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宇多丸、映画『ちはやふる 上の句』を語る! 「週刊映画時評ムービーウォッチメン」2016年4月2日放送・テキスト版

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

ちはやふる上の句

宇多丸:「映画館では、今も新作映画が公開されている。
一体、誰が映画を見張るのか?
一体、誰が映画をウォッチするのか?
映画ウォッチ超人、シネマンディアス宇多丸がいま立ち上がる−−
その名も、週刊映画時評ムービーウォッチメン!」

22:00-24:00(土)、TBSラジオ AM954 + FM90.5『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』。当番組の名物コーナー、ライムスター宇多丸の映画評「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。

毎週、「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)に入った新作映画の中からランダムに選んだ作品を、“シネマンディアス宇多丸”が自腹でウォッチング。その“監視結果”を喋り倒す映画時評コーナーです。

今週評論した映画は、競技カルタを題材にした大人気コミックの実写映画化、『ちはやふる 上の句』(2016年3月19日公開)です。

Text by みやーん(文字起こし職人)

*  *  *  *  *  *

宇多丸:
今夜扱う映画は、先週ムービーガチャマシンを回して決まったこの映画! 『ちはやふる 上の句』。

(BGM Perfume『FLASH』が流れる)

そうですね。エンディングに流れるのが、このPerfumeの『FLASH』ということでございました。競技かるたに打ち込む高校生たちの青春を描いた大人気コミック『ちはやふる』を実写映画化。二部作の前編となる本作では、主人公・綾瀬千早が競技かるた部を設立し、大会に出場するまでを描く。出演は広瀬すず、野村周平、真剣佑。真剣佑、すごい名前ですね。千葉真一さんの息子さん。びっくりしましたね。監督・脚本は『ガチ☆ボーイ』とか、『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の小泉徳宏さんということでございます。

ということで、この映画をもう見たよというリスナーのみなさま、ウォッチメンからの監視報告をメールなどでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、多め。ああ、そうですか。うん。評判がね、やっぱり結構高いという。賛否では、8割以上が褒めている。「原作を読まずに行ったけど、まさか泣かされるとは」「青春映画の傑作。熱いし、泣ける」「広瀬すずのアイドル映画としてもすごい」など、熱い賞賛の言葉の言葉が並ぶ。とにかく「軽い気持ちで見に行ったら予想以上によかった」という人が多い様子。

否定的な意見としては、「コメディーっぽい演出がダサいし、話もキャラもありきたり」という意見がいくつかあったということでございます。代表的なところをご紹介いたしましょう……。

(メールの感想読み上げ、中略)

……ということで、『ちはやふる 上の句』。私もTOHOシネマズ日本橋で2回、見ましたね。特に1回目は、なんか会場全体から自然に笑いがあちこちから漏れる感じで、とてもいい雰囲気の劇場でございました。まあ、ざっくり言って、いわゆる『がんばれベアーズ』型ですよね。『がんばれベアーズ』型チームスポーツもの映画。もう、ひとつの明快なジャンルですね。弱小チームががんばって勝ち上がっていくという、定番ジャンルです。

プラス、特に日本映画界ではですね、近年、さらにもうひとつ要素が加わって。要はそのスポーツが世間的には比較的マイナー競技だっていうこういう要素込みで。元はやっぱり学生相撲の『シコふんじゃった。』であるとか、男子シンクロの『ウォーターボーイズ』あたりの成功以降、割と定番化していった、完全にジャンル化している。要するに『がんばれベアーズ』型プラス、そのスポーツがマイナースポーツであるというのが日本映画界ではジャンルとして定着している。

この番組でも前に扱った『書道ガールズ!!』なんかもまさにそうですよね。ただ、ジャンルとして、いまやすっかり定型化した分ということなんでしょうかね。正直僕、このジャンル、上手くやればすごく普通に面白くなるはずなんですよね。いろいろ物語上の定石がいっぱいあるわけなんだけど、定型化した分、正直安易な作品も多いなという風には思っていてですね。と、いうことで今回の『ちはやふる』、どうなのかということなんですが。プラスね、今回の『ちはやふる』は漫画映画化。で、二部作公開という、これまた最近の日本映画界流行りのフォーマットを取っていることも含めですね、正直言って僕は事前には全くノーマークでした。申し訳ないけど。

いろいろ見る映画がある中で、割と後回しにしちゃうタイプの映画にはなっていたと思うんですね。期待もしてなかったんですけど。ただ、結論から言うとですね、もちろん映画として何かとても新しいことをしているとかじゃないです。もちろん、競技かるたを扱うというのは新しいにしても、何か新しい表現がありますよとか、そういうことではないですし。後でちょっと言うかもだけど、ところどころ僕の好みに合わないというか、今時の日本映画にこういうところは多いなという瞬間もまあ、あるはあるんだけど。だから諸手を上げて「完璧だ!」とは言いませんが、そういうのはとりあえず置いておいても、僕はこの手のジャンル映画としてこのレベルまで達していれば、申し分ない。

まあ、いまの基準から言ったら、なんなら「傑作」って言い方をしてもいいぐらいの出来だと思うっていうぐらい、僕は大好きになっちゃいました。すいません。はい。超面白かったっす! すごい楽しかった。で、1回目は僕、原作漫画を全く読まずに見に行ったんですが、全く何の問題もありませんでした。全く何の問題もなく理解できるし、入り込めるという作りにもなっていましたし、原作漫画を30何巻出ているんですけど、今回の映画で扱われているようなぐらいのところまで読んで。9巻目。もうちょっと前かな? でも9巻目まで読んだんですけど。すごく面白くて。やっぱり。その後もめちゃくちゃ読みたくなったんですけど。素晴らしいと思います。漫画もね、さすが。

原作を読んでから、もう1回見たらですね、今度は、ああ、なんて見事に原作を再構築しているんだろう。原作のいろんな要素であるとかセリフとかを上手く意味的に生きるように置き換えていたりとかですね。あと、ここも見事だなと思ったのは、今回前編・後編、2本公開なわけですよね。いま「非常に多いフォーマット」ってさっき言いましたけども。今回の『ちはやふる』はちゃんと今回の『上の句』、前編のみで1本の物語的な起承転結とカタルシスがある作品として、きっちり成り立たせる構成になっていて。とかも含めて、ああ、すごくよく出来た脚本。すごい構成がちゃんとしているな! という風に、改めてうならされたという感じでございます。

監督の小泉徳宏さんね、いままでこの番組で作品を扱ったことはなかったですけど、ロボット所属の監督さん。劇場デビューは歌手のYUIさんの『タイヨウのうた』ってありましたよね。後に、沢尻エリカさんでテレビドラマやりましたけどもね。とか、『ガチ☆ボーイ』とか『FLOWERS -フラワーズ-』とか『カノジョは嘘を愛しすぎてる』とかですね、まあ正直、僕は積極的に評価するタイプの作品ではないフィルモグラフィーが続いて。特に今回の『ちはやふる』と『ガチ☆ボーイ』を比べると、学生プロレスをマイナースポーツというところに置くならば、その題材に対するアプローチの誠実さみたいなのがちょっと段違いというかですね。

『ガチ☆ボーイ』はそういう意味で僕、ちょっとすごく難がある作品だと思っているんですけど。今回の『ちはやふる』は、この小泉徳宏さん自らが脚本を手がけられていることも非常に大きいのかもしれません。とにかく、いままでのフィルモグラフィーの中でも段違いです。段違い。生き生きしているし、完成度も高いです。一皮むけたというか、たぶんご本人的にも相当手応えがある作品なんじゃないのかな? ということだと思います。でね、どっから褒めようかなっていうのをちょっと迷うぐらいなんですけど。

どの映画でもね、映画にとって非常に大事なポイントだけど、特に青春映画はここが大事というところで、やっぱり、キャスティングのマジックが起きているかどうか? というところでですね、誰もが言うところでしょうけど。このキャスティングね、主人公の千早こと広瀬すずと太一というね、一応イケメン役ですけども、野村周平さんだけ事前に決まっていて、後はオーディションで決まったということなんだけど。まず、誰もがもう、この映画に関しては、「強えな、圧倒的だな!」っていう。これはもう、ちょっと理屈じゃない部分ですけど、言わざるを得ないのがやっぱり広瀬すずでしょうね。

『海街diary』のね、すずちゃん役も非常に良かったですけど。『海街diary』はやっぱり、なんて言うんですかね、内側に秘める役柄でしたけども、あれとは全く違った、一言で言えば「抜けのいいバカキャラ」っていうね。さっきさ、『書道ガールズ!!』って出したけど、その時に同時にやった『武士道シックスティーン』でさ、桜庭ななみさんがやったキャラがちょうどこういう抜けのいいバカキャラだったなって思い出したりしましたけど(宇多丸訂正:これ、僕の勘違いで、桜庭さんが出てたのは『書道ガールズ』のほうでした! 記憶のなかで二本が混ざっちゃったみたい……訂正してお詫び申し上げます!)。まあ、すっごい美少女なんだけど、ちょっとまだ性的に未分化な感じを残しているというか。まだ少年っぽいところも残しているような感じ。そのバランスを、ちょっとこれ以上ないほど振り切った、本当にバカ演技で。

最初にね、リスナーメールで来たやつもね、「広瀬すずの度を越したバカ演技」ってあって。「どういうことなんだろう?」って思ったけど、これは本当で。振り切った演技で、非常にパーフェクトに。ともすると、実在感……「すごい美人なのに色気はない」とか、ともすると非常に、なんて言うんですかね? 欺瞞に満ちたキャラクターになりかねないところを、嫌味なくパーフェクトに体現する広瀬すず。これ、いまの広瀬すずの勢いがあってこそじゃないでしょうか。

この広瀬さん。お姉ちゃんが広瀬アリスさんっていう、やっぱり女優さん、モデルさんで。今回も一瞬、雑誌の表紙に写ってらっしゃいましたけども。『銀の匙』なんかもね、非常によかったですけども。お姉さん、みなさんコンタクトレンズのコマーシャルで、この広瀬アリスさん。お姉さんがすっごい美少女なのに、目が悪くてすっごい人相が悪くなるというCM。コンタクトレンズのコマーシャル、記憶されている方もいると思いますけど。あれを見て、あ、すげえ。こんなに美人だからこそ、やっぱりこういうコメディーセンスがある人がやるとめっちゃ面白いな! と思って見ていたんですけど。まさにあのお姉ちゃん譲りの目のコメディエンヌ・センス。

特に、美少女ゆえの目を使ったギャグね。今回、見た人はわかりますけども、とにかくあの白目ネタね。あの見事な白目ネタ、最高。白目をむいて動かないのって、結構大変なんですけどね。白目ネタ、最高。最高バカっすね、あいつね(笑)。あいつ、最高バカっすね、本当ね。これ、褒めてますけども。あと、スカートの下にジャージ履いている時の、「あっ! あーあ……」っていう(笑)。「どこの業者の方ですか?」ってね、あれよかったですけどね。熊谷さんのセリフも(※宇多丸4月27日訂正:熊谷真実さんではなく妹さんの松田美由紀さんです! 言い間違えてました!)。ああいう時の「パッと見て美少女だけど残念」みたいなのが嫌味なく体現できる。これはなかなかね、ないことだと思うんですよね。

この映画全体にですね、ちょっとお話というか空気がウエットな方に行き過ぎそうになると、すかさずそういうちょっと超くだらないギャグとかやり取りを含めて、ちゃんと笑わせてバランスを取るというようなコメディーセンス。それも映画的コメディーセンスが非常にたしかなものがある。それが本作の大きな魅力となっていると思います。たぶん、小泉徳宏さんがですね、もともとコメディーが向いている人だったんじゃないか?っていう。だから、いままでのちょっと、割とウエットな作品を職業的に受けられてましたけども。コメディーセンスがある人だっていうことなんじゃないかなと思いました。

あと、広瀬すずに関しては加えてですね、『海街diary』で一部観客をもう騒然とさせた、抜群のサッカーセンス。ねえ、見せていましたけども。然りですね、要は基礎的な身体能力はたぶんこの人、めっちゃ高いんですね。あと、動きのセンスとか、めちゃくちゃいいんですよ。体技的なことね。体がもういいわけですよ。動きが。ということで、競技かるたというのが非常に激しいスポーツである。「畳の上の格闘技」と言われるような……「畳の上の格闘技ってそれ、柔道だろ!」っていう感じするけど。でもまあ、柔道的にバーン!ってこう、受け身を取ったりする。

スポーツとしての競技かるた。その真剣度。なんなら、殺気ですよね。殺気さえ帯びているようなその真剣度っていうのを、この広瀬すずが最初のところでやってみせる。そこで彼女が「ウラーッ!」っていうところのバーンッ!っていう一発で納得させる説得力がやっぱり、体技含めてあるわけですね。あそこがショボかったら、もう全部成り立たないですね。とかですね、もちろん、他のキャストを含めてしっかり事前のかるた訓練をちゃんと積ませて、競技かるたという題材をしっかり描くという。

さっき言った、マイナースポーツ版ベアーズというジャンルでここ、絶対に外しちゃいけないところ。勘所なのにもかかわらず、ここを適当にやっている作品も少なくない。その、あるスポーツを描こうっていうのに、そのスポーツをちゃんと描く気ないでしょ?っていう風になっちゃっている作品が多い中で、当たり前なんだけど、競技かるたをちゃんと演者たちに叩き込んで。で、完全に上手いところまで持って行ってやるというですね、当たり前だけど日本映画でできていないのも多いですよというようなことをちゃんとやっている。これも本当に大きいあたりだと思います。あの、先ほどちょっと苦言を言った『ガチ☆ボーイ』という作品が、そもそもプロレスっていうものを錯誤していないか、この話は?っていうのに対して、もう雲泥の差だと思います。これは、アプローチはね。

で、とにかくですね、いまの広瀬すずがすげえ! とにかく、神がかり的魅力。これ、ちょっと言いすぎだっていう方もいらっしゃるかもしれませんが、僕、いまの広瀬すずは、「10代の頃の宮沢りえ」の陽性の部分と、「10代の頃の薬師丸ひろ子」の陰性の部分を併せ持つ、ちょっとデカいタマ、来たよ! ちょっとこれ、大きいタマ来たよ!っていう感じになっていると思います。

とにかくその広瀬すずの、説明不要ですね。とにかく説明不要の……説明不要の魅力です。すいません。もう、女優の魅力ってこれ以上言葉にできません。説明不要の魅力が中心として真ん中にドスンとある。で、物語的にはむしろその千早っていうのは中心にある、太陽的なというか、資質的にも天才なわけですから。少なくともこの『上の句』では一応、無意識過剰な天才としてドンといる。なんだけど、物語上は千早の幼なじみ。で、さっき言ったイケメンで金持ちなんだけど、実は非常に切ない思いを抱えている。千早に対しても切ない思いを抱えているし、かるたの才能ということに関しても切ない思いを抱えている太一というキャラクター。これ、野村周平さんが演じている。この彼の視点から見るという構成にしている。

で、彼や他のサブキャラクター。特にその机くんっていうね、ガリ勉のキャラクターが彼女という中心的な太陽を通して少しだけ成長するという話として話を再構成。この前編は構成している。これも大正解だと思いますね。太一を演じる野村周平さん。内藤瑛亮監督の『パズル』でニキビをプチプチつぶしていた子だ、とか。あと、入江悠監督の『日々ロック』の主演の子ですよね。こっちこそ、本当に抜けのよすぎるバカ役じゃないですか。全然、毎回違うように見える。非常に芸達者な方なんだなと思います。

今回、その太一というのが原作よりちょっとだけ親しみやすい目線。つまり、やっぱりさっき千早を中心にすると、結局彼はイケメンで金持ちだって言うんだけど、実は“持たざるもの”。凡人サイドなわけですね。凡人側の視点としての太一像っていうのを上手く、いいバランスで演じられているんじゃないかなと思います。個人的にはね、細かいところなんですけど、寝てしまった千早、広瀬すずをおんぶして帰る夜道で、「あ、あそこマンション建ったんだ……」ってボソッと言うじゃないですか。こういう瞬間を自然に切り取っているだけで、青春映画として、「ああ、これはいい映画だな」っていう風に確信する瞬間だったりします。

で、それに対するですね、『上の句』。今回の前編ではあまり出番が少ないんですけども。それゆえにミステリアスな存在感。新(あらた)というね、こちらは本当に天才の役でございます。真剣佑さん。千葉真一さんの息子さん。これ、まだちょっとわかんないですけど、存在感の、端正だけどミステリアスな、でもなんか持ってるんだろ、こいつ!? みたいな。とっても体現されていて、これもいいチョイスなんじゃないかなと思いますし。あと、他のかるた部員3名。3名ともですね、見た目はちょっと原作とかと設定とか、だいぶ違うんだけど。今回の映画の中では完璧にハマッているなとは思うね。

むしろ、たぶんアンサンブル的なところを生かしたのかもしれないですけどもね。『舞妓はレディ』のね、上白石萌音さんとかですね、今回はコメディーリリーフに徹してましたけども、西田という役をやっている矢本悠馬さん。あと、何しろ今回おいしいのは、机くんというね、ガリ勉的なキャラクターを演じている森永悠希さん。これも原作とちょっとね、バランスは違うんだけど、非常に納得のバランスというか。彼のエピソードの、サブキャラクターでサブエピソードなんだけど、持たざるものの成長っていうのがさっき言ったメインキャラクター。事実上の今回の『上の句』の主人公・太一の目線と重なって、非常に比重が大きい、おいしいキャラクターなわけですけど。

特にやっぱり、彼が落ち込んだところから復活する時にある回想をするわけですけど。その回想のショットが、先ほどメールにもあった通り、ある場面を彼の視点。つまり彼はその時、こう見えていたっていう彼からの視点で、ある場面を別のショットでパッと出してくる。そのポンッていうショットの入れ方が不覚にも、「おっ!」って来る。「上手い! 虚を突かれた!」っていう。というのは、山登りの場面なんですけど、そこで彼が手を伸ばしてもらって手をつなぐ時に彼側の視点。「あ、カットが変わるのかな?」と思わせる間というか、あれがあるんですね。

「あ、変わんないんだ」っていう。やっぱり観客は無意識でそれを覚えているから。その後で、彼が見ていた光景っていうのをポンッて見せられると、ドン!って来るというですね。映画っていうのはやっぱり前に起こったことを思い起こして、「ああ、そうか」って思い起こした時に感動するっていうね、そういう機能がございますね。あと、ライバル校の2人もよかったね。「ドSのS」の須藤。清水尋也さん。これね、特に『ソロモンの偽証』でいちばんおいしいところを持っていった方ですね。今回もね、見た目も漫画とそっくりだし、ドSが似合います。あと、あの首から肩のラインの、あの年頃の男の子にしかないラインがいんだよな。あれな。

あと、今回は名前も呼ばれてなかったけど、ヒョロくんっていうキャラクターの役をやっている坂口涼太郎さん。今回は役として決して多くはない。セリフも出番も多くはないのに、しっかりと存在感を残している。非常に素晴らしい。あと、最近の青春映画で大人の比重が非常に低いのは今っぽいけど、國村隼さん。抑えめだけど非常にいい感じだったんじゃないでしょうか。ということで、ちょっと役者さんの名前を並べすぎちゃいましたけど、青春映画においてはやっぱりこのね、「あいつら」っていうのがたしかにそこにいて、その時間を過ごしたんだという実在感。これが本当に大事なんですね。

だからこそ、「あいつらにまた会いたい、あいつら、どうしてるかな?」っていう、この考えが起きる。その意味で、今回は若い役者さん同士のアンサンブル。相性も含めてですね、もちろんそれを生かすように確かな演出をしていることも含めですね、これが最高にうまく行っているんではないかと思います。あと、やっぱり脚本がとてもよくできている。百人一首と物語のシンクロのさせ方。原作とは違うところ、違う場所にあるんだけれど、とてもハマッている。あの「うっかりハゲ」っていう使い方とか、まあ私は若干イラッとしつつ、二度目にそれが出てきた時、「あっ、うまいな! うまいハメ方するな」みたいな。

一事が万事、百人一首のシンクロのさせ方もうまいですし。あと、これもうひとつ。これがいちばん大事なところ。本作最大の魅力はですね、試合の勝敗に常に明快なロジックがあるということですね。これができていない作品が本当に多い。競技かるた、勝負は一瞬のために、要はハイスピード撮影であるとか、ある種の説明ゼリフ、心理独白ナレーションみたいなのに頼らなきゃいけないのでバランス取りは難しかったと思いますが、やりすぎないように気をつけつつ、特にクライマックス。最後の最後の勝負はですね、要は先ほど言った、かるたに関してはむしろ持たざるものである太一のドラマ的なところの着地にもなるわけですけども。

彼が自分の見出した勝つためのロジックで自らの運命を切り拓いていくという展開。これが、さっき「千早をつかみ取るんだ」という、二重のドラマ的……和歌とドラマのシンクロという、試合のロジックとドラマのロジックの二重の重なるところがあって。しかも、その決着が意外かつ、やっぱり「ああ、なるほど!」と膝を打つ、見事な決着の付け方を含め、対する敵のヒョロくんのナイスな、もう見事なリアクションも含め、本当にグッと来る名場面になっていると思います。

あえて言えばね、たとえばしんみりした場面の音楽演出とか。これ、別にこの映画に限らず、最近の日本映画はなんかピアノが「ポロン……」みたいな。なんか単調で他のやり方、ないのかなぁ、とか。あと、やっぱり先ほどのメールにもあったけど、やっぱり上手い子役の使い方って諸刃の刃だな、とかね。そういうことは思わなくもなかったが、ただまあ、あんまり全体としては文句をつける気がしないぐらいですね、魅力的な、旬のキャストの相性最高のアンサンブルと、かるたシーンの本当に真剣な本物の体技。体の力、体の魅力。そして巧みにロジカルに構成された脚本と、絶妙な笑いのセンスなどなど、全てがこのジャンルムービーとして申し分ないレベルではないでしょうか。

最後に『下の句』。この続編、後編の映像が付くんだけど、僕はもう早くあいつらに会いたい。「えっ、もうそんなに早く会えるの!?(笑顔)」っていうか、次に会ったらもう終わり……、ぐらいの感じになっちゃっています。『下の句』の出来次第ではあるけども、これは意外と日本青春映画史上に残っていくことになる作品かもしれないと。それぐらい、なかなかの出来でございました。『ちはやふる 上の句』、おすすめです。ぜひ、劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート、中略 〜 来週の課題映画は『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

★ポッドキャストもお聞きいただけます。

 

■追記
<2016年4月16日のオープニングトークより>
「こんなメールもいただいております……福岡に住む男性の方。「『ちはやふる』の放送回を聞き、4月14日のレイトショーを見てまいりました。物語中盤、子供時代の千早と新(あらた)が子供時代にかるたをするシーン。新が激しく畳を叩き、その激しさのあまり、かるた札がふすまに突き刺さる場面で、劇場に響き渡る『地震です、地震です』という機械的な声。競技かるたの激しさを、家屋用地震探知機の警報で表していると思っていたその約5秒後。劇場内が大きく揺れ始めたのです。この映画が初見だった私は、そこで初めて、さっきの警報は映画の演出ではなく本当の地震だったのだと気づいたのです。ざわつくお客さんたち。その後も何度となく余震が続きましたが、最後まで鑑賞でき、非常によい作品だったという感想です」ということでね。ありがとうございます。
かるたのね、スパーン!って取ったのが、「地震です、地震です」って。そんだけ強いパワーでかるたを取ったって、そんな演出あるかい!ってことですけどね。でも、こちらの方、福岡ということで。揺れは揺れたけど、ご無事でよかったですけどね。みなさん、被災されている方で、避難所とかにいらっしゃる方も含めて、本当に心配しておりますし、まだ救出されてない方も、孤立されている方もいる中で、こちら放送を続けさせていただきますが、本当に心より心配しております。」