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権力とマスメディア

森本毅郎 スタンバイ!

アメリカのトランプ大統領がメディアを批判しています。そこで、3月2日(木)の「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「日本全国8時です」では、「権力とマスメディア」について、注目しました。

★メディアを締め出したトランプ大統領

アメリカのトランプ大統領は選挙運動期間中から自分に不利な内容を放送したり記事にしたりするマスメディアを攻撃していましたが、大統領になってからも、ロシアがトランプ大統領の不名誉情報を入手している可能性があると報道したことを「フェイクニュース(偽ニュース)だ」と一部のテレビ局や新聞社を批判していました。

ところが今度はさらにエスカレートし、ホワイトハウスで開かれる記者会見を記者懇談会に変更しました。この時点では希望するマスメディアは参加でき、テレビ中継も認めていましたが、開始1時間前になって、「拡大代表取材」に変更すると通告し、テレビ中継は取りやめ、大統領側が指定した報道機関だけ参加させるということに変更し、入口で入室制限をする事態になりました。

その結果、CNNやニューヨークタイムズは入室できませんでしたし、日本の新聞社も締め出されました。驚いたと思われるかも知れませんが、権力とメディアの間では時々発生している事件です。

★日本の総理も

日本で多くの人がご記憶の例は、佐藤栄作総理大臣が7年8ヵ月という長期政権から退任するときの事件です。佐藤総理は元々、マスメディアが嫌いで、日記にも朝日新聞を嫌い「征伐にかからなければならない」と書いていたほどでした。(余談ですが、後に「佐藤栄作日記」を出版したのは朝日新聞社です)

そのような伏線があり、1972年6月17日の退陣表明の記者会見では、冒頭に「テレビカメラはどこかね? 新聞記者の諸君とは話さないことにしているんだ。僕は国民と直接話したい。偏向的な新聞は嫌いなんだ。記者は帰ってください」と発言し、引き上げてしまいました。トランプ大統領を彷佛とさせる発言です。

佐藤総理が再度、会見室に戻ると、新聞記者が「テレビと新聞を分ける考えは許せない」と抗議したところ、「それならば出て行ってください」と言われ、新聞記者全員が退室し、佐藤総理はがらんとした会見室で、テレビカメラに向って退任挨拶をしました。異様な光景でしたね。

★フリーダムハウスの自由度調査

アメリカや日本は、一般的には報道が自由になされているという印象のある国なのでこうした事件は話題になりますが、世界では珍しいことではありません。報道が自由か不自由かを世界規模で評価している「フリーダムハウス」というアメリカの組織があります。1941年に設立された歴史のある組織で、毎年、3種類の自由度について世界の国々を点数をつけて評価しています。

一つは、世界の210ヵ国の「政治状況」についての自由度を7点満点で評価して、点数が高いほど自由ではないという方式で採点しています。最新の2017年版によると、「不自由」と分類される6点以上の国として57ヵ国(全体の27%)が該当しています。主要国ではアフガニスタン、カンボジア、中国、キューバ、エジプト、イラン、イラク、北朝鮮、ロシア、サウジアラビア、ベトナムなどが入っています。中国もロシアも6.5点で、ソマリア、スーダン、南スーダン、北朝鮮など7点に次ぐ高い点数です。反対に2点以下は「自由」に分類されており、87カ国(全体の41%)が該当します。日本もアメリカも今のところ1.0で、ここに分類されています。

★報道の自由

二つ目は、今回のトランプ大統領の問題に関係するような「報道の自由」についてで、フリーダムハウスでは2種類の評価を発表しています。

まず一つは、全般的な報道の自由です。これは司法(30点)、政治(40点)、経済(30点)の3分野で評価して、合計が100点になるような採点です。これもやはり点数が多いほど自由ではないという形式になっています。こちらは202ヵ国を対象としていますが、60点以上を「不自由」としています。これは68ヵ国(全体の34%)が該当し、主要国では中国、キューバ、エジプト、イラン、ラオス、マレーシア、北朝鮮、ロシア、タイ、トルコ、ベトナムなど、大体予想できる国々です。

そしてもう一つ、政治分野の自由度を見ると、40点満点で北朝鮮は38点、イランは36点、中国、キューバ、エジプトは35点、ロシアは34点などとなっています。ニュースなどで伝えられる感触と合致していると感じます。

司法、政治、経済の3分野の合計が30点以下だと「自由」に分類されます。

日本は26点でぎりぎり「自由」とされています。これは政治についての報道の自由が15点と評価されていることが影響しています。今年(2017年)6月に公表される予定の国連人権理事会の特別報告書でも、日本の表現の自由についての政治の関与が懸念されています。国内にいると気付きませんが、外から見るとそのように映っているのかもしれません。アメリカは21点でこちらも「自由」に分類されていますが、これは2016年版なので、トランプ大統領になってからの2017年版が発表されれば変わるかも知れません。

★ネットの自由

「フリーダムハウス」の評価でもう一つ興味があるのは「インターネットでの情報の交信の自由」が採点されていることです。これは65ヵ国が対象となっています。評価は「接続の自由度」が30点、「アクセスできる内容の制約」が30点、「利用者の権利が阻害されている程度」が40点の、合計100点満点で、報道の自由と同様に点数が100点に近付くほど不自由な国と判定されています。

60点以上の21ヵ国(32%)が「不自由」と判定されています。主要国は中国、キューバ、エジプト、イラン、パキスタン、ロシア、サウジアラビア、タイ、ベトナムなどですが、名誉ある(?)最高得点は中国で、アクセスできる内容の制約も、利用者の権利の阻害も満点。すなわちもっとも制約された国になっています。中国はネットショッピングやビットコインの利用では世界でもっともネット利用が進んだ国とされていますが、この報告書ではアクセスできる内容の制約では30点満点、利用者の権利の阻害も40点満点で、合計点順位ではもっともネット利用に制約のある社会とされています。

一方、「自由」と評価されているのは17ヵ国(26%)で、もちろん日本も自由な国になっていますが、ネット利用の不祥事や犯罪が発生するたびに少しずつ規制が加わっています。現在の自由を当然のことと気楽に構えるのではなく、重要な権利として守っていくという心構えが必要だと思います。

月尾嘉男

解説は東大名誉教授の月尾嘉男

 

月尾嘉男の日本全国8時です(リンクは放送後1週間のみ有効ですhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170302080000

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