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お芝居やミュージカルを楽しむための、「情報保障」とは?

人権TODAY

毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今日は、障害のある方の「舞台鑑賞」のお話です。
お芝居やミュージカルなどの舞台を見えなくても、聴こえなくても、楽しむことができるよう、取り組んでいる団体があります。

人権トゥデイ

NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク

NPO法人 シアター・アクセシビリティ・ネットワークの理事長、廣川麻子さんは、活動の内容を「情報保障」という言葉を使って説明してくれました。ただし、廣川さんは生まれつき耳が聴こえないということで、難聴者である副理事長の萩原昌子さんに、廣川さんの手話を通訳していただきました。

シアター・アクセシビリティ・ネットワークの活動内容

「まず大きな活動としては、音声による演劇などに「情報保障」をつけること。例えば、字幕をつけたり、台本を借りて台本を読みながらお芝居を観ます。視覚障害者の方のための情報保障としては、音声ガイドと言って、動いている状況とかを声で説明する。また、点字でプログラムを作ったりします」

音声案内や手話などの手段を用いて、人間の「知る権利」を保障することを、「情報保障」と言います。例えば聴覚障害者の場合、役者の台詞が聞こえないため、この団体では、「情報保障」の一環として、台本の貸出しなどを劇団に交渉しています。

また、「この劇場は、受付で筆談対応が可能ですよ」、「点字プログラムがありますよ」といった情報を、ホームページ上で公開しています。

廣川さんは、実は、舞台を観るだけでなく、ろう者の劇団で、俳優としても活動しています。7年前、イギリスの障害者劇団に1年間留学。その経験から、現在の活動を始めたそうです。

活動を始めたきっかけ

「イギリスに行ったときに、舞台を見たときに、どんな有名な作品でも、当たり前に、手話通訳や字幕がついている状況を見て。それはつまり、聞こえない私たちに対しても、お客様として、認めてくれているという感じがして、非常に嬉しかったし、びっくりしました。日本でも同じようなことができないだろうかと思って、この団体を立ち上げた。」

『オペラ座の怪人』を始め、1年間のイギリス留学で、約60本の作品を鑑賞。その半分以上が、サポート付きの公演だったそうです。実は、イギリスでは「平等法」という法律の下、【一つの作品を上演する際には、必ず一回以上、字幕・手話・音声ガイドを実施する】ことが義務付けられています。ところが、日本の場合、廣川さんによると、こうした取り組み自体が根付いていないため、なかなか広がっていかないとか・・・。

そこで、一人でも多く、劇場に来てもらうため、この団体では、舞台鑑賞前に、いくつか講座も開いています。今回は、10月に行われる能楽鑑賞会を前に、先週日曜日に開かれた、「聞こえない人のための能楽体験教室」におじゃましました。実際に能面をつけて能舞台を歩いた「すり足体験」の感想がこちらです。

能面をつけて能舞台を歩いた、参加者の感想

「今まで、見ているのと実際にやるのと全く違って、びっくりしました。参加してとても良かったと思います。」
「能の舞台で歩くのが、すごく大変だというのが分かった。良い経験になりました。」
森本毅郎スタンバイ!

能面体験の様子

この日の参加者は全部で6人。そのうち4人が聴覚障害者、あとの2人は健常者でした。出演者による説明や能楽の台詞が、リアルタイムでスクリーンに投影されたり、3名の手話通訳者が逐一、舞台上で通訳したりと、この講座でもしっかりと「情報保障」がされていました。

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出演者による説明では、手話通訳やスクリーンに字幕が投影されていました

中には、「高校時代に初めて能楽を観たときは、聞こえなくて内容が分からなかったけど、10月の能楽鑑賞会が楽しみになった」という声もありました。

ただし、こうした講座に参加する人というのは、もともとお芝居に興味がある人に限られることが多いといいます。聴覚障害者としての本音の部分を、先ほどまで通訳してくれた、難聴者の萩原さんが話してくれました。

「芝居を観る」こと自体が選択肢にない

「私も、小学校までは、やっぱり演劇を皆で見るという体験の時間でも、皆が笑っているけど自分は全く聞こえてないし、何を言っているか分からないから、楽しくないし、面白くない。そもそも、そういった「演劇って面白いなぁ、お芝居を見に行くと面白いことあるかも」という気持ちになるきっかけがそもそもないから。お芝居を観ようという気持ちが選択肢の中に入ってこない。それはすごくもったいないことですし、やはり、「感動する」「心が震える」というチャンスをたくさん持った方が、人生楽しいでしょう?」
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副理事長 萩原昌子さんと一緒に

やはり字幕や音声ガイドなどの「情報保障」がないと、お芝居を観ても、何を言っているか分からないし、誰がどんな格好で喋っているか分かりません。結果、「つまらなかった」という印象しか残らないので、もう一度観てみようという気は起きず、自発的に「芝居を観て楽しむ」という選択肢を持てない人が多いそうです。

活動を始めて今年で3年目。少しずつですが、「サポートをしてみたい」という問い合わせが出てきている。今後は、大きな劇団にも賛同してもらい、一人でも多くの人が楽しめる環境を作っていきたいと話してくれました。

この、NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワークの活動は、個人・団体問わず、会員になることで支援できる。詳しくは、団体のホームページに載っているので、気になる方は、下記URLをご覧ください。

 

(担当:TBSラジオキャスター 田中ひとみ)

<参考>
■NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク
http://ta-net.org/