昨年度3人が卒業し、物流や医療、自動車関係の仕事に就いています。理事長の長谷川さんは、卒業した生徒のフォローも大事だと話します。

知的障碍者の場合は、だいたい3年以内に離職する率が4割ぐらいなんです。やっぱり「定着支援」というか、就職してそれがゴールじゃなくて、それは出発点で、カレッジでは最初の半年ぐらいはだいたい週に1回職場を巡回するんです。それで、本人がうまく職場の方たちとコミュニケーションを取れているかとか、仕事がうまくやれているかとか、ストレスが溜まっていないかとか、そういったことを観察しながら、適切なアドバイスとか、あるいは企業さんのほうにこういった対応をしていただきたいということをお話ししたりしながら定着支援を行っています。

社会生活は不安でいっぱいでしょうから、バックアップについてくれるのは心強いですよね。

健常者にこそ意味がある「大学との交流」

そして「カレッジ」では、大学との交流をとても重視しているということです。

長谷川さん「大学との交流を重視する理由」

同じ年頃の青年たちが、障碍のあるなしにかかわらず交流していくというのはとても大きな意味があるし、それは健常者の大学生にとっての意味が大きいとも思っています。先日、相模原で大変な事件がありましたけれども、障碍のある人たちと触れ合うことの中で、一般の人たちが障碍のある人たちのことを理解するという、そういった機会が大事だと思うんです。

海外では、学びたい意欲があれば大学に入れるため、知的障害者も一緒にキャンパスライフを送っているところもあります。長谷川さんは、そんなアメリカの大学を何度も視察してきたそうで、「日本も国の制度として知的障害者が大学に進める道を整えてほしい」と話しています。

日本の大学は、ほとんどが試験に合格した人だけが入学できるシステムですから、知的障害者の受け入れについては考えられていません。大学生と同じように4年間勉強できるこのカレッジの取り組みで、健常者と障害者の教育格差や就職格差が縮まるといいと思います。

※一部「障害」を「障碍」と表記しています。

(担当:進藤誠人)

<参考>
■カレッジ早稲田
http://waseda.yutaka-college.com/